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サイクル ロードレース コラム 2021年6月2日

【クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ 第3ステージ:レビュー】三度目の正直コルブレッリ「これこそ僕が望んでいた美しい勝利だ!」

サイクルロードレースレポート by 福光 俊介
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ソンニ・コルブレッリ

ソンニ・コルブレッリ

まさに三度目の正直。レース展開も、コースレイアウトも、そう簡単には勝たせてくれるような要素ではなかったけれど、最後はもはや力業。スピードとパワーが求められる局面なら誰にも負けない、そんなスタイルを象徴する勝利になった。

キャリアを重ねるとともに上りへの適性を高め、「上れるスプリンター」の代表格になったソンニ・コルブレッリ。ピュアスプリンターとの対峙は上手くいかないことの方が多いが、ちょっとした丘越えやフィニッシュ前が上り基調ならば攻略はお手のもの。プラン通りであれば、第1ステージから3連勝していたって不思議ではなかった。

難産の勝利となったが、前日までの2ステージの雪辱を遂げた。ひとまず、今大会のミッションは達成である。

クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ第3ステージは、無印の上りも含めて丘越えがコース前半に集中。レース後半からは平坦となり、スプリンターでも攻略可能と見られた。主催者発表では丘陵ステージにカテゴライズされているが、その大きな理由は最後の約2.5kmが上っているから。スプリントを狙う選手にとっては、パワーが求められた。

スタートから続いた2人の逃げだったが、早い段階でメイン集団が射程圏に捉えて、いつでもキャッチできる態勢を整えた。迫るのが早かったこともあって、少しばかりのタイム調整を行ったが、残り20kmを前に労せず逃げメンバーを吸収。

このステージの本質は、ここからだった。イネオス・グレナディアーズを中心に急激なペースアップが図られると、混乱した集団内でギヨーム・マルタンやワレン・バルギルらがクラッシュ。素早くレースに戻ったマルタンはアシストとともに集団復帰を果たしたが、ダメージが大きかったバルギルは脱落してしまった。

それでも、スピードが緩む気配は一切ない。残り7kmではわずかな上りを利用してイネオスが集団の人数を絞りにかかると、その餌食となった選手たちがいたるところで中切れを起こした。急激に激しさを増した流れで、前線で生き残ったのは50人ほど。

ステージ優勝争いは予想通りスプリントに。ただ、やはり上り基調ゆえに完全に主導権を得るチームは現れず、勝利に飢えた選手たちが自らの力でもって前方へと上がってくる。ミハウ・クフィアトコフスキが先頭に出ると、呼応するようにコルブレッリが番手を押さえる。その逆サイドからはアレクサンデル・アランブルが猛然とスプリントを始める。

混戦にも周囲の状況にきっちり対応したコルブレッリ。アランブルの猛進にも追随し、残り100mで満を持して先頭へ。後続の追い上げこそあったが、トップは譲らない。大会3日目にして、「ようやく」というフレーズがピッタリのステージ優勝を遂げた。

「やっとだよ!これで十分満足だ。これこそ僕が望んでいた美しい勝利だよ」(ソンニ・コルブレッリ)

前日までの2ステージではレースを支配しきれなかったバーレーン・ヴィクトリアスだったが、この日はコルブレッリを勝たせようとアシスト陣が奮起した。イネオス・グレナディアーズが中心になってレースをコントロールしたことも味方につけ、終盤のペースアップにも人数をかけてコルブレッリを前線にとどまらせた。

「最後の10kmは本当にハイスピードで、ポジション争いも大変だった。だけどチームは完璧な仕事ぶりだった。本当に感謝の言葉しかない」。コルブレッリはそう話すと、感情を昂らせながらもライバルをたたえることも忘れなかった。「残り1kmからのクフィアトコフスキの牽引は本当に強かったし、アランブルのスプリントにも驚かされた。彼らについていかなければ僕の勝利はなかったんだ」。ポイント賞でも首位を独走。マイヨ・ヴェールがひときわ映えたステージとなった。

マイヨ・ジョーヌのルーカス・ペストルベルガー

マイヨ・ジョーヌのルーカス・ペストルベルガー

グリーンジャージの歓喜の後ろでは、マイヨ・ジョーヌのルーカス・ペストルベルガーが23位でステージを終えていた。個人総合ではコルブレッリに2秒差まで迫られることとなったが、何とかジャージはキープした…そう、何とか。

「昨日の疲れがあって大変なステージだった。レース前のローラーでは大丈夫だと思ったのに、スタートしてみたら全然ダメ。タイムを失わなかったことだけがせめてもの救いだった」(ルーカス・ペストルベルガー)

チームは、マイヨ・ジョーヌ防衛の最善策はペストルベルガーでのスプリントと踏んでいた。だからアシスト陣が準備に勤しんだが、肝心のペストルベルガーが動けなかった。それを察知したウィルコ・ケルデルマンが5位に入って、アシスト陣へ心ばかりの埋め合わせをしたのだった。

スピード勝負だった前半戦を経て、大会は中盤戦へと入っていく。そろそろ、総合争いも意識したレース展開に移っていきそうだ。その皮切りとなるのが、第4ステージに設けられる16.4kmの個人タイムトライアル。上下の変化がそれほどないコースなので、ステージ争いはタイムトライアルを得意とする選手たちが演じるだろう。同時に、総合系ライダーたちがどこまでポジションを上げられるかが焦点にもなる。いずれにせよ、個人総合順位のシャッフルが起きそうだ。

そして、マイヨ・ジョーヌの行方である。その気になればタイムトライアルも決して悪くないペストルベルガーだが、「脚の状態次第。調子が良ければトライをしてみる」と何だか冴えない。彼がジャージのために走るかどうかは、スタートしてみてのお楽しみ、といったところだろうか。

文:福光俊介

福光 俊介

ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う

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