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サイクル ロードレース コラム 2012年8月29日

ブエルタ・ア・エスパーニャ2012 第10ステージ

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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東海岸から一気に西海岸へと飛んだブエルタ一行が、1回目の休養日を終えた。大会も10日目に入ったが、リタイアは幸いにもわずか5人。193人の選手たちが、再び、長い戦いへと走り出していった。

「勝負の」個人タイムトライアルを翌日に控えるプロトンは、スタートと同時に2選手を先に行かせた。逃げ出したのはアドリアン・パロマレス(アンダルシア)とハビエル・アラメンディア(カハルラル)。チームTTを除く9ステージ中、アンダルシアはなんと8回も前方に選手を送り込んでいる。もちろん、おなじみアラメンディアは、第2、7、8ステージに次ぐ自身4度目のエスケープだ。

ただし今ブエルタここまで、大逃げの企てが上手くいったのは第4ステージ1回だけ。道が平坦なときはスプリンターチームが吸収を仕掛け、アップダウンがあれば総合本命たちがボーナスタイム獲得に向けて先を急ぐ。結局のところ、小さなスペインのプロコンチネンタルチームの2選手は、この日もジャージアピールだけで満足するしかなかった。

スタートから20kmほど走っただけで、スプリント3勝ジョン・デゲンコルブに「もう1勝を」と意気込むチーム アルゴス・シマノが、タイム差コントロールに乗り出した。そう、まさしくコントロールだった。序盤であっという間にタイム差が1分にまで縮まると、アルゴスボーイズはあえてスピードを落とす。そして最大6分45秒差にまで広がったところで、改めて差をじわじわと追走にかかった。ところが他チームが牽引に参加し始めた途端、またしても一気にタイム差は1分程度になってしまう。……ゴールまで80kmも残っていたというのに。

だからフライング気味、とばかりに、またしてもアルゴス隊列はペダルを回す脚を緩めた。あまりにも早く逃げ集団を吸収してしまうと、カウンターアタックの危険性が高まってしまう。こうして3分半までタイム差を広げると、再度、ゆっくりと前の2人を追い詰めて行った。またピム・リヒハルト(ヴァカンソレイユ・DCM プロサイクリングチーム)が単独アタックを試みたこともあったが、土井雪広が率いるプロトンへの抵抗は、長くは続かなかった。最終的にはゴールまで33.5kmの地点で、逃げを静かに回収している。

急速な吸収劇を避けつつ、しかもデゲンコルブは効率的なポイント収集さえも行った。今ステージの2回の中間ポイントで、逃げの2人に続いて3位通過(1pt×2)。前ステージ後に失ったポイント賞首位の座を、奪い返し、願わくばマドリードまで首位を守りきるために。

青く美しき海岸線を縦横無尽にかけめぐるステージ最終盤に入ると、アルゴス・シマノに代わって、オリカ グリーンエッジが全員で仕事を行った。さらにはカチューシャ チームにスカイ プロサイクリング、チーム サクソバンク・ティンコフバンクさえも激しい牽引を見せた。この動きはいずれも、「クリス・フルームが好ポジションを間違いなく確保できるように(スカイのプレスリリース)」、「アルベルト・コンタドールを先頭集団内でゴールさせるため(サクソバンクのマッギー監督)」と、総合リーダーが分断や落車でタイムを無駄に失ってしまわぬための防衛策。そしてラスト3kmのアーチを越えると、つまり「タイム救済ルール」が適応される距離に到達すると、静かに主導権をスプリンターチームに譲り渡した。

すると打倒デゲンコルブとばかりに、FDJ・ビッグマットとレディオシャック・ニッサンが前方へと雪崩れ込んだ。これまでの3度のスプリントチャンスで、4位が2回のナセル・ブアニ(FDJ・ビッグマット)と、2位と5位が1度ずつのダニエーレ・ベンナーティ(レディオシャック・ニッサン)を率いて、猛烈にフィニッシュラインへと突進した。

「最終盤は難しかったね。でも、最終盤だけ。スプリントの前に起こりえるあらゆる事態に対して、しっかり準備ができていたんだ。それに前段階では、ボクは、チームメートの動きだけに集中する。彼らを100パーセント信じているから」(ジョン・デゲンコルブ)

そして、今回もまた、ライバルたちの努力は無駄に終わることになる。ラスト500m。アルゴスの発射台が、リーダーの信頼に応えるかのように、道のど真ん中を競りあがってきた。そして「ブアニがボクらを追い越していくと、すかさずジョンは後ろに飛び乗った(発射台役のクーン・デコルト)」。さらには「ベンナーティの背後に回りこんだ。でもベンナーティがラスト200mで先頭ポジションに立つと、少しスピードを落としたんだ。だから、ボクには選択肢がなかった(デゲンコルプ)」。こうしてデゲンコルブが否応なしにスプリントに持ち込むと、もはや誰1人として先行することも、追い抜くこともできなかった。

全戦全勝。今大会4度目のゴールスプリント機会で、ドイツの若き23歳は、4度目の区間勝利を手に入れた。休養日前に失った緑色のジャージも取り戻した。そのポイント賞ジャージを譲り渡したロドリゲスは、大切な赤色ジャージを守るために、第11ステージの個人タイムトライアルに挑む。

「かなり難しいコースだけど、ボクにとっては悪くないコースだ。もちろんピュアクライマー向けではないけれど、TTスペシャリスト向けでもない。ボクに適しているコースだよ。上手くやれるよう願ってる」

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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