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サイクル ロードレース コラム 2021年10月16日

【ツール・ド・フランス2022 ルートプレゼンテーション】7月1日「ツール史上、最も遠く、最も北」で開幕!第5ステージには4年ぶりに《北の地獄》が登場

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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ツール・ド・フランス2022のルートMAP

ツール・ド・フランス2022のルートMAP

クレイジーで、おもしろくて、インスピレーションにあふれ、王者に完全体であることを求める。選手や関係者の感想を簡単にまとめると、つまりはこういうことらしい。2022年ツール・ド・フランスが全貌を明らかにし、自転車ロードレース界は、新たなマイヨ・ジョーヌの人物像を思い描きながら短いオフを迎える。

落ち葉のクラシック2戦を終えたばかりの、木曜日。いつも通り……いや、2年ぶりに、パリの西端の国際会議場パレ・デ・コングレに、ツール関係者一行が集結した。ツール・ド・フランス2連覇の若き王者にして、イル・ロンバルディア制覇ほやほやのタデイ・ポガチャルに、史上最多タイツール区間34勝を誇るマーク・カヴェンディッシュ、さらには2年連続でアルカンシェルを手に入れたジュリアン・アラフィリップ。いつもと違ったのは、男性のチャンピオンたちの横には、世界選手権覇者エリザ・バルサモや仏覇者エヴィタ・ミュズィーク等々……女性「シャンピオンヌ」たちの輝かしい姿もあったこと!

ついに女性版ツール・ド・フランスが、この世にお披露目された。開催委員長に就任したマリオン・ルスが「単に存在するだけではない。10年、20年、いや、100年以上存続できる」と断言するだけの、準備はすべて整った。ツールの名を冠するにふさわしい、8日間のハイレベルなコース。長い歴史の一歩は、パリのエッフェル塔から踏み出される。

ちなみにポガチャルは婚約者ウルシュカ・ジガートを応援するために「キャンピングカーで追いかけたい」と笑い、アラフィリップの人生のパートナーでもあるルスは、「ジュリアンのシャンゼリゼフィニッシュは一緒に祝えないけれど、代わりに彼が女性版レースに合流してくれるはず」と語る。そう、女性版が産声を上げる2022年7月24日は、男性版の3週間の戦いが終わる日でもある。

1903年に誕生し、来年で109回目を迎える男性版ツール・ド・フランスは、7月1日、デンマークのコペンハーゲンで走り出す。ツール開催委員長クリスティアン・プリュドム曰く「ツール史上、最も遠く、最も北」でのグランデパールであり、いつもよりも1日早く、金曜日に個人タイムトライアル13kmで幕を開ける。

会場に姿を見せたスター選手たち

会場に姿を見せたスター選手たち

デンマークのフレデリック皇太子によれば「世界一の自転車天国が世界最大の自転車レースに出会う機会」でもあるが……なにより「スプリント、横風、分断、石畳、個人タイムトライアル、短い上り、激坂、長い上り……すべてがある」とポガチャルが形容した通り、狂乱の1週目の始まりだ!

平坦な、しかしカーブの多い市街地個人TTで、2022年最初のマイヨ・ジョーヌが決まったら、2日目のプロトンは北の海と出会う。「風よ来たれ!」とプリュドムがサディスティックに言ってしまいたくなるのも当然だ。なにしろ大ベルト海峡に架かる全長18kmのグランド・ベルト橋を、フィニッシュ直前に渡るのだから。3日目もラスト20kmほどは風が吹き荒れる土地らしい。パリでの総合表彰台を追い求める選手たちは、まずはデンマークの3日間を無事に抜け出さねばならない。

4日目に早くもノーレースデーを迎えるが、休息日ではなく、あくまでも位置付けは移動日。飛行機や船、さらには陸路で、大会関係者各々が約900kmを横断せねばならない。とにかく丸1日の猶予の後、北フランスですぐに厳しい戦いが再開する。

マイヨ・ジョーヌ候補を最も震え上がらせるのは、やはり第5ステージに違いない。4年ぶりに、ツールに北の地獄が帰ってくる。待ち構えるのは11セクター・全長20kmの石畳。うち5つはパリ〜ルーベでさえ使用したことのない新たなパヴェセクターで、「1日かけてじっくり下見を行う必要があるだろう」とポガチャルも警戒する。

デンマークから帰ってきたばかりだと言うのに、ツールは一旦ベルギーに越境すると、全長220kmの長距離ステージへ。アルデンヌの森を抜け、残り6km地点で壁をよじ登り、4年前にも登場した上り基調のフィニッシュを争う。アラフィリップはずばり「僕向きのステージ」と宣言する。

ただプリュドム委員長は「誰か1人のために作ったコースではなく、ある種の選手たちに向けたコース」と強調する。どうやら例の3人組のことで、アラフィリップとマチュー・ファンデルプールとワウト・ファンアールトを指すらしい。初日区間勝利と初日マイヨ・ジョーヌ→区間勝利とマイヨ・ジョーヌ6日間→山・個人TT・最終スプリント区間勝利……と2021年大会は初日から最終日まで大いにかき回したトリオの、凄まじいバトルを、今年も1週目から大いに堪能したいものだ。

