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【Cycle*2021 アークティックレース・オブ・ノルウェー:プレビュー】北極圏の美しきフィヨルドを舞台に、プロトンが熾烈な戦いを繰り広げる!注目の鮭ジャージを手にするのは誰!?
サイクルロードレースレポート by 宮本 あさかノルウェーの大自然の中を走り抜ける
鮭が生まれた川に帰るように……新型コロナウイルスの影響で1年間じっと北の海にこもっていたアークティックレース・オブ・ノルウェーが、2021年の夏、勢いよく表舞台へと戻って来る!8月5日(木)から8日(日)までの4日間、北極圏の美しきフィヨルドを舞台に、プロトンが熾烈な戦いを繰り広げる。
白夜の戦いのスタートラインには、ツール・ド・フランスを走った11チーム(ワールドチーム7、プロチーム4)がずらりと並ぶ。2015年準優勝ベン・ヘルマンスや2019年大会準優勝ワレン・バルギルがいち早く参戦を表明しているが、大会の祖国ノルウェーの胸をときめかせるのは、もちろん地元の星たち。それはエドヴァルド・ボアッソンハーゲンであり、さらには「ノルウェー代表」のジャージをまとって大会入りするアレクサンダー・クリストフ!
なにしろ2013年の第1回大会でトール・フースホフトが総合を制して以来、総合王者の印・黄色いジャージを持ち帰ったノルウェー人は1人も存在しない。だからこそ2021年第8回大会は、かつてクリストフが制したトロムソの周回コースで幕を開け、フースホフトが逆転総合優勝を決めたハーシュタの周回コースで幕を閉じる。
つまり初日と最終日は、上れるスプリンター向けにコースは設計された。たとえば第1ステージは最終盤30kmで8.6kmのサーキットを3周回。短いけれど勾配のきつい2級峠(1.2km・8.1%)を4度上り下りし、最後の上りはラスト2.5kmに立ちはだかる。一方の第4ステージはより「パンチャー向け」との評判だ。スタート直後に1級峠が待ち構え、中盤にもちょっとしたアップダウンが織り込まれた。締めくくりはやはり8.4kmのサーキット×3で、2級峠(2km・5.5%)を3度こなす必要あり。
2日目もやはり俊足たちの脚の見せ所だろうか。ただしラスト50kmは緩やかな上り基調で、残り35kmから2級峠を2つ乗り越えねばならない。それでもラスト13.1kmで、大会史上初めてノルウェーを離れたら、フィンランドのキルピスヤルヴィまでの道はほぼフラットな道を進む。
自ずと総合リーダージャージの行方は、中間スプリントで3、2、1秒、フィニッシュラインで10、6、4秒……と配分されるボーナスタイムが大きく左右することになりそうだ。まさしく2013年フースホフトは、最終日区間勝利のボーナスタイムで9秒差の逆転総合優勝を収めている。昨2019年大会は、やはりアレクセイ・ルツェンコが最終日区間3位に飛び込み、4秒のボーナスタイムを手に……前日までの3秒差を大逆転。黄色いリーダーを着ていたバルギルは惜しくも区間4位に終わり、つまり1秒差の総合2位に泣いたのだった。
本物の上れる男たちにも、もちろん栄光をつかむ機会は用意されている。それが大会3日目のマルセルフ山頂フィニッシュ。全長3.7km 平均勾配7.8%の上り坂は、間違いなくクライマーたちの脚の見せどころ。2015年大会の第3ステージでほぼ同じコースを使い、同じ山でフィニッシュした時は、山の厳しさで名高いオーストリア一周やユタ一周で総合を制したベン・ヘルマンスがステージ勝利を手にした。また山頂に3秒差で滑り込んだレイン・タラマエが、翌日には総合勝者としての名誉を手に入れている。
山岳賞の副賞は鮭500kg!
ところでイエロージャージ争奪戦もいいけれど、今大会最大のお楽しみは、やはり山岳賞を巡るひときわ熱い戦いに違いない。だって争うのは平凡な山岳ジャージではないのだ。アークティックレース・オブ・ノルウェーのキング・オブ・マウンテンには……今やすっかりおなじみ、サーモンジャージが与えられる。そう、つまり、鮭ジャージ!
しかも副賞が鮭500kgというから、誰もがポイント収集に夢中になる。ちなみに2017年夏に鮭を持ち帰ったベルンハルト・エイゼルは、秋のチームキャンプでチームメートやスタッフたちと美味しく食べた。2018年サーモンジャージのシンドル・ルンケは、地元ノルウェー人という特権を生かして、賞スポンサー本部から「小分け」で受け取る方法を選んだ。スモークサーモンを楽しみ、鮭バーガーを作り、家族や友達、チームで分け合ったけれど、それでもまだまだたっぷり残っていたらしく、……翌年ルンケはあえて山岳ジャージを獲りに行かなかったとさえ言われている。
文:宮本あさか
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宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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