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サイクル ロードレース コラム 2021年10月6日

【Cycle*2021 グラン・ピエモンテ:プレビュー】地元のレースに野心を燃やすフィリッポ・ガンナ。世界一の強脚で、凄まじいロングアタックを披露するか?

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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グラン・ピエモンテ

イタリアの美しい景観を走る

前日はミラノ〜トリノ。2日後はイル・ロンバルディア。そんな「トリッティコ・ダウトゥンノ(秋の3連戦)」の中日にありながら、グラン・ピエモンテは、クライマー向けの2大会とは明らかに異質だ。今年105回大会を迎えるピエモンテ一周は、もしかしたら、特徴がないのが特徴なのかもしれない。

パンチャーのヤン・バークランツ、スプリンターのジャコモ・ニッツォーロ、上れるスプリンターのソンニ・コルブレッリ、そしてクライマーのエガン・ベルナルにジョージ・ベネット。過去5回の優勝者名をざっと上げただけでも、同大会の不思議な立ち位置がよくお分かりいただけるだろう。

柔軟なのはどうやら昔から。イタリアの伝説、グランツール総合5勝ジーノ・バルタリが優勝3度、史上最強の自転車選手エディ・メルクスが1度、一方ではツール・ド・フランスのマイヨ・ヴェール3度のジャモリディネ・アブドジャパロフが1度、ツールとブエルタの最終日大集団スプリントを制した経験のあるダニエーレ・ベンナーティが2度と、正反対の脚質の選手に勝利の女神は微笑んでいる。

それでも20世紀中は数年単位でコースの入れ替えが見られたが、ここ5大会は、毎回コースが変わる。自ずとレースの特徴も毎回変わる。2018年大会はほぼフラットで、2019年はジロ・デ・イタリア伝統の難峠オロパへの上りフィニッシュ。そして昨大会は、13もの起伏が登場する、ギザギザコースだった。

肝心の2021年大会は、どうやら上れるスプリンター&ルーラー向き。ロッカ・カナヴェーゼから走り出す168kmのコースは、序盤に小さなアップダウンを含み、スタートから60km前後では約7km・勾配5%のラ・セッラ登坂も待ち受ける。ただフィニッシュまではいまだ遠い。残り38kmに小さな出っ張りも登場するが、どれほどセレクションの役割を務めるだろうか。

最終盤に全長35kmの周回をぐるりと回ってから、フィニッシュのボルゴセージアへ。残り20kmは普通にしていたら気が付かないくらい微妙な上り基調で、もちろん普通に考えれば、スプリンターが苦しむことはないだろう。

前回大会はジョージ・ベネットが勝利した

前回大会はジョージ・ベネットが勝利した

しかしシーズンの終わりで、誰もが心身ともに疲弊している。特にパリ〜ルーベのわずか4日後に、250km超の泥んこ大戦を制したばかりのソンニ・コルブレッリは、大急ぎで体力を回復せねばならない。世界選前の秋ワンデーシリーズからルーベ経由で連戦続きなのはマッテオ・トレンティンやエドアルド・アッフィニだって同じ。2016年大会覇者のジャコモ・ニッツォーロに至っては、大雨のルーベを途中リタイアした翌日に、大雨のイタリアでコッパ・ベルノッキを走り切っている。それでも母国のセミクラシックに、こうしてこぞって駆けつけるのだ。

つまり最も身体的にフレッシュなイタリアンスプリンターは、エリア・ヴィヴィアーニということになる。9月中旬にチームの本拠地フランスでワンデー2連覇と、かつての脚を取り戻しつつある俊足は、6年ぶりの祖国のワンデー勝利で気持ちよくシーズンを締めくくれるか。

ちなみに平坦なコースプロフィールではあるけれど、前日同ピエモンテ地方で行われた上りフィニッシュ大戦ミラノ〜トリノを終えた流れで、クライマーやパンチャーたちもやって来る。選手によっては、2日後に控えるイル・ロンバルディアに向けた最終調整ともなる。

ただ1つ間違いないのは、ピエモンテの星フィリッポ・ガンナが、地元のレースに野心を燃やしていること。東京五輪トラック金メダリストにして世界選手権個人タイムトライアル2連覇の大チャンピオンは、フランドルでの世界選手権以来初めてレース現場にやって来る。残念ながらTTアルカンシェルのお披露目はまだ少し先になるけれど(予定では10月17日の仏クロノ・デ・ナシオン)、その世界一の強脚で、凄まじいロングアタックを披露する可能性は十分にある!

文:宮本あさか

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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