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「もううんざりだ」と、ランス・アームストロングがUSADA米国ドーピング機関とこれ以上は争わない姿勢を表明した。引退して約2年。またしてもツール7連覇王の話題が、プロトン内のトップニュースをさらってしまった。しかも、今回は「すわ、タイトル全剥奪か!?」と勇み足な情報が世界を駆けめぐった。ツール開催国のフランスでは、スポーツニュースはもちろん、一般のTVニュースで繰りかえし報道されている。ブエルタのレース現場にも、取材陣が大勢詰め掛けた。選手たちや関係者たちから聞こえてくるコメントを、一言でまとめればこうなるだろうか。「もううんざりだ」
アームストロングはドーピングを告白したわけではない。USADAは「タイトル剥奪」と意気込んでいるが、アメリカの一機関にフランスのレースの成績を変更する権利はない。しかも開催から8年以上経過した成績に関しては、開催委員会のASOにさえ変更不可能だ(だからビヤルヌ・リースの優勝も、公式には剥奪されていない)。UCI国際自転車競技連盟の判断を待つだけだが……現時点では、USADAに「決定に関する正当な理由」の説明を求めているところだ。
レースの外側は大揺れだったけれど、レース自体は「ほぼ」平凡なスプリントステージに終始した。スタートから2km地点でハビエル・アラメンディア(カハルラル)、パブロ・レチュガ(アンダルシア)、フランティセク・ラボン(オメガファルマ・クイックステップ)、ベルトイヤン・リンデマン(ヴァカンソレイユ・DCM プロサイクリングチーム)の4人が飛び出した。20kmほど走っただけであっさり5分のリードを奪った。ここで早くもチーム アルゴス・シマノがタイム差コントロールに乗り出したため、以降、タイム差が5分以上に開くことは決してなかった。
すでに区間2勝を上げているエーススプリンター、ジョン・デゲンコルブ(チーム アルゴス・シマノ)に3つ目の栄光をもたらすために、アルゴス隊列はそれこそ1日中仕事を請け負った。われらが土井雪広も、しっかりとプロトン先頭に陣取って、ほぼ最初から最終盤まで延々と牽引役を務め上げた。ゴール前30kmに迫ると、タイム差も1分20秒にまで縮まっていた。
ここへ来て、ようやく他のチームもスピードアップに参加。前線で激しいポジション合戦をしつつ、エスケープ集団を追いかけ始めた。前線の4人の、反応は素早かった。最後の悪あがきとばかりに、激しい加速合戦を敢行。まずはレチュガが千切られた。ラボンが抜け出し、リンデマンが同調する。大会3度目の逃げに乗ったアラメンディアは一旦遅れるも、渾身の力で追いついた。……と、3人の化かし合いは、その後も延々と10km以上に渡って続くことになる。ただしゴール前17.9km地点の、2つ目の中間ポイントを3人で駆け抜けた後に、エスケープには完全に終止符が打たれた。
吸収が終わっても、プロトンの加速は止まらない。マイヨ・ロホ擁するカチューシャ チームも、「不測の事態」に備えて前方で隊列に加わった。ゴール地の自動車サーキットが徐々にに近づき、緊張感が高まりつつあった、そんな時だ。ゴール前10km。プロトンの前から3分の1程のところで、集団落車が発生した。地面に落ちたのは10人程度。リッチー・ポート(スカイ プロサイクリング)が巻き込まれた。当然チームカーが止まって対応しているその時に、今度はリゴベルト・ウラン(スカイ プロサイクリング)がパンクの犠牲となった。つまりチームカーから援護を受けられぬまま、ウランは集団から遅れ始めてしまった。
さて、第4ステージではマイヨ・ロホ姿のアレハンドロ・バルベルデ(モヴィスター チーム)が落車したのにも関わらず、スカイ プロサイクリングが待たずに加速した。今回はスカイの大切なチームメート、しかも1人は総合4位だったわけだが……。そんなことはお構いなく、スカイは前線を奪い取った。しかも猛スピードで前を引き始めてしまった!サーキットに突入してもスカイ隊列は4人で強烈な牽引を繰り返した。プロトンは細く長い一列棒状となり、前方では一瞬、小さな分断さえ発生した。ラスト1km地点では、スプリンターのベン・スウィフトのために、総合2位フルーム自らが牽引するという行動にでたほどだ。
「スウィフトの発射台になろうとみんなで頑張った。でも強い向かい風が吹いていて、ペースを保つのは難しかった。すごく申し訳なく感じるよ。スプリントするには、あまりにもフィニッシュラインから遠い地点で、彼を1人にしてしまったから」(クリス・フルーム)
一方でラスト1kmから400m続いた左コーナーでは、多くのチームが前方ポジションへとよじのぼってきた。サーキット内側の芝生ゾーンを突っ切って前へと上がる、という離れ業を使うチームも多かった。スカイの黒いジャージは、とりわけアルゴス・シマノの白と黄緑のジャージに脇へ押しやられた。
「最終盤はかなりハードだった。スカイはスウィフトのために素晴らしい牽引を行ったね。でも結局はラストコーナーで、ボクのチームメートたちが、ボクを完璧な場所まで連れて行ってくれたんだ」(ジョン・デゲンコルブ)
真っ先にスプリントを切ったのは、フレンチトリコロールジャージだ。しかしフランス王者ナセル・ブアニ(FDJ・ビッグマット)が動いた瞬間に、デゲンコルブも駆け出した。そして22歳のフランス人を抜き去り、23歳イタリア人のエリア・ヴィヴィアーニ(リクイガス・キャノンデール)の追随をギリギリで跳ね返して、23歳ドイツ人がフィニッシュラインへと真っ先にたどり着いた。開幕1週間で3勝目。スプリント機会を全てものにしてきたことになる。
「簡単そうに見えるけど」とデゲンコルブは、前回優勝したときとほぼ同じセリフを口にする。「チームメートの助けがなければ、決してできないことなんだ。チームは1日中、隊列を組んで仕事をしてくれた。彼らのおかげで勝てた。本当にこのチームが誇らしい」(ジョン・デゲンコルブ)
結局スウィフトは10位で区間を終えた。スプリンター集団に続いて、2秒遅れで総合有力勢がゴールラインへとたどり着いた。ウランは1分09秒遅れてサーキットを走り終えた。総合4位から15位へと一気に陥落し、代わりに前日の総合5位から13位までの選手がそれぞれ1つずつ順位を上げた。
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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