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サイクル ロードレース コラム 2021年5月9日

【ジロ・デ・イタリア2021 レースレポート:第1ステージ】24歳フィリッポ・ガンナが2年連続大会初日にマリア・ローザ「去年以上に、今の僕が心から欲していたジャージ」

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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フィリッポ・ガンナ

2年連続大会初日でマリア・ローザを獲得したガンナ

個人タイムトライアル世界チャンピオンが、2年連続で、大会初日にアルカンシェルをマリア・ローザに着替えた。8.6kmの全力疾走で、24歳フィリッポ・ガンナが8分47秒52の最高タイムを叩き出し、出走184選手の頂点に立った。また上位4選手が1996年生まれ以降の「新人賞対象」と、近年のロードレース界で見られる若年化傾向が、改めて強調された。

「なんだかピンクを濃く感じるよ。本当にマリア・ローザを着ることが出来て嬉しい。去年以上に、今の僕が心から欲していたジャージだからね」(ガンナ)

5月のイタリアにジロ・デ・イタリアが戻ってきた。1年前は新型コロナウイルスの感染拡大で延期と開幕地変更を余儀なくされ、ばら色のプロトンの帰還は、10月まで待たねばならなかった。3度のロックダウンを経て、2021年は無事に、約束の場所と時間に全23チームが集結した。イタリア統一160周年を祝うトリノの市街地コースでは、マスク義務+場所限定で一般ファンの観戦も認められた。

そんな今年最初のマリア・ローザを選び出すコースは、前半は気難しく、後半はひたすら一直線。つまりスタート直後には石畳、路面電車レールとの2度の交差、さらには13番スタートで真っ先にトップタイムを叩き出したジョナタン・カストロビエホの証言通り「舗装状態の悪い穴だらけの路面」と、6日前にロマンディ最終TTを制したレミ・カヴァニャ曰く「危険なカーブがいくつか」待ち構えていた。ほんのわずかなハンドルミスも許されなかった。一方でラスト約3kmは誰もが「フルガス」、つまり全力でペダルを回した。

この道を上手く攻略したのがユンボ・ヴィスマだ。黄色いオランダチームからトビアス・フォスとエドアルド・アッフィニが、立て続けにトップタイムを更新。エガン・ベルナル、タデイ・ポガチャルという過去2年のツール総合覇者に続いて「U23版ツール」ツール・ド・ラヴニールを制した23歳と、ガンナと同い年で、昨世界戦も共にイタリア個人TT代表として戦った24歳は、1日の終わりにそれぞれ3位と2位という好位置につけた。全ジャージを独占したガンナに代わって、第2ステージはアッフィニがマイヨ・チクラミーノを、フォスがマリア・ビアンカを着て走る。また2017年最終タイムトライアルの勝者にして、36歳大ベテランのヨス・ファンエムデンも、区間6位と衰えぬ地力を見せた。

ドゥクーニンク・クイックステップもまた、トップ10に3選手を送り込んだ。「あとほんのちょっと何かが足りなかった」仏チャンピオンのカヴァニャが5位に入ったのだとしたら、元欧州個人TT王者レムコ・エヴェネプールは7位で終えた。21歳神童にとって生まれて初めてのグランツールであり、なにより昨8月15日の骨盤骨折以来約9ヶ月ぶりの実戦だったから..十分に驚異的な結果に違いない!

「スタート台では思わず涙が出た。だってあまりにも長い道のりだったから。フィニッシュラインでは脚がすごく痛かったけど、再びその痛みを感じられたことが嬉しかった。早くもトップ10に食い込めたことを誇りに思う」(エヴェネプール)

こんなチームメイト2人を上回り、もちろんあらゆる総合ライバルたちに早くもタイム差をつけたのが、22歳ジョアン・アルメイダだ。昨大会は初日TT2位を足がかりに15日間ピンクの日々を過ごしたが、今回は4位。あくまでジョージ・ベネットの「補佐役」だと強調するフォスには4秒及ばなかったものの、同僚レムコを2秒、「TTの準備をしっかりしてきた」という1996年生まれアレクサンドル・ウラソフを7秒突き放した。

3週間後のマリア・ローザ候補筆頭に名を挙げられる3人、サイモン・イェーツとヒュー・カーシーはアルメイダから21秒差、エガン・ベルナルは22秒差。4月中旬の右手首骨折から「予定より3週間も早く」復活したヴィンチェンツォ・ニバリも24秒差と、主要ライバルたちからほとんど遅れを喫せずにすんだ。ピュアクライマーのミケル・ランダは32秒差で被害を食い止め、TTが苦手なDSMダブルエース、昨大会2位ジャイ・ヒンドレーとツール2位2回ロマン・バルデはそれぞれ29秒と35秒の赤字で3週間の戦いに走り出す。

ちなみにバルデの「アルメイダから」の遅れが35秒なのだとしたら、「ガンナから」は52秒遅れ。なにしろ昨ジロで3つの個人タイムトライアルステージを独占したスペシャリストは、時速58.748kmという大会史上3番目に速い平均時速で駆け抜け(昨大会初日に自らが記録した58.831km/hよりほんの少しだけ遅かった)、2位アフィーニにさえ9秒98もの差を押し付けた。

184人中174番目に出走した世界チャンピオンの区間勝利を、実は危ぶむ声も多かった。なにしろ今年2月UAEツアー以来、実に3ヶ月も個人TT勝利から遠ざかっていた。ティレーノ〜アドリアティコでは3位、ツール・ド・ロマンディでは初日9位・最終日10位。開幕2日前の記者会見では「ロマンディは単なる通過点!」と笑い飛ばしていたが、優勝直後に放ったコメントを聞く限り、ガンナは決して泰然と構えていたわけではなかったようだ。

フィリッポ・ガンナ

ポディウム

「ついにやったね。ずいぶんと長い間、フィニッシュのホットシートで勝利を待つ機会がなかった。でも僕は今こうしてここにいる。本当に嬉しい」(ガンナ)

東京五輪でトラックと個人タイムトライアルの2つで金メダルを獲るため、自転車競技場で鍛錬を積みつつ、一方ではイネオス・グレナディアーズの仲間を補佐するため、テネリフェで高地合宿。複数の使命と野心に向かって少々「難解な」春を過ごしてきたガンナの努力は、こうして報われた。ジロ初日TTの連覇は、1984・1985年にプロローグを勝ち取ったフランチェスコ・モゼール以来36年ぶり。そのモゼールは1年目に総合優勝、2年目総合2位と自らが高みに上ったが、1年目に同僚テイオ・ゲイガンハートの総合優勝に尽くしたガンナの2年目は、果たしてどんな成果が待ち受けているだろうか。

「最初の山岳フィニッシュまでにジャージを失うだろうことは分かってる。でも僕はベルナルと(パヴェル)シヴァコフを助けるためにここにきた。この先は大いに苦しむだろう。でもモチベーションは高い」(ガンナ)

2年連続4度目のジロ・デ・イタリア参戦の新城幸也は、首位から53秒遅れで初日を無事終了。走行中に落車しながらも55秒遅れで完走したクリスツ・ニーランズは、フィニッシュ後の検査で右鎖骨骨折が判明。第2ステージ不出走がチームから発表された。

文:宮本あさか

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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