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このブログについて

プロフィール写真【栗村修】
一般財団法人日本自転車普及協会
1971年神奈川県生まれ
中学生のときにTVで観たツール・ド・フランスに魅せられロードレースの世界へ。17歳で高校を中退し本場フランスへロードレース留学。その後ヨーロッパのプロチームと契約するなど29歳で現役を引退するまで内外で活躍した。引退後は国内プロチームの監督を務める一方でJ SPORTSサイクルロードレース解説者としても精力的に活動。豊富な経験を生かしたユニークな解説で多くの人たちをロードレースの世界に引き込む。現在は国内最大規模のステージレース「ツアー・オブ・ジャパン」の組織委員会委員長としてレース運営の仕事に就いている。 「栗村修の"輪"生相談」では、日頃のライドのお悩みからトレーニング方法、メンタル面の相談など、サイクリストからの様々な相談にお答えしております。栗村修に聞いてみたい、相談してみたいことを募集中。相談の投稿はこちらから。

2021年08月18日

【輪生相談】将来、プロレーサーになりたいのですが、クロスバイクでも練習できますか?

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「僕は将来本気でプロのロードレーサーになりたいです。そこで、2つ聞きたいことがあります。
1つ目は僕は今クロスバイクに乗っているのですが、クロスバイクでも将来に向けてトレーニング出来るのでしょうか?2つ目は栗村さんは中学生のとき、どのようなトレーニングをしてたのでしょうか?」

(10代男性)

栗村さんからの回答

僕、栗村修がサイクリストのみなさんのご質問にお答えする「輪生相談」。長らく産経デジタル『Cyclist』で連載を続けてきましたが、Cyclistのサイト閉鎖に伴い、僕も解説者として20年以上お世話になっているこちらに引っ越して再開する運びとなりました。

新城選手

J SPORTSのサイトをご覧の皆さんはプロのレースを楽しまれていると思うのですが、輪生相談はレース観戦ファンだけではなく、自らスポーツバイクに乗る方からのご質問も多いのも特徴です。だから、いろいろな方からの、さまざまなご質問をお待ちしています。

さて、早速ですが1人目のご質問に移りましょうか。プロのレーサーを目指す高校生以下の男性ということですから、高校生か中学生かな?若い方からのご質問もいっぱい来るのが輪生相談です。

クロスバイクに乗っているということですが、そもそもサイクルロードレースという競技は、小さい頃からロードレースに専念していなくてもプロになれるのが特徴です。

いい例が、我らが新城幸也選手です。彼は高校3年生まではハンドボールをやっていたわけですが、その後ロードレースに転向し、24歳でツール・ド・フランスに出場しています。つまり、本格的にロードバイクに乗りはじめて6年でツールに出ちゃったわけですよ。

海の向こうなら、レムコ・イヴェネプールですかね。サッカーからロードレースに転向した翌年(!)には、なんとジュニアの世界選手権でTTとロードレースの両方を勝っています。

他にも、スキージャンプ出身のプリモシュ・ログリッチや、シクロクロッサーのワウト&マチューの二人、そして、エガン・ベルナルもMTB出身の選手です。

つまり、才能さえあれば、他競技や他種目からの転向でも、すぐに結果が出るのがロードレースなんです。才能さえあれば、ですが。

しかし、才能に加えもう一つの条件があります。今述べた選手たちには、若いときに基礎的なフィジカルを他競技、他種目で身につけてきたという共通点があります。つまり、ロードバイクに乗りはじめた時点で、すでに「スポーツ少年」だったのです。

上に書いたように18歳でロードレースに転向した新城選手ですが、小さいころからハンドボールだけではなく、趣味としてではありますが、ご家族と一緒にマラソンをするなど日常的に体を動かしていたようです。彼が育った石垣島の環境も、外遊びに向いていたんでしょう。食べるものも良かったでしょうね。

つまり新城選手は、18歳でロードバイクに乗りはじめた時点で、ロードレースに関してはまだまだだったと思いますが、すでに相当のベースを築き上げていたんです。ここが重要なポイントです。

どんな天才であっても、基礎がなければロードバイクに乗りはじめてすぐに結果を出すのは不可能です。それまでの、スポーツ少年としての積み重ねが不可欠なんです。

新城選手と比べるのもおこがましいのですが、実は僕も、中学生までの10年間はサッカーに打ち込んでいました。サッカーの練習で有酸素運動能力も身に付きましたから、中学生で出た駅伝では神奈川県で3位でした。あえてこう書きますが、「僕くらい」の選手でも、マラソンで県3位になれる程度のスポーツ少年になってからロードバイクに転向したんですよ。他の運動が全くダメな帰宅部の少年がロードレースで才能を開花させた例もありますが、あまり多いパターンだとは言えません。

だから質問者さんも、今のうちにたくさん運動をして基礎体力をつけ、スポーツ少年になっておいてください。ロードバイクに乗るのは後でも間に合います。打ち込むスポーツは全身を使う有酸素運動で、かつ、可能なら体を左右対称に使うスポーツだとなおいいでしょう。ロードバイクの上では左右対称に体を使う必要がありますからね。

その上でようやくご質問にお答えすることになりますが、クロスバイクでも当然、トレーニングはできます。ただ、将来を考えると、ロードバイク的なトレーニングをするよりも、もしオフロードも走れるタイプのクロスバイクならば、自転車の走行が許可されている野山を駆け巡る方がいいでしょう。

近年、他種目から転向する選手が活躍していますよね。というよりも、今のロードレースはシクロクロスやトラック競技、MTBから転向組によって戦われている、と言っても過言ではないくらいです。

なぜでしょうか?それはロードレースという競技が少し特殊だからです。ロードバイクの上では、限定的な体の使い方しかできないんです。

しかしシクロクロスやMTBなら、ロードバイクよりも広く、さまざまな面で体を鍛えることができます。フィジカル全般だけでなく、バイクコントロール技術も身につきます。

そうやって、ロードレース以外の自転車競技で広くしっかりとした土台を作った選手たちがロードレースに転向すると、その後の伸び代に断然、差がでてきます。子供のころからロードバイクだけでトレーニングをすると、広い土台が作れないんですよ。

だから質問者さんも近視眼的にならず、ランニングや水泳、クロスバイクでのオフロード遊びなどさまざまなやり方で体を動かして、頑丈なスポーツ少年になってください。まずはそこからです。ロードレースはあくまで最終到達地点なんですよ。

文:栗村 修・佐藤 喬

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