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サイクル ロードレース コラム 2021年6月1日

【クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ 第2ステージ:レビュー】大会序盤2ステージに賭けていたペストルベルガー「ステージ優勝とマイヨジョーヌはキャリアにおける大成功の1つだ」

サイクルロードレースレポート by 福光 俊介
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マイヨ・ジョーヌに袖を通したペストルベルガー

マイヨ・ジョーヌに袖を通したペストルベルガー

大会の2週間前、チームから送られてきたレースプランに心が躍った。開幕してすぐの2ステージで自分にチャンスが与えられていることと、出場が予想される選手の中にスプリンターが指折り数える程度しかいないこと。それが確認できただけで、自らがどうレースを進めるべきかのイメージが膨らんだ。

プロトン屈指の“逃げ屋”であるルーカス・ペストルベルガーにとって、ドーフィネは目に見える結果を残すための大会だった。4月のレース以降、少しの休養を経てトレーニングキャンプに参加。今季序盤はチームオーダーを重視していたからビッグリザルトとは無縁だったが、そのキャンプをきっかけに調子が急上昇している感覚があった。チームもそれを分かっていたから、ドーフィネで彼にチャンスを与えていた。彼も、チームも、狙いは大会序盤の2ステージだった。

クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ第2ステージは、5つの丘越えを含んだ173kmのレース。本格山岳までにはもう少し時間があるので、当面は逃げ切りを狙う選手と、登坂力のあるスプリンターが主役を争う流れが続く。このステージに限っては、終盤に連続する2級と4級の上りでいかに粘れるかが勝利のキーポイントでもあった。

スタートして早い段階でペストルベルガーら5人の逃げが先行。マイヨジョーヌをはじめとする4つの賞すべてを抱えるブレント・ファンムールに代わって、ロット・スーダルはマシュー・ホームズを送り込んで、山岳ポイントを稼いでいく。彼の狙いがそれだけだと分かると、ペストルベルガーはスピードマンのシェーン・アーチボルドを引き連れて逃げ態勢を強化することに。それが残り35km。長い下りを利用して加速すると、最大5分から徐々に縮小傾向にあったメイン集団との差が再び開いていった。

長距離のハイペース巡行を得意とするペストルベルガーと、スプリンターの発射台を務めるタイプのアーチボルド。タイプの違いゆえ、少しずつ両者の脚が合わなくなりつつあったが、フィニッシュまで残り18kmのタイミングでアーチボルドが限界に達してしまった。そこからはペストルベルガーの独走態勢。最後に待つ2つの上りで苦しんだが、何とかフィニッシュまで持ちこたえた。中間スプリントポイントを1位で通過していたことや、後方でファンムールが遅れていたことが関係し、終わってみるとマイヨ・ジョーヌまで舞い込んできた。

ペストルベルガーといえば、2017年のジロ・デ・イタリア第1ステージでの逃げ切りを思い浮かべる人も多いはず。集団の混乱に乗じて、リードアウトから切り替えて猛進したあの逃走劇。マリア・ローザを着られたのは1日だけだったが、それでもキャリアを激変させるには十分なインパクトだった。

だけど、4年たった今、ドーフィネでのステージ優勝と同時に手に入れたマイヨ・ジョーヌに胸がいっぱいだ。あの時のマリアローザと比較することは確かにナンセンスかもしれないが、何より狙ったステージでしっかりと結果を出して、なおかつ誰もが憧れるイエローのスペシャルジャージに袖を通せるのだから、喜びは何倍にも跳ね上がる。

単独で逃げるペストルベルガー

単独で逃げるペストルベルガー

「ステージ優勝できて最高の気分。それに、マイヨ・ジョーヌまで着られるなんて本当に信じられない気分。これはキャリアにおける大成功の1つに数えられると思う」(ルーカス・ペストルベルガー)

プロトン内ではすっかり知られた存在だし、力を考えれば数日間マイヨ・ジョーヌを着続けることも大いに考えられる。大成功の余韻に一晩浸ったら、レースリーダーとしての責任をまっとうする日々が始まる。

一方、2日連続で逃げに行かれてしまったメイン集団。両日に共通したのは、重要な局面で意思統一が図られなかったところだ。ソンニ・コルブレッリで勝ちたかったバーレーン・ヴィクトリアスは、レース中何度か集団の主導権を握っていながら、気が付くとその座を他チームに奪われてしまっていた。結局、コルブレッリは2日連続で2位。ポイント賞で首位に立ち、マイヨ・ヴェールに袖を通したことがせめてもの救いだ。

「今日に関しては逃げ切ったペストルベルガーが本当に強かった。2日連続の2位…まぁこれもまたサイクリングの1つということだね」(ソンニ・コルブレッリ)

もちろん、ドーフィネがそう易々と攻略させてくれるようなレースでないことは分かっている。それでも結果へ躍起になるコルブレッリ。2日分の雪辱を期して、第3ステージに臨む決意だ。

その第3ステージは、カテゴリー山岳を前半に片づけて、後半は下りと平坦基調へと移っていく172km。フィニッシュ前は約2.5kmの上り基調だが、今大会に臨んでいるスピードマンたちであれば十分に攻略は可能。ただ、セオリーを崩す要素があるとすれば、天気や風、そして…集団内での意思疎通がいかにして図られるか。あまりまごついているようだと、3日続けて逃げが決まることだってあり得る。

文:福光俊介

福光 俊介

ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う

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