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サイクル ロードレース コラム 2021年7月28日

【Cycle*2021 クラシカ・サンセバスティアン:プレビュー】激坂を乗りこなし、全速力で下った先で「大きなベレー帽」を手にするのは誰か

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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クラシカ・サンセバスティアン

クラシカ・サンセバスティアン

昨夏はひっそりと静まり返ったスペイン・バスク地方の、大西洋岸の町サンセバスティアンが、今年は燃えるような活気を取り戻す。ビーチリゾート客で華やかににぎわい、もちろん、世界最高峰のプロトンも帰って来る!

ツール・ド・フランスという大きな山を乗り越えた直後の、シーズン後半戦の始まりを告げる真夏の山岳大戦。選手たちにとっては、東京五輪という例外を除けば、3カ月ぶりの本格派ワンデークラシックでもある。この先には大きな目標である世界選手権や、秋の終わりのモニュメント、イル・ロンバルディアへと続くイタリアワンデーシリーズも待っている。3週間の長旅から大急ぎで身体と気持ちを切り替え、大切なたった1日に向けひたすら集中し、6時間前後のバトルにすべてをぶつけねばならない。

スペイン唯一のUCIワールドツアーワンデーレースは、おなじみサンセバスティアンからサンセバスティアンまで。美しいビスケー湾を起点に、8の字を描くように走り回る。しかし全長223.5kmのコースは、むしろ起伏天国。等級のつけられた6の厳しい上りと、名もなきたくさんの坂道たちがちりばめられている。

中でも本格的な優勝争いが勃発するのは、フィニッシュ手前約70km。サンセバスティアン伝統の山ハイスキベルの全長7.9km、平均勾配5.6%、最高8.5%の山道が、25チーム・175選手で構成された集団を小さく絞り込んでいく。

かつてはコース後半に2度よじ登ったハイスキベル峠だが、3年前から、開催委員会は登場回数を1度に減らした。決して難度を下げるためではない。その逆だ。代わりに距離は短いけれど、勾配がはるかに厳しい激坂エルライツ峠が、ハイスキベルの次に組み込まれた。全長3.8kmの坂道の、平均勾配は10.6%。麓からてっぺんまで一定して勾配が高く、脚を緩める隙などそこには一切存在しないない。

恐るべき登坂競争の締めくくりは、2014年から最終峠の地位を守り続けるムルギル・トントラ峠だ。登坂距離2.1km、平均10.1%。エルライツとは正反対の、極めて緩急の多い激坂には……20%超ゾーンも3か所待ち受ける!

つまり脚自慢のパンチャーたちによる熾烈な加速合戦で、いっそう刺激的になった近年のクラシカ・サンセバスティアンだけれど、決して変わらない原則がある。それは「下り切った先でフィニッシュ」ということ。

たとえムルギル・トントラを先頭で駆け上ったとしても、頂上からフィニッシュまでの8.5kmを、極めて上手くこなさねばならない。だからこそ勝者リストには数々の下り巧者の名が並ぶ。ルイスレオン・サンチェス、アレハンドロ・バルベルデ、ジュリアン・アラフィリップ、トニー・ガロパン……。今ツールで「下りフィニッシュのほうが自分向き」と自覚したバウケ・モレマは、2016年に、この下りで独走態勢に持ち込んだ。かつて下りで世界王座を勝ち取ったミハウ・クフィアトコフスキも、2014年大会、上りでの遅れを下りで埋め、そのまま優勝をさらい取っている。

激坂を乗りこなし、全速力で下った先で、大会名物「大きなベレー帽」を手にするのは誰か。ルイスレオン・サンチェス、アラフィリップ、ガロパン等々、欧州で夏を過ごした元王者たちはもちろん、ツールから東京経由でバスクに乗り込む予定の名前もちらほら聞こえてくる。モレマ、ダニエル・マーティン、ウィルコ・ケルデルマン、ジュリオ・チッコーネ……。だって自転車選手にとって夏はこれからが本番なのだ!

文:宮本あさか

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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