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サイクル ロードレース コラム 2021年6月3日

【クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ 第4ステージ:レビュー】TT強化が奏功したルツェンコ「この勝利で得た自信はツールにも五輪にもつながる」

サイクルロードレースレポート by 福光 俊介
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アレクセイ・ルツェンコ

アレクセイ・ルツェンコ

アスタナ・プレミアテックがツール・ド・フランスのメンバー入り候補選手を集めて行った、スペイン・カナリア諸島でのトレーニングキャンプ。島の最高峰であるテイデ山にベースを張っての高地トレーニングで、アレクセイ・ルツェンコは順調にコンディションを上げた。

特に力を入れたのがタイムトライアル練習で、TTバイクの感触を確かめながら、誰よりも多くの時間をこのトレーニングに割いたという。

生粋のタイムトライアルスペシャリストではないけれど、普段は上りに強いから、タイムトライアルだってコースにフィットさえすれば上位を狙える力はある。もっとも、中央アジアの雄・カザフスタンのTTチャンピオンだ。

16.4kmというレース距離、そして中盤以降上り基調となるレイアウトも味方した。力の配分がしやすく、最後の6~7kmに持っている力を注いだ。トレーニングで得た確かな感触と、得意のシチュエーションでステージ勝利を手繰り寄せてみせた。

クリテリウム・ドゥ・ドーフィネでは2年ぶり採用となる個人タイムトライアル。スタートから少しの間下って、あとは緩やかな上りが続くコースレイアウト。フィニッシュ前には10%近い勾配も控えており、TTスペシャリストだけでなくパワー系のライダーにもチャンスのあるステージだった。

前半スタート組では、ハリー・スウェニーが22分28秒を記録して後続の基準タイムになると、ユンボ・ヴィスマのコアメンバーに昇格したヨナス・ヴィンゲゴーが力通りの走りでトップタイムを35秒更新。

スタート順が後半に入ると、まずリッチー・ポートがスペシャリストぶりを発揮。終始ヴィンゲゴーのタイムと僅差で推移しながら、フィニッシュでは1秒上回った。そして、ここから好タイムが連続する。

ポートの7人あとに出発したヨン・イサギレが後半セクションでペースを上げてトップタイムを6秒更新すると、さらに7人後ろでスタートしたルツェンコが会心の走り。中間計測こそわずかに遅れたが、イサギレ同様に後半でペースを上げて終わってみれば21分36秒でトップに。フィニッシュ前の上りでは、数分前にコースへ繰り出していた選手たちを次々と抜き去る圧巻の走り。その後の選手たちにルツェンコのタイムまで迫る選手が現れず、そのままステージ優勝が決まった。

「全力を尽くした結果がステージ優勝になったので本当にうれしい。コースも私向きで、最初の6kmは力をセーブし、最後の6~7kmで全力を出した。フィニッシュでは200%の力を出し切ったと心から思えたよ」(アレクセイ・ルツェンコ)

フィニッシュ直後のマイヨ・ジョーヌ

フィニッシュ直後のマイヨ・ジョーヌ

最終走者のルーカス・ペストルベルガーも好走したため、ルツェンコは惜しくもマイヨ・ジョーヌ奪取はならなかった。それも1秒差。「惜しいけど、まだドーフィネは終わっていないから、明日以降チャレンジしてみるよ」。

それより何より、この勝利で先々への自信を手にしたことがうれしい。もちろんツールのメンバー入りもそうだし、カザフスタン代表として挑む東京2020五輪も楽しみになってきた。

「今後の予定はツールがメインだけれど、オリンピックも頭にある。この勝利で得た自信はツールにもオリンピックにもつながるはずだよ」(ルツェンコ)

戦前の予想通り、このステージで総合順位は大シャッフル。総合系ライダーではウィルコ・ケルデルマンや、新鋭のイラン・ファンワイルダーらが順位を上げたものの、マイヨ・ジョーヌ着用の可能性もあると見られていたゲラント・トーマスは伸びず。7.5km地点の中間計測ポイントではトップだったが、後半に失速してしまった。結局、ルツェンコから23秒差のステージ10位。総合では8位のままだ。

「前半で攻撃的に行き過ぎたことが反省点。最後の7~8kmを維持するには難しい状況を作ってしまった」(ゲラント・トーマス)

一方で、最後にコースへと飛び出したペストルベルガーは、遅れを最小限にとどめてマイヨ・ジョーヌを守ることに成功。前日は第2ステージでの大逃げがたたって脚が動かず、レース後も弱気な発言に終始していたが、身も心も何とか持ち直してみせた。

「このタイムトライアルにすべてを賭けた。マイヨ・ジョーヌが僕に翼を授けてくれたんだ。いまはジャージを守ったことにただただ驚いているよ」(ルーカス・ペストルベルガー)

ルツェンコと同様に上り基調の後半に力を注ぐとともに、横風が強かったという終盤も懸命に踏み続けたことがキーポイントになったと振り返ったペストルベルガー。「明日もマイヨジョーヌを守れる可能性は十分にあるんじゃないかな」すっかり気持ちは前向きだ。

ドーフィネは折り返し地点を過ぎ、後半戦へと入っていく。175.4kmで争われる第5ステージは、後半に4つのカテゴリー山岳が集中し、フィニッシュ前約12kmで頂上を迎える2級山岳コート・ド・モンルビュの存在感がとりわけ大きい。平均勾配12%で、中腹では最大15%に達する急坂が、レースの方向性を決定づける。

主催者によれば平坦ステージだというが。セオリー通りにはレースが運ばないと考えておいた方が良いだろう。

文:福光俊介

福光 俊介

ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う

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