7日目からは、そんな覇権争いに、クライマーたちも参戦する。2012年の初登場以来、早くも6度目の登場となるラ・プランシュ・デ・ベルフィーユの激坂が、総合本命たちの脚を試しにかかる。しかも過去全5回はことごとく総合首位が入れ替わり、うち4回は山頂でマイヨ・ジョーヌを着ていた選手が、パリでも黄色い栄光をつかみとっている。絶対に失敗することはできない。今年のてっぺんは2年前にポガチャルが驚異の逆転劇を果たした場所ではなく、2019年大会同様に、さらに1.1km先へ上った場所。ピノ・ピノ・ピノの文字が踊る、全長7km、平均勾配8.7%、最大24%の「シューペール(スーパー)」バージョンだ。

ワクチン開発の祖ルイ・パスツールの生誕100年を祝い、生地ドールから第8ステージは走り出す。デンマーク、フランス、ベルギーに続き今大会4カ国目となるスイスへと入国すると、一行は国際オリンピック委員会の本拠地ローザンヌへ。2024年にパリ五輪を控えるフランスによる、単なる挨拶ステージでは終わらない。アップダウンコースの終盤には、12%の激坂も待ち構える。

そして、すでにお腹いっぱいになりそうほど変化と興奮に富んだ1週目は、アルプス山岳ステージで締めくくられる。UCI国際自転車競技連合のお膝下エーグルからシャテルまでの行程には、3つの山岳が組み込まれた。また正確には山頂フィニッシュではないものの、フランスでのラストは上り基調。待ちに待った休息日を控え、マイヨ・ジョーヌ争いもいよいよ本格化するはずだ。

アルプスから中央山塊を横切り、そしてピレネーへと向かう後半2週間も、クレイジーな雰囲気は続く。まるでアフター・コロナを謳歌するように、国境線を何度も越えたツールだが、この先はフランス国内のみに留まる。外には出ない代わりに、外からはどっと押し寄せるだろう。特にオランダ人の山アルプ・デュエズと、バスクのオタカムでは、辺り一面がオレンジ色に染まるに違いない!

プレゼンテーションの様子

プレゼンテーションの様子

2週目の目玉は、間違いなく、2日連続の山頂フィニッシュ。第11ステージは標高2642mのガリビエ山頂を越え、標高2413mのグラノン山頂を争う高山大戦で、翌第12ステージは再びガリビエを逆側から乗り越えたら、熱狂のアルプ・デュ・エズへ。

ひどく意味深な2日間でもある。グラノン→アルプ・デュ・エズの山頂2連戦は、1986年大会でも用いられた。これはベルナール・イノーがキャリア最後のマイヨ・ジョーヌを失い、翌日に若き覇者グレッグ・レモンと手と手をつないで区間を制したという……フランス自転車界の歴史に深く刻まれた2日間なのだ。しかも21の九十九折で有名な上りこそ、ちょうど70年前に、ツール史上初めて山頂フィニッシュが争われた地であり、しかも時はまさしく7月14日の革命記念日。

その後は大急ぎでピレネーまで移動する。風分断が恐れられる平地2区間の間には、マンドの激坂フィニッシュも挟み込まれた。ちなみに前回2018年登場時はアラフィリップ2位だったからこそ、地元自治体は世界王者に両手をあげて欲しいと熱望している。

カルカッソンヌでの休息日を明けたら、いよいよ決戦の3週目。第16ステージ、フィニッシュ手前25kmのペゲールの壁(最大18%)で大急ぎで足慣らし。第17・18ステージはまたしても、2日連続で、山頂フィニッシュが立ちはだかる。

初日は130kmという短距離の、しかも後半に、4つの難峠がぎゅうぎゅうに詰め込まれている。ペイラギュードの滑走路フィニッシュの最終盤は、脚がよれよれになりそうな激坂でおなじみ。一方で翌第18ステージは、初登場スパンデル峠を含む3つの長い上りが、行く手に聳え立つ。ピュアクライマーたちにとっては、泣いても笑っても最後の勝負地。オタカムの山頂へたどり着いた時点で、総合争いはもはや、パリ到着前夜の個人タイムトライアルのみに委ねられる。

全日程21日間のステージ内訳は平地6、起伏7、山岳6、個人タイムトライアル2。組み込まれた山岳の数自体は減ったが、山頂フィニッシュは5回と、昨大会より2つ増えた。逆に個人TTの総距離は全長53kmと、昨大会よりたしかに5km減った。しかし2度目のTTは、40kmと、2014年以来最長だ。

そして、もちろん、フィナーレはいつものシャンゼリゼ。世界で一番美しい大通りで、女性版第1回大会の第1ステージがフィニッシュした直後に、男性が2022年大会最後の栄光を競い合う。

「Vive les Tours」。ツール・ド・フランスのコースプレゼンテーションの終わりを、いつもどおりに、大会委員長クリスティアン・プリュドムは「ツール万歳」の言葉で締めくくった。ただ、いつもと違ったのは、ツールが複数形だったこと。2022年の7月は、まるまる1ヶ月に渡って、2つのツールが自転車ロードレースファンたちの胸を踊らせる。

文:宮本あさか

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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