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【ブエルタ・ア・エスパーニャ2021 レースレポート:第8ステージ】復活のファビオ・ヤコブセンがステージ2勝目でグリーンジャージ奪取「僕こそが最速だった」
サイクルロードレースレポート by 宮本 あさかグリーンジャージのファビオ・ヤコブセン
フィリプセン→ヤコブセン→フィリプセン→ヤコブセン。今大会ここまで行われた4つのスプリンターステージで、2つの名前が交互に並んだ。第2ステージと第5ステージはヤスパー・フィリプセンが制覇し、第4ステージと今第8ステージはファビオ・ヤコブセンが勝ち取った。ポイント賞ジャージも2人の間を行ったり来たり。この日の終わりには、ヤコブセンが緑ジャージを受け取った。
「1週目に区間2勝を上げられたなんて、興奮している。再びグリーンジャージを着ることが出来たのも嬉しい。あらゆるスプリンターが夢見るジャージだからね」(ヤコブセン)
2021年ブエルタ平坦ステージは、まさにテンプレートに則って幕を開ける。それはスペイン籍ワイルドカードチームの所属選手が、0km地点で3人飛び出し、あっさり逃げが許されるというもの。2日目、4日目、5日目に続き、8日目も、そんな典型的なスタートが見られた。この日の顔ぶれは、ブルゴスBHのアンデル・オカミカ、カハルラルのアリツ・バグエス、そしてエウスカルテル・エウスカディのミケル・イトゥリア。
集団コントロールの責任は、まずはマイヨ・ロホチームに委ねられた。こういった義務から解放されるために、赤いジャージを手放したいと思いつつも、結局は手元に留め置いたプリモシュ・ログリッチが、ユンボ・ヴィスマの仲間たちと隊列を走らせた。3人には最大3分45秒のタイムを与えた。
そこからスプリンターチームの仕事タイムの始まりだ。まず・ヤコブセン率いるドゥクーニンク・クイックステップが、前線に人員を1人送り込んだ。続いてフィリプセンが、アルペシン・フェニックスの牽引役を前に出す。海岸線を快調に駆け抜けながら。タイム差をじわじわと縮めていく。
作業も勝利も分け合ってきた2人だが、平地ステージでの中間ポイントに対する戦術は少々異なるようだ。第2ステージは積極的に取りに行ったヤコブセンだが、以降は中間収集は一切やめた。一方で2日目は動かなかったフィリップセンは、第4ステージ以降は、必ず4位通過を仕留めている。この第8ステージもまた、ヤコブセンは動かず。対するフィリプセンはポイントを重ねに走った。またしても4位通過で13ポイントを加算し、たったの1ptしかなかった緑ジャージ用ポイントのリードを、ひとまず14ptに拡大することに成功した。
美しい海沿いを走る
もちろん中間スプリントで得たものは、あくまで暫定成績にすぎない。たとえば逃げの3人だって、残り69.2kmで白熱の競り合いを繰り広げた。特に1位通過バグエスが3秒、3位オカミカが1秒を加算したことで……2人の暫定総合順位は入れ替わった!
もしも総合上位勢の中で、中間ボーナスタイムによる逆転劇が起こったら、それこそ大騒ぎだったに違いない。ただオカミカはログリッチとのタイム差を43分06秒から43分05秒へと縮め、バグエスは43分07秒差から43分04秒差へと迫っただけなのだ。そもそも、せっかくのボーナスも、吸収後にのんびり走ったせいで収支決算は赤字で終わっている。
3人は敢闘賞向けアタックさえ打つ間がなかった(バグエスが賞に輝いた)。そわそわするような海風に誘われて、フィニッシュまでの距離が50kmを切ると、総合系チームが早くも最前列で隊列を組み上げたからだ。すでに1分半に縮んでいた逃げのリードはみるみる減っていく。さらに残り38km、カーブの出口でアスタナ・プレミアテックが猛烈な加速に転じた。プロトン後方を無残に引きちぎりつつ、逃げも強制的に終止符が打たれた。
いくつにも分断し、後方へ取り残された集団の中に、総合11位ジュリオ・チッコーネが紛れ込んでしまったこともあった。ただ残り30kmで大部分はひとつにまとまった。高まった緊迫感は決して収まらなかったが、その後は大きな問題も難関もなく、ひどく見ごたえあるフィニッシュへと突き進んだ。
エメラルドの海の上に広がる砂州に入り、ラスト3kmを切ると、多くのスプリンターチームが火花を散らした。フィリプセンvsヤコブセンの構図を崩そうと、ボーラ・ハンスグローエとグルパマ・エフデジが主導権を争い、UAEチームエミレーツも隊列で競り上がった。生き物のようにうねるプロトンは、残り2kmでがむしゃらに飛び出したイェツセ・ボルをも非情に飲み込んだ。
フラムルージュのアーチを潜り抜けると、ドゥクーニンク・クイックステップの発射台2人が最前線を奪い取った。そのまま猛烈に引きまくると、ラスト200mの緩やかなカーブまで、先頭を決して手放さなかった。ただし……ヤコブセンはこの2人の背後にくっついていたわけではなかった。
ヤコブセンがステージ2勝目
「チームは完璧な仕事をしてくれた。ハイスピードをキープしつづけた。彼らとはぐれてしまったけど、それでも僕は好ポジションにつけていた。そして200mのコーナーで自分のスプリントを切った。僕こそが最速だった」(ヤコブセン)
そう、命の恩人でありスプリントパートナーであるフロリアン・セネシャルの後輪を見失ったけれど、実はヤコブセンは前から8番目、つまりフィリプセンの背後に隠れていたのだ。本人曰く「冷静で居続けたし、自分の脚とスピードに自信を持っていた」。そしてハイスピードでコーナーを曲がった惰性で、後輪から勢いよく飛び出すと、あとはライン上で仕事を完成させるだけで良かった。
「必要なのは強さと速さ、そしてタイミング。こういった種のフィニッシュでは、時機をつかまなきゃならない。ここまでタイミングが遅すぎたのが2回。でも今回は完璧だった」(ヤコブセン)
追い抜かれたフィリプセンは、逆にライバルの後輪を利用しようと試みたが、アルベルト・ダイネーゼに割って入られた。ようやくヤコブセンの背後に入った時は、もはや遅すぎた。後輪から抜け出せぬまま3位終了。またヤコブセン同様に発射台からはぐれたアルノー・デマールは、浮上できず6位に沈んだ。
もちろんヤコブセンは1位フィニッシュで大量50ポイントをつかみとり、再びグリーンジャージ争いの首位に立った。フィリプセンは14p差で追われる立場から、逆に16ptを追う立場に。ロードブックによれば、集団スプリントのチャンスは第13ステージと第16ステージの残り2回。つまり2人にとって互いだけがライバルではない。この先の山の多いコースでは、総合上位勢たちも、点取り合戦に殴り込みをかけてくる可能性は十分にある。
ステージ後半に神経質にポジション取りを繰り広げた総合勢上位勢は、最終的には何事もなく1日を終えた。総合25位まではタイムも順位も変動は一切起こらず、ログリッチが8秒差のマイヨ・ロホを危なげなく守った。
プリモシュ・ログリッチ
「明日は山での大切な1日だ。チームは昨日すでにすごく強いところを見せつけた。僕も足の調子はいい。僕らは、間違いなく、マイヨ・ロホのために戦う」(ログリッチ)
文:宮本あさか
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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