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サイクル ロードレース コラム 2012年7月22日

ツール・ド・フランス2012 第19ステージ レースレポート

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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ほぼ完全なる勝利

「ラスト10kmは、本当に特別な10kmだった。これまでのあらゆる出来事を思い返した。ボクのお手本であり、ボクが小さな頃に出て行った父の死。小さなアパートでの母との暮らし。妻や子供との日常。スカイに入ったボクがツールを勝つことは決してないだろう、という批判。12歳の頃からツールをずっと見続けてきた。いつの日か勝ち取りたい、と夢見ながら」

お気に入りの黄色いチュニックを羽織ったブラドレー・ウィギンス(スカイ プロサイクリング)が、ツール・ド・フランス恒例、最終日前夜の「総合勝者」記者会見に臨んだ。もちろん全長120kmの最終ステージが残されているため、正式にはまだ2012年ツール王者ではない。「ほぼ優勝を決めた」という表現が正しいのだろう。

リエージュの町をファビアン・カンチェラーラ(レディオシャック・ニッサン)に続く2番目のスピードで突っ切ったウィギンスは、3週間通して、総合では2番目以下に落ちることはなかった。第7ステージでそのカンチェラーラからマイヨ・ジョーヌを引き継ぐと、以来、一度たりとも手放さなかった。もしもスイスのTT絶対王者が完全復活を遂げていなかったとしら、もしかしたら……。1961年に史上唯一、ジャック・アンクティルが成し遂げたように、初日から最終日まで黄色に塗りつぶした可能性だってあったのだ。

そのアンクティル風に——近年で言うところのミゲル・インドゥライン風に——、圧倒的なタイムトライアル能力がウィギンスを頂点へと押し上げた。第9ステージのアルケスナン〜ブザンソン41.5kmに続いて、この第19ステージ、ボヌヴァル〜シャルトル53.5kmも制覇。走行時速49.987km。2位以下に1分16秒以上もの大差をつける1時間04分13秒16で、力強いガッツポーズと、辺りの空気を震わせるような雄叫びと共にフィニッシュラインを駆け抜けた。

「あの年頃にもなれば、誰も、本気で夢が叶うなんて信じていないよね。でもボクはあれから20歳年を取って、今や夢が現実になった」

これまでトラック世界チャンピオン、トラック五輪金メダリストという数々のビッグタイトルを手にしてきたウィギンスは、2012年7月22日、英国人として初のツール・ド・フランス勝者となる。ロンドン五輪開幕を5日後に控えて、世界で最も美しいシャンゼリゼ大通に、英国国歌ゴッド・セイヴ・ザ・クイーンが鳴り響く。

2位!

古風に表現すれば「ドメスティック(使用人)」、当代風に分かりやすく言えばウィギンスのアシスト役であるクリス・フルーム(スカイ プロサイクリング)は、リーダーに次ぐ区間2位で終えた。第9ステージのタイムトライアルもウィギンスのすぐ後ろの2位だったし、もちろん総合でも3分21秒差の2位。

この3分21秒差が意味するものとは、大部分がタイムトライアルにおけるウィギンスとの違いであること(プロローグ9秒、第9ステージ35秒、第19ステージ1分16秒)。あとはパンクのせいでフルームが第1ステージに失った1分25秒のみ。フルームがほんのわずかにウィギンスを押しやった第7ステージ2秒と第11ステージ2秒もここに併記しておこう。……つまりアクシデント以外で、両者に優劣があったとすれば、それはすなわちタイムトライアルだけだった。

ヴィンチェンツォ・ニーバリ(リクイガス・キャノンデール)は、ウィギンスから3分38秒遅れの16位で走り終え、総合では上から3番目の地位を確保した。先のジロ・デ・イタリアでは、1995年以来となるイタリア選手「ゼロ」表彰台という不名誉な記録が残ったが、今ツールではニーバリのおかげで、2005年にイヴァン・バッソ(リクイガス・キャノンデール)が総合2位になって以来となるイタリア人表彰台の座が確定した。

明日のフィニッシュラインを越えるまでは、あくまでもカデル・エヴァンス(BMCレーシングチーム)こそが「ディフェンディングチャンピオン」なのだろうか。しかし得意なはずのタイムトライアルで、なんと、ウィギンスから5分54秒もの遅れを喫してしまった。順位も当然、総合6位から7位にグレードダウン。代わりにアイマル・スベルディア(レディオシャック・ニッサン)が、エヴァンスの抜けた穴に入り込んだ。

フランスは総合8位25歳ピール・ローラン(チーム ユーロップカー)と総合10位22歳ティボー・ピノ(FDJ・ビッグマット)の若き2人をトップ10圏内に送り込んだ。昨年のローランは総合10位&新人賞だったが、「大嫌い」なタイムトライアルの通算距離にも関わらず、今年は8位へと躍進を遂げた。また2012年新人賞の23歳ティージェイ・ヴァンガーデレン(BMCレーシングチーム)は、区間7位の見事な好走で総合5位の座をキープしている。

「大会前にもしも、ボクが今ツールを総合5位で終えられる、と誰かに言われたって、『なんてクレイジーなヤツだ!』って思っただけだった違いないよ。でも今はこの好成績のおかげで、未来に向けて大きな野望が抱ける。いつかボクがツールを勝つ日が来るかもしれないって? そうかもね」

生中継@シャンゼリゼ!

「ボクのツールは昨日でもう終わったんです。今日は単にタイムアウトにならないよう、しっかりペダルを回すことだけを考えました。明日はチームのみんなと楽しんで走りたい。そう、もうボクの目の中には、エッフェル塔が見えているんです!」

タイムトライアルでは参加選手のちょうど真ん中くらい……というのが新城幸也(チームユーロップカー)のよくある成績だが、この日は57位でゴール。今大会4度もの逃げを見せた好調さそのままに、上からざっと3分の1程度の決して悪くない順位を記録した。

「いやー、さすがに疲れました。だから明日は逃げません!それから、夜の打ち上げパーティでも、あまり気を緩めすぎないようにしないと……。1週間後に五輪が控えているので、ほっと一息つけるのは、おそらく五輪の後ですね」

ちなみに日本からはわれらがJ SPORTSが、いよいよ第19ステージからフランスに上陸。上記のような新城のゴールインタビューは、最終日第20ステージの番組スタート直後にお届けする予定なのでお楽しみに!もちろんシャンゼリゼからは現地生実況・解説予定。新城からも、生の声が届くかもしれない。

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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