人気ランキング

J SPORTS IDを登録すれば、
すべての記事が読み放題

J SPORTS IDの登録(無料)はこちら

メルマガ

お好きなジャンルのコラムや
ニュース、番組情報をお届け!

メルマガ一覧へ

コラム&ブログ一覧

サイクル ロードレース コラム 2012年8月20日

ブエルタ・ア・エスパーニャ2012 第2ステージ

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
  • Line

蒸し暑いスタートラインに、全22チームの全出場選手が集結した。残念ながら198人ではない。前夜のチームタイムトライアルで落車、鎖骨骨折したエンリーコ・ガスパロット(アスタナ プロチーム)の姿が、そこにはなかったからだ。早くも1人欠けて197選手となってしまったプロトンが、いよいよ、本格的な2012年ブエルタ・ア・エスパーニャの旅へと走り出した。

グランツール初めての一斉スタートステージには、いつだって、「初めての」という特典がついていくる。初めての大逃げ、初めての峠、初めてのジャージ……。そして初めてのアタックが決まったのは、スタートから7km。ハビエル・チャコン(アンダルシア)、ハビエル・アラメンディア(カハルラル)、ミハイル・イグナチエフ(カチューシャ チーム)、そしてニキ・テルプストラ(オメガファルマ・クイックステップ)という4選手の手によるものだった。

ただこの初アタックは、あっさり正式な「初エスケープ」に昇華したわけではない。なにしろ前者3人が総合首位ヨナタン・カストロビエホ(モヴィスター チーム)からすでに1分以上の遅れを喫していたのに対して、前日のTTT2位チームに属するテルプストラはわずか10秒遅れ!しかもステージ途中に2つ設けられている中間ポイントでは、上位通過3名に6秒、4秒、2秒のボーナスタイムが与えられるのだ(ゴールのボーナスタイムは12秒、8秒、4秒)。テルプストラに数秒を掠め取られては、それこそ一大事。当然のようにモヴィスターは猛追態勢を崩さない。

他の3人にとっては幸いなことに、テルプストラはほんの数キロ抵抗したものの、ついには自らペダルをこぐ脚を緩めた。おとなしく後方へと引き下がり、プロトン内で1日を過ごすことを受け入れた。こうしてチャコン、アラメンディア、イグナチエフが、大会初めてのエスケープへと漕ぎ出した。同時に3人組みは、大会初めての山岳ジャージを争う権利も手に入れた。

ほぼ平坦なステージの真ん中に、小さな3級峠が1つだけ。つまりこの山を先頭で通過さえすれば、自動的に白地に青玉マイヨが付いてくる。だから普通ならば真っ先に山頂を越えたアラメンディアが、山岳ジャージを身にまとえるはずだった。……しかしアラメンディアにルール違反行為があったとして、審判団は降格を決定。代わりに2番目に山頂のラインを越えたチャコンに「首位通過」のポイントと、今大会初めての山岳ジャージが与えられた。

また大会初めての中間ポイント×2も争われ、いずれもイグナチエフがものにした。山岳賞を逃したアラメンディアは、ステージ敢闘賞に指名された。さらにはブエルタ独特の複合賞ジャージは、チャコンが貰っている。つまるところ3人は仲良くご褒美を分け合ったようだ。ただし最大5分ほどのリードを奪ったとはいえ、後方から恐ろしい勢いで追い上げてくるスプリンターチームの勢いを食い止めることはできなかった。ゴール前12km、大会最初の逃げに終止符が打たれた。

ちなみに吸収直前の、2度目の中間ポイントで、ちょっとしたサプライズが発生する。チャコンはすでに遅れ始めていたため、前方には2人しか残っていなかった。つまりメイン集団の選手たちには「3位通過」の可能性が残されていた。これはポイントなら1pt、ボーナスタイムなら2秒に値する。

「そもそもは危険を避けるために、前方ポジションへと上がって来ていただけなんだ。だから目標でもなんでもなかった。でも他の選手たちの位置取りを見て、自分が絶好の場所にいることに気がついた。だからニキ・セレンセンと話しをして、軽く上り気味だったから、トライすることに決めたんだ」

こう語ったのはアルベルト・コンタドール(チーム サクソバンク・ティンコフバンク)。復活優勝を目論むヒルクライマーは試みをまんまと成功させた。2秒を懐に入れ、すなわち「最大のライバル」と期待されるクリス・フルーム(スカイ プロサイクリング)のタイムに並んだ。

「もしも明日、再びボーナスタイムを取るチャンスが巡ってきたら、また取りに行くだろうね。どんな風にレースが決まるかなんて、決して分からないんだから」

コンタドールの言う通り、昨ブエルタはボーナスタイムが総合優勝を大きく左右している。そもそもボーナスタイムがなかったら、2011年の首位と2位の座は入れ替わってしまうのだ。開催委員会が昨季までの20、12、8秒から、12、8、4秒へとゴールボーナスタイムを減らした理由も、そこにある。

もちろん今第2ステージのゴールへと突進して行った面々は、ボーナスタイムなど求めていなかった。欲しかったのは区間優勝と、おそらくゴールポイント。山ばかりのブエルタに参戦した数少ないスプリンターたちが、こぞって隊列を組み、大会最初の大集団スプリントへ向けて着々と準備を進めていった。ラスト7kmの軽い上り坂では、セルゲイ・ラグティン(ヴァカンソレイユ・DCM プロサイクリングチーム)がアタックを試みるも、オリカ・グリーンエッジ、オメガファルマ・クイックステップ、そして土井雪広が先頭で引っ張るアルゴス・シマノの高速トレインが抜け駆けを許さなかった。

「ラスト5kmからはかなりの高速だったね。アルゴス・シマノのチームメートたちは、本当に素晴らしい仕事をしてくれた。アラン・デーヴィス(オリカ グリーンエッジ)とベン・スウィフト(スカイ プロサイクリング)の背中を見失ったときにも、ボクを前線に引き戻すためによく働いてくれた。そしてこの3人で、ゴールスプリントが争われたんだ」

ジョン・デゲンコルブ(チーム アルゴス・シマノ)は、ゴール後に、こんなふうに最終盤の速い流れを振り返った。最後に「ボクこそが最強だった」というセリフも付け加えることも忘れずに。そう、ラスト500mのロータリーを抜けた直後から始まった長い長いスプリントを、激しく競り合った後に、デゲンコルブが制したのだ。自身初めてのグランツール区間勝利。アルゴス・シマノにとっては、……7月のツール・ド・フランスで思い通りの成績が上げられなかったオランダチームにとっては、昨年のマルセル・キッテルに続く嬉しいグランツール2勝目となった。

デゲンコルブは今大会初めてのポイント賞ジャージも獲得。カストロビエホは問題なく2日目のマイヨ・ロホ表彰台へと上がっている。

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

  • Line

あわせて読みたい

J SPORTS IDを登録すれば、
すべての記事が読み放題

J SPORTS IDの登録(無料)はこちら

ジャンル一覧

J SPORTSで
サイクル ロードレースを応援しよう!

サイクル ロードレースの放送・配信ページへ