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サイクル ロードレース コラム 2012年5月23日

ジロ・デ・イタリア2012 第16ステージ レースレポート

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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なんとも典型的な、休養日明け&移動ステージの光景が繰り広げられた。今ステージにはひどく厄介な難所は存在せず、かといってスプリンターたちの感心もひきつけなかった。総合争いの選手たちは、翌日の難関山岳ステージを視野に入れつつ、ひたすらオフで少々崩れたリズムを立て直すことに専念した。つまり誰の目から見ても「エスケープが最後まで行く可能性のある」ステージだった。

だからこそ、スタート直後からたくさんのアタックが巻き起こった。誰かが逃げては、それが気に食わない誰かが加速して吸収をはかる。そして再び別の誰かが攻撃を仕掛けて……。その繰りかえしの果てに「決まったも同然」のエスケープが3回でき、3回潰された!

ようやくプロトンが逃げを容認したのは、延々1時間半近く、実に61kmも走ってから。後方に残る164選手に先を行くことを許されたのは、第12ステージで大逃げ勝利を手にしたラルスイティング・バク(ロット・ベリソル)を筆頭に、マッシアース・ブランドル(チーム ネットアップ)、マヌエーレ・ボアーロ(チーム サクソバンク)、アレッサンドロ・デマルキ(アンドローニジョカットリ)、ニコラス・マース(オメガファルマ・クイックステップ)、スタフ・クレメント(ラボバンク サイクリングチーム)、ホセ・エレーダ(モヴィスター チーム)、マティアス・フランク(BMC レーシングチーム)、ルーカ・マッツァンティ(ファルネーゼヴィーニ・セッライタリア)、そしてヨン・イサギーレインサウスティ(エウスカルテル・エウスカディ)の10選手だった。

逃げが決まると同時に、プロトンは落ち着きを取り戻す。エスケープ集団は順調にタイム差を広げ、最大13分のリードを奪った。後方プロトンはマリア・ローザのホアキン・ロドリゲス率いるカチューシャ チームが、必要最低限のコントロールを心がけた。

もちろん、両陣に完全なる静寂が戻ってきたわけではない。なにしろゴール前には少々厄介な坂道——登坂距離2.3kmの、なんとなくアルデンヌクラシック風の上り坂で、しかも石畳ゾーンや勾配12%ゾーンなど戦術的要地がいくつか盛り込まれていた——が待ち構えていたのだから。前の10人にとっては、ステージ優勝を決定付ける坂道となるはずだ。メイン集団の総合リーダーたちにとっては、貴重な数秒を稼ぐ、もしくは失う場となったかもしれなかった。

まさに道が上り始めると同時に、エスケープ集団内ではアタック合戦が始まった。最初にエレーダが静寂を破った。すぐさまレインサウスティが加速を見せると、数選手がたまらず千切れた。2人の攻撃に真っ先に反応を見せたフランクが、今度は自らイニシアチヴを取った。しかしするさま畳み掛けるように、ゴール前3.7kmの勾配12%ゾーンで、レインサウスティが猛加速。ここで、勝負は決まった。

後ろからデマルキやエレーダ、フランクが必死で追いかけようが、最終的には道が再びフラットに戻っろうが、2012年アストゥリアス一周で個人タイムトライアル区間を制したレインサウスティの独走態勢は崩れなかった。父親はシクロクロスの国内選手権を2度制したことのある自転車選手であり、1歳半年上の兄ゴルカは、ヨンと同じくエウスカルテル・エウスカディでプロ選手として走る「自転車一家」出身の23歳。嬉しいプロ2つ目の勝利はまた、自らの輝かしい未来を保証してくれる勝利でもあった。

「プロ2年目のシーズンで、ボクにとって初めての大勝利。ジロの3週目にステージ優勝が出来たということは、すなわち、ボクはいいステージレーサーだということを意味するよ。体調回復機能に優れているということだからね。兄はボクよりも体が大きくて、パワーに優れている。ボクはどちらかと言えばヒルクライマーなんだ」

一方のプロトンは、坂道へと近づくに連れて、リクイガス・キャノンデールがいつも通りに前方へと競り上がっていく。長く規則正しい上りのほうが得意なチームリーダーのイヴァン・バッソを危険から守り、短い爆発的な上りが大好きなロドリゲスのアタックを牽制するために。……しかしこちらの方は、特段何も起こらなかった。

「確かに数秒稼ぐことは出来たかもしれないね。でもまだジロは辛く長いし、ボクは総合首位という優位な立場につけている。ここでエネルギーを無理に使ってしまいたくなかった。もちろん誰かがアタックしたら、ボクもアタックし返したはずだけど」

こう極めて冷静に語ったロドリゲスや、総合争いのライバルたちは、誰一人として上り坂アタックやゴール前の抜け駆けを試みなかった。みな揃って8分57秒差で、静かにゴールラインを越えた。

「明日は状況が一変するだろう。大きなタイム差が得られるステージだ。最後の下りについてあれこれと語る人が多いけど、むしろボクは、上りでたくさんのアタックが巻き起こる考えている。特にボクと同じように、バッソはそれほど下りが得意じゃない。一方で明日のような長い上りはバッソの得意分野だし、リクイガスには有能な山岳アシストが揃っている。ジロ・デ・イタリアは下りではなく、上りで決まるに違いないんだ」

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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