人気ランキング
J SPORTS IDを登録すれば、
すべての記事が読み放題
コラム&ブログ一覧
ナポリ湾に浮かぶ小さなイスキア島では、テクニカルなコースが選手たちを待ち受けていた。午前中に下見を行った全23チームの中からは、「ノーマルバイクで走ったほうがいいだろうか?」という声も上がったほど。結局どのチームもタイムトライアル用自転車を選ぶことになるのだが、優勝チームの時速が47.275kmだったことからも、かなりの難コースだったことが理解できる。たとえば昨年、ガーミン・シャープが制した第4ステージのチームTTは、時速53.741kmだった。
第1ステージのチーム順位に従って、トップバッターのコロンビアから最終走行のオメガファルマ・クイックステップまで、23チームが3分間隔でコースへと走り出した。例えばブラドレー・ウィギンス擁するスカイプロサイクリングは8番スタート。ヴィンチェンツォ・ニーバリの所属するアスタナプロチームは17番スタート。そしてディフェンディングチャンピオンのライダー・ヘシュダルを支えるガーミン・シャープは20番目スタート。この出走順が、結果をも大きく左右することになる。最終盤のチームが走り出す頃、島を吹きぬける風が、レースの流れを大きく変えた。
ヒルクライマー集団のコロンビアの出した23分01秒が、本日最初の基準タイムとなった。ただし実際には、スカイが叩き出した圧倒的なトップタイム22分05秒が、以降全てのチームにとっての指針となる。
スカイを除いた全22チームの中でトップに立ったのは、モヴィスター チームだった。16番スタートのスペインチームは、中間計測ポイントを、スカイからわずか9秒遅れで通過。「マリア・ローザも行けるかもしれない」(ジョヴァンニ・ヴィスコンティ)と、走行中の選手たちは希望に胸を膨らませた。ただし2011年ブエルタ覇者のフアンホセ・コーボが、下見中のヒザ負傷が原因で遅れ始め、隊列も思うように加速できず。結局フィニッシュラインでも、スカイからの遅れは9秒(22分14秒)のままだった。
続く17番スタートのアスタナは、ニーバリの「ヒルクライマーチームのパフォーマンスとしては悪くなかったね。かなり喜んで良いと思うよ」という言葉通り、22分19秒でラインを越えた。なにしろ優勝争いのライバルが最も得意とする種目で、わずか14秒しか失わなかったのだ。チームメートたちの好調さも確認することができ、シチリアっ子にとっては非常に前向きな結果となった。
痛いミスを犯したのが、14番スタートのエウスカルテル・エウスカディ。最終カーブで選手の1人があわや落車という大失態。タイム計測に必要な5人目の選手がフィニッシュラインへ到着した頃には、スカイから1分01秒(23分06秒)も失っていた。続く15番目のランプレ・メリダも、一時は4人ゴールの危機に陥ったが、なんとか5人揃えて22秒差(22分27秒)に食い止めた。サムエル・サンチェスは2日目にして総合争いからほぼ脱落し、一方の2011年ジロ覇者ミケーレ・スカルポーニはこの先の戦いに望みをつなげる。
なにより20番〜22番スタートを切った「TTスペシャリスト」3チームは、いずれも信じがたい結果に終わった。昨年のチームタイムトライアル覇者ガーミン・シャープは、25秒遅れの22分30秒。今季ツアー・オブ・カタールでチームTTを制したBMCレーシングチームは、37秒遅れの22分42秒。昨年はティレーノ〜アドリアティコとエネコ・ツアーのいずれでもチームTTを勝ち取っているオリカ・グリーンエッジは、28秒遅れの22分33秒。すなわち、1年前はチームTTのリードを元手にジロを制したヘシェダルは、ウィギンスに早くも25秒、ニーバリに11秒もの遅れを喫したことになる。2011年ツール勝者のエヴァンスも、37秒差という痛いハンディキャップを喰らった。
マリア・ローザ姿のマーク・カヴェンディッシュを乗せて、華やかに最終出走を飾ったオメガファルマ・クイックステップも、奮闘むなしく48秒遅れに散った。確かにチーム自体は、UCIチームタイムトライアル世界チャンピオンだ。しかし2012年秋にオランダのアップダウンTTコースを制したメンバーは、1人もイタリアに来ていない。カヴェンディッシュはたった1日限りで、「キング・オブ・スプリンター」の証である赤いジャージに着替えた。前日に落車しながらも、カヴのために必死に働いたジェローム・ピノーは、「もちろん、風向きが変わったせいなんだ。でも、それだけじゃ、ここまでひどいタイムになるわけはないのにね」と肩を落とした。
そしてピンク色の栄光を身にまとったのはウィギンス……ではなく、グランツール初体験の23歳、サルヴァトーレ・プッチォだった!ニーバリと同じシチリア出身の若者は、2日間の区間順位の総計(33位+4位)がチームの他の誰よりも小さかったのである。
「表彰式のほんの2分前くらいに、自分がマリア・ローザを着るんだ、って理解した。正直に言えば、チームの計画によればダリオ・カタルドにリーダージャージが行く予定で、ボクは新人賞ジャージが獲れたらいいなと思っていたんだ。でも、ボクにマリア・ローザが来ると聞かされて、衝撃を受けたよ。今日はなかなか寝付けないだろうな」
チーム全員でシャンパンファイトを思う存分楽しんだ後、1人でピンク色のジャージをまとって再び綺麗な泡を撒き散らしたプッチォは、この先ももちろん、現在総合2位につける英国人のために働く。戦いの主導権はウィギンスの手の中に渡った。ニーバリが14秒差、スカルポーニ22秒差、ヘシェダル25秒差と続く。
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
あわせて読みたい
J SPORTS IDを登録すれば、
すべての記事が読み放題
ジャンル一覧
人気ランキング(オンデマンド番組)
-
Cycle*2024 UCI世界選手権大会 男子エリート ロードレース
9月29日 午後5:25〜
-
Cycle* J:COM presents 2024 ツール・ド・フランスさいたまクリテリウム
11月2日 午後2:30〜
-
10月12日 午後9:00〜
-
11月11日 午後7:00〜
-
【先行】Cycle*2024 宇都宮ジャパンカップ サイクルロードレース
10月20日 午前8:55〜
-
10月10日 午後9:15〜
-
Cycle* UCIシクロクロス ワールドカップ 2024/25 第1戦 アントウェルペン(ベルギー)
11月24日 午後11:00〜
-
【限定】Cycle* ツール・ド・フランス2025 ルートプレゼンテーション
10月29日 午後6:55〜
J SPORTSで
サイクル ロードレースを応援しよう!