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「オリンピックは自分のために走れる」新城幸也選手インタビュー ~ツール・ド・フランス、オリンピックにかける思い~
サイクルロードレースレポート by 浅野 真則ジロ・デ・イタリア 集団の中で楽しそうに笑顔を見せる新城選手
先日14回目のグランツールとなるジロ・デ・イタリアを完走し、東京五輪に日本代表として出場することが決まっている新城幸也選手。日本を代表する彼にとっても、ツール・ド・フランスとオリンピックはそれぞれ特別なレースだという。新城選手にそれぞれのレースへの思いをうかがった。
J SPORTS:今年のツールのコースってご覧になりましたか?
新城:チームの監督やスタッフはかなり早い段階から下見をしているはずですが、自分はまだ出場が確定していないので見ていません(笑)。細かい高低差とかコーナーの感じとか、詳細なデータがないとあまり意味がないんですよね。レースが近くなって、レースブックが出ると、高低差とかどの道路を通るか分かりますし、1週間どういう感じになるか、ステージごとのアップダウンや横風などの注意すべきポイントを初めて具体的にイメージできるんです。
J SPORTS:今年のツール・ド・フランスのグランデパールとなるブルターニュ地方は特に自転車競技が盛んな地域ですが、どのような印象をお持ちですか?
新城:選手泣かせのコースになるのではないかという印象ですね。というのも、細かいアップダウンがあり、天気も変わりやすいですし、海沿いは風も強いです。道が狭いところもあり、ミュール・ド・ブルターニュもあるので差も付きやすいでしょう。
J SPORTS:第11ステージでモンヴァントゥを2回上るのも今大会のハイライトとなりそうですが、モンヴァントゥに関する印象はいかがですか?
新城:こんなことを言ってしまうとあれですが、モンヴァントゥだからといって特別な思い入れはないですね。僕たちにとっては、レースがどう動くかで印象も変わるんです。ペースが上がって速く上ればどんな上りもきついですし、ゆっくりだったらきつくないんです(笑)。コースの印象としては、上り口だけがきついイメージ。風が吹いたら、周囲が開けている上り始めと上の方は吹きさらしになるのでつらくなると思います。
J SPORTS:もし新城選手がツール・ド・フランスに出場された際は、どんな走りを見せてくれますか?
新城:もしツール・ド・フランスに出場することになるとしたら、アシストをすることになるので、それがメインですね。集団待機で誰かのサポートをするのが基本ですが、エースが勝ったらアシスト冥利に尽きます。もし、10人以上の逃げができたら自分も入る可能性があるので、そうなるとステージ優勝の可能性も出てきますよね。
ツールはフランス全土を回る連続ドラマのようなもので、僕の走りだけでなく、チームのストーリー、美しい景色を楽しんでいただければと。
オリンピックは自分のために走れる。ツールとは違う特別なレース
ジロ・デ・イタリア最終日の総合表彰台に上がる新城選手
J SPORTS:東京オリンピックへの出場が確定していますが、どういった走りを見せてくれますか?
新城:オリンピックってやっぱり特別だなと思います。僕はグランツールに日本人としては最多の14回、ツール・ド・フランスだけでも7回出ていますが、日本ではオリンピックでメダルを獲得した他種目の選手に比べて知名度も注目度も低いのが現状です。
オリンピックでメダルをとることで、日本でのロードレースの知名度が上がるはず。チャンスがあれば狙いたいですね。
オリンピックではツールのようにチームのために走るのではなく、自分のために走ることができるので、持っている力を100%出すことは最低限の目標。現時点では世界の選手ベスト20にも入っていないけれど、ロードレースでは何があるか分からないので、いい走りをしたいですね。
J SPORTS:ツール・ド・フランス閉幕直後に控える東京オリンピックは祖国での開催です。東京オリンピックへの思いを聞かせてください。
新城:僕の選手としての強みは、長いステージレースで最後まで調子が落ちないこと。過密日程を心配する声もありますが、個人的にはレース間隔が1カ月あくよりはいい。ツール走ってそのままの調子で臨めるからです。
個人的に18歳から日本を離れてレース活動をしているので、なかなか日本の皆さんの前で走る機会はありません。東京オリンピックのロードレースは世界のトップ選手が集うヨーロッパのようなレースが日本で開催されることになりますし、チームのためでなく自分のために走る貴重な機会です。日本はコースも知っていますし、日本語の声援は本当に力になります。頑張りたいですね。
J SPORTS:最後にJ SPORTSで観戦しているツールファンにひと言お願いします。
新城:ツールは、ファンにとっても選手にとってもチームにとっても待望のイベント。新型コロナウイルス感染症の影響で観客を入れるかどうかは未知数ですが、観客の数や熱量が他のレースとは違います。それが3週間も続くのはツールでしか味わえない面白さだと思います。マラソンとか駅伝が好きな人なら、「3週間マラソンが続く」と思えばきっと興味を持っていただけるのでは。レースを楽しみながら、もし僕が出場することになったら声援よろしくお願いします!
文:浅野 真則
浅野 真則
あさのまさのり。自転車専門誌やWEBなどで活動する自転車ライター。製品インプレッションやトレーニング・ロングライドなどのHOWTO記事、イベントなどの実走レポートを得意とする。本業の傍らJBCFのエリートクラスやホビーレースに参戦中で、サイクルロードレースは走るのも見るのも好き。最近はふるさとの三重県などでサイクルツーリズムの魅力を伝えることをライフワークのひとつとしている。
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