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【Cycle*2021 グラン・ピエモンテ:レビュー】来季への期待が溢れ出す!手練のベテランたちを蹴散らして優勝の23歳ウォールス「本当にとてつもないこと」
サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか【ハイライト】
グラン・ピエモンテ|Cycle*2021
来シーズンが待ちきれない。2021年シーズンが幕を閉じつつある時期だというのに、なんとも気の早いことに、誰もが近い未来に想いを馳せた。大集団スプリントで勝敗が決したグラン・ピエモンテで、手練のベテランたちを蹴散らしたのは、ネオプロ23歳のマチュー・ウォールス。ほんの2週間前のU23世界選手権で表彰台に上った2人、19歳のオラフ・コーイと21歳ビニヤム・ギルマイも、それぞれ3位と5位に飛び込んだ。
マチュー・ウォールス
「本当にとてつもないこと。僕がロードレースでもトップレベルの走りができることを、証明してくれた」(ウォールス)
過去2大会が、直後のイル・ロンバルディアに向けた厳しい山岳大戦だったのだとしたら、今年のピエモンテ一周は、多くのピュアスプリンターにとっての大晦日。アルプスの向こう側の「落ち葉のクラシック」、パリ〜トゥールが、数年前からグラベル派へと転向してしまったせいでもある。
だからこそ名のある実力派スプリンターたちが、戦いに名乗りを上げた。特に地元イタリアの強豪は、最後の大一番に挑むために、過密スケジュールさえ厭わなかった。
たとえば31歳ソンニ・コルブレッリは、9月12日に欧州チャンピオンに輝いて以来ワンデー7戦目、しかもパリ〜ルーベを制してわずか4日後だった。日ルーベ→月コッパ・ベルノッキ→木グラン・ピエモンテと走り回った32歳ジャッコモ・ニッツォーロは、単にスタート地に向かうための移動だけでも1200kmに達する。
世界選もルーベも途中棄権だった32歳マッテオ・トレンティンだって、有終の美を飾りたかったし、いまだ来季の動向は「発表段階にはない」の32歳エリア・ヴィヴィアーニは(現チームからは更新を打診されている)、勝利を手土産に気持ちよくサインしたかったはずなのだ。
だからこそ序盤に逃げ出した5選手の後方で、ニッツォーロのクベカ・ネクストハッシュやヴィヴィアーニのコフィディスが、勢力的に集団制御を務めた。残り35kmをからはバーレーン・ヴィクトリアスが、コルブレッリのために最前列を牛耳った。フィニッシュまで10kmを切ると、トレンティンを好位置へ誘おうと、UAEチームエミレーツ隊列が存在感を放った。
レース前にカメラ目線に応えるコルブレッリ
若手たちも負けてはいなかった。ウォールズのためにボーラ・ハンスグローエが一日中働いた。残り約20kmのロータリーで、コーイが軽く落車するも、ユンボ・ヴィスマの先輩たちが集団へと連れ帰った。
また東京五輪オムニアム金メダリストのウォールズと、マディソンでタッグを組み銀を射止めた23歳イーサン・ヘイターを、イネオス・グレナディアーズのスター総出で引っ張った。クライマーで元ツール総合3位のリッチー・ポートも、同じくトラック団体追抜金メダルにして個人TT世界選手権2連覇のフィリッポ・ガンナも。
そうそうたるワールドチームに混ざって、エオーロ・コメタが勇敢に牽引を続けたのは、この日、人生最後のスプリントに挑む35歳マヌエル・ベレッティのため。ちなみにコフィディスの36歳ファビオ・サバティーニにとって、ヴィヴィアーニ列車を牽引する機会は、これが人生で最後から2番目だった。
だからこそ、残り1kmで、脱線したのは無念だった。ロータリーの入り口でコースが極端に狭められたせいで、数人の選手と共に、リオ五輪オムニアム王者のヴィヴィアーニは減速を余儀なくされた。
最終ストレートではボーラとユンボが激しく凌ぎを削った。クベカは背後に忍び、UAEは別ラインで仕掛けた。広い大通りで、誰もが夢中でペダルを回した。数人がハンドルを投げた。道のど真ん中を真っ直ぐに突き進んだウォールズは、両手を上げる暇すらなかった。ただ勝利を確信しつつ、力強く、頷いた。
「終わりに向けて誰もがこぞって前へと押し寄せた。でも僕は自分のチャンスを見出して、そこに向かって突っ走った」(ウォールズ)
この3月末にCovid-19陽性となり、復帰は6月までもつれこんだ。初夏はもちろん東京五輪に向けて心身を調整する必要のあったウォールズにとって、ロードレースに100%を捧げられるようになったのは、ほんの2ヶ月前のこと。「将来的にはヴィヴィアーニのようにロードとトラックを上手くミックスさせていきたい」と願う23歳。8月末にロードでプロ初勝利を飾り、この日は初めてのワンデータイトルを手に入れた。
ジャコモ・ニッツォーロ(右)
ウォールズに続いて、円熟期(2位ニッツォーロ、4位トレンティン)と若手(3位コーイ、5位ギルマイ)が交互にフィニッシュラインを通過した。コルブレッリは19位に沈み、ヴィヴィアーニはラスト1kmを流して終えた。
とうとうジロで区間初勝利を上げた2021年を、表彰台で締めくくったニッツォーロは、「ホリデーが楽しみ。でも来シーズンも楽しみだね」と笑顔を見せた。2月にプロ転向、10月にはクロアチア一周で区間2勝と早熟な才能を開花させたコーイは、「この先がどうなるかなんて分からない。でもベストを尽くす」と、やはり未来に目を向ける。実力を証明し続けるベテランと、本格開花を始めた若者たち。もう一度言おう。2022年シーズンが待ちきれない。
文:宮本あさか
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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