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追い風に乗って、今大会最長ステージを猛スピードでプロトンは駆け抜けた。全長204.5kmで4時間17分17秒。時速は47.691km。開催委員会が予定していたゴールタイムを35分も上回って、勝者はフィニッシュラインへ飛び込んだ。
マイヨ・ロホ争いに大どんでん返しが見られた翌日、久しぶりにスプリンターたちにチャンスが巡ってきた。スタート直後に比較的あっさり5選手を先に行かせると、区間4勝ジョン・デゲンコルブ擁するチーム アルゴス・シマノが当然のようにプロトン前方に位置取りした。するとレディオシャック・ニッサンが、ダニエーレ・ベンナーティのために牽引協力を買って出た。2008年にこの日のゴール地バリャドリードで両手を上げた、そして2011年ジロで命を落とした元チームメート(当時はレオパード・トレック)のワウテル・ウェイラントに勝利を捧げるために。レディオシャック隊列に混ざって、土井雪広(チーム アルゴス・シマノ)のジャパンナショナルジャージがひときわ目に付いた。
おかげでグスターボ・セサル(アンダルシア)、ブレント・ブックウォルター(BMCレーシングチーム)、ルイス・マテマルドネス(コフィディス ルクレディアンリーニュ)、ガティス・スムクリス(カチューシャ チーム)、マルティン・ケイゼル(ヴァカンソレイユ・DCM プロサイクリングチーム)のエスケープ集団は、後方からの遠隔操作から逃れることはできなかった。50km地点で最大5分のリードを手に入れるも、逃げ切りの可能性はみるみる減っていく。
しかもステージ終盤にはリクイガス・キャノンデールやオリカ グリーンエッジ、ラボバンク サイクリングチームも、それぞれエリア・ヴィヴィアーニやアラン・デーヴィス、デニス・ファンヴィンデンのために集団加速を引き受けた。
高速レースには、残念ながら落車が付き物だ。ゴール前33kmではナイロ・クインターナ(モヴィスター チーム)、ダヴィデ・チモライ(ランプレ・ISD)、リーナス・ゲルデマン(レディオシャック・ニッサン)、アルノー・ジャネソン(FDJ・ビッグマット)が激しく地面に叩きつけられた。左肩を強く打ったゲルデマンは、マドリード到着まであと3日というところで、即時リタイアを余儀なくされた。
アクシデントはあっても、プロトンの威力は一向に衰えなかった。ラスト25kmに入ると、いよいよ追い詰められた前方の5人が、なんとか抜け出そうとアタック合戦を繰り広げるも……ゴールまで17kmを残してエスケープは全て回収された。すると赤から緑のジャージに着替えたばかりのホアキン・ロドリゲスと、カチューシャ チームのアシスト勢が、集団前方に一斉に詰め掛けた。あまりの急激な加速に、プロトンが真っ二つに分裂したほど!
「風が吹いていたから、注意する必要があった。幸いにも強風ではなかったけれど、分断を仕掛けるには最適なステージだったからね。とにかくアクシデントを恐れていたんだ。だから1日中、集団前方のポジションで走るように集中し続けた」(アルベルト・コンタドール)
新たにマイヨ・ロホを身にまとうアルベルト・コンタドール(チーム サクソバンク・ティンコフバンク)を少しだけ心配させたこの攻撃は、ゴール前6.5km地点に待ち構えた第2中間ポイントで、一旦落ち着きを取り戻した。しかし総合首位まで2分28秒差、2位まで36秒差のプリトの頭にあったのは、ボーナスタイムなのだろうか?それとも緑色のジャージを守るためのポイント収集(もしくはポイント潰し)だったのか。
ロドリゲスは1年前に最終日マドリードの、まさにフィニッシュライン上で、ポイント賞首位から転落した苦い経験を持つ。もちろん今年だってマイヨ・ロホに続いて、マイヨ・プントスを失いたくないはずだ。最終的にはチームメートに先頭通過の使命を託し、ライバルたちのポイント収集のチャンスをきっちりと封じ込めた。ちなみにポイント賞2位バルベルデや3位コンタドールはもちろん、数字の上ではデゲンコルブをいまだ排除することはできない。ゴール後には両者のポイント差は58pt→46ptへと縮んだ。たとえアルゴス・シマノのコーチ陣が「もはやジャージは狙っていない。そもそも、現実的にはもう無理だよね。区間勝利だけに集中していく」と語ってはいても、残り3ステージで逆転の可能性は残っている。
カチューシャの後を引き継いで、隊列を組んだのはスカイ プロサイクリングだった。クリス・フルームの表彰台の夢はすでに砕け散っていたが、ベン・スウィフトの区間勝利にチームは望みを切り替えた。ロンドン五輪でマーク・カヴェンディッシュを1日中牽引し続けたイアン・スタナードやフルームが、強烈なリズムを刻んだ。ゴール前600mの最終カーブに先頭で突っ込んで行ったのも、やはりスカイだった。そして24歳のスウィフトが、ロングスプリントを切った。
過去4度の集団スプリントなら、ここでデゲンコルブがすぐに敵の後輪へと飛びついたものだ。しかしこの日、23歳のビッグスプリンターは控え目でいることを強制された。ライバルスプリンターに邪魔されたせいで、思い通りに動けなかった。代わりにレディオシャックのベテランが、絶好のポジションに入り込んだ。
「今日のデゲンコルブはどこにいたの?彼を見なかったなぁ。でも、スプリントとは毎回違うもの。確かにここまでは、デゲンコルブがスプリントを圧倒してきた。でも彼の4勝のうちのいくつかは、他のスプリンターのミスに乗じて勝ったものでもあるんだよ」(ダニエーレ・ベンナーティ)
約20日後に32歳の誕生日を迎えるベンナーティは、「ひどく長いスプリント」の果てに、ライン直前でスウィフトを追い越すことに成功した。センチメートル単位の勝利はまた、2007年ブエルタでポイント賞を手にした「元」ビッグスプリンターにとって、1年ぶりのグランツール区間優勝だった。
「この勝利はワウテルに捧げる。彼の勝ったこの町で勝てるなんて、ものすごく感動的だね。ボクらは友達であり、チームメートでもあった。たくさんの時を共にしてきた。今日のレースでは、彼がボクに力と勇気をくれた」(ダニエーレ・ベンナーティ)
2011年ジロ最終日にマリア・ローザで走って以来――剥奪されていないジャージとなると、2009年ツールの最終日以来だが――、久しぶりにグランツールリーダージャージで走ったコンタドールは、笑顔で1日を終えた。
「このジャージが嬉しいし、誇らしく思う。昨日のステージよりずっと簡単だったね。何の問題もなくゴールを迎えることができた。ロドリゲスやバルベルデと走りながら話をする機会だってあったくらいだよ。昨日の出来事についても思いをめぐらせた。レースをひっくり返すのがどれほど辛かったか……ってね」(アルベルト・コンタドール)
総合争いに変化はなかった。ハイスピードで走り切ったプロトンのおかげで、まだ日の高いうちにステージは幕を閉じた。
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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