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サイクル ロードレース コラム 2012年9月2日

ブエルタ・ア・エスパーニャ2012 第14ステージ

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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難関山岳3連戦の初日に、2人の選手が大きく動いた。5年連続の山岳賞獲得を狙うダヴィド・モンクティエ(コフィディス ルクレディアンリーニュ)と、復活マイヨ・ロホが欲しいアルベルト・コンタドール(チーム サクソバンク・ティンコフバンク)。ついに真打登場!とファンを楽しませるも、両者共に、目標から少々離れたところで1日を終えた。

全長149.2kmの短いステージに峠が5つ。全ての山岳ポイントを先頭で通過すれば、計31pt獲得できる。前日までの山岳賞首位の保持ポイントが22ptだったから、一気に青玉ジャージを奪い取れる可能性もある。こうしてモンクティエは、過去4度の山岳ジャージ獲得パターンに則って、大逃げ勝利+ポイント荒稼ぎを目論んだ。17kmで出来上がった16人のエスケープ集団に、上手く滑り込んだ。

ただし手強いライバルが、集団に紛れていた。第4ステージの大逃げ勝利で、すでに山岳16ptを手にしていたサイモン・クラーク(オリカ グリーンエッジ)だ。1つ目の峠こそモンクティエは先頭通過を果たすものの、以来、3峠連続でクラークに山頂スプリントを仕掛けられた。そして2日連続の大逃げで疲れているはずのオーストラリア人に、全てトップの座を奪い取られてしまう。しかも2位通過さえセルジュ・パウエルス(オメガファルマ・クイックステップ)にことごとくさらわれて……。37歳の大ベテランは、2つ目から4つ目までは3位通過で甘んじるしかなかった。

しかも後方集団の急速な追い上げに、逃げ切り勝利さえも不可能だった。「もはやこれ以上体力を使っても無駄だ……」と判断したのだろうか。それとも、ツール・ド・フランス第12ステージの下りで落車し、負傷リタイアに追い込まれた悪夢が蘇ったのか。4つ目の峠からの下りで、モンクティエは静かに先頭集団から離れて行った。

終わってみればモンクティエが手にしたのは、たったの9pt。大切な青玉ジャージは、この日だけで18ptを獲得したクラークの手に渡った(通算34pt)。もちろん3連戦の残り2日で、まだ66ptを積み上げる可能性は残っている。人生最後のグランツールを戦うモンクティエが、有終の美を諦めてしまうのはまだ早い。いままでだって大逃げ勝利を逃したこともあるし(2009年第8ステージは最終峠で吸収。第13ステージに再度挑戦して勝利を手にした)、勝ったはいいがジャージが取れなかったときだってあった(2011年は第11ステージ勝利も、ジャージを取るために第13ステージに再度の逃げを打った)。

ただしポイント収集目的のロングエスケープはまだまだ可能でも、……総合優勝争いの選手たちが、山頂フィニッシュ勝利をモンクティエに簡単に許してくれるかどうかは定かではない。例えばこの第14ステージは、エスケープ形成直後からサクソボーイズが全員プロトン前線に上がってコントロールに着手した。逃げ集団には最大3分10秒ほどしかリードを与えず、メインプロトンに関しては後方からどんどん脱落者を千切って行った。

追い詰められた前方の16人は、4つ目の峠でばらけ出した。さらに山頂を越えると、アルベルト・ロサダ(カチューシャ チーム)が単独で先を急ぎ始めた。ご存知の通りロサダは、普段はロドリゲスの忠実なアシストである。今年のジロ第15ステージでは、長い逃げの果てに……自らのプロ入り初勝利のチャンスをふいにしてまで、ラスト1km地点でロドリゲスの牽引役を務めたほど。そしてこの日も、吸収され、完全に後退してしまう前に、ロサダは最後の力をプリトに捧げることになる。

「サクソバンクの制御は厳しかった。でもボクらは心静かに走ることができたよ。だって逃げ集団にロサダが入ってくれたからね。彼は本当にいい仕事をしてくれた。それにボクの側には、ダニエル・モレーノがついていた。最後の最後に、この2人のチームメートがボクを助けてくれた。コンタドールの最初のアタックは、あまりにすごかったから、ボクは無理して付いていかなかった。自分のリズムで上ることに決めたんだ」(ホアキン・ロドリゲス)

コンタドールの最初のアタックとは、ラスト3.5km。アシスト役ラファル・マイカの凄まじい登坂スプリントに送り出されて、飛び出して行ったのだ。すぐに反応できたのはアレハンドロ・バルベルデ(モヴィスター チーム)だけ。ロドリゲスは一定リズムで上り続けた。ただモレーノに引かれ、すぐに合流したロサダに助けられたおかげで、ライバル2人を比較的あっさり捕らえることに成功する。

そこに総合3位クリス・フルーム(スカイ プロサイクリング)の姿がないと知るや、今度は総合4位のバルベルデが加速を仕掛けた。コンタドールはぴったり張り付き、またしてもロドリゲスはマイペースで追いついてきた。プリトにとっては非常に幸いなことに、遅れてモレーノも再合流してきた。なにしろコンタドールの2度目の大アタックの後も、モレーノが非常に献身的に働いてくれることになるのだから。

ゴール前2km。コンタドールが大きなアタックを打った。2週間前から幾度となく鋭い攻撃を披露してきたが、今回ははるかに長く効果的な一発だった。ライバルたちの姿はあっというまに後方へと消えて行った。ラスト1kmでは11秒の差をつけていた。決まった、と誰もが信じたに違いない。

しかし後方では、モレーノが必死の牽引を続けていた。フルームもアシストたちのたゆみない努力のおかげで、ついにロドリゲスのところまで追いついた。「コンタドールが前に行ったと知って、もしかしたらボクもロドリゲスからタイムを奪えるかもしれない」とさらにフルームさえ単独アタックを試みた。もちろんここでもモレーノが、驚異的な仕事を成し遂げるのだが。

「モレーノが最終1kmのアーチまで引っ張り上げてくれた。おかげでボクは勝てたんだよ。それにボクは非常に賢く戦った。自分で動くのは、ギリギリ最後の瞬間まで待ったんだ」(ホアキン・ロドリゲス)

ラスト1kmまでアシストたちに助けられ、無用なリズム変化を控えることで体力を温存してきたプリトは、最後に爆発的な加速をお見舞いした。フルームをあっさり置き去りにし、コンタドールへゴール前700mで追いつくと、そしてラスト200mで突き放した。3つ目の区間勝利に、ボーナスタイム12秒。今大会11回目のマイヨ・ロホ表彰台も待っていた。

5秒遅れでフィニッシュラインに到着したコンタドールは、またしても大いにステージに興奮を熱気をもたらした挙句に、区間勝利もマイヨ・ロホも手に入れられなかった。ロドリゲスとの総合タイム差も22秒と、また少し距離が開いた。コメントだけは相変わらず前向きだが……。

「感触は良かったし、満足している。プリト以外のライバルたちからは軒並みタイム差を奪うことができた。調子はいい。チームもしっかり働いてくれた。ただプリトは現時点で絶好調だから、こういった山頂フィニッシュで彼に抵抗するのは難しいね」(アルベルト・コンタドール)

またバルベルデは13秒遅れで、ロドリゲスを最後まで助けたモレーノは35秒遅れでゴール。フルームは38秒ものタイムを失ってしまった。つまりは総合タイム差で、とうとうバルベルデがフルームをとらえた!順位こそいまだフルームが総合3位につけているが、2人とも同じ1分41秒差。マイヨ・ロホ争いに関してはロドリゲスとコンタドールに大きく水をあけられてしまったが、この先は表彰台の3番目の場所を巡って、第4ステージの因縁の2人が争うことになりそうだ。

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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