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異常寒波はいつまでもどこまでも追いかけてくる。2013年ジロの第19ステージは、完全キャンセルに追い込まれた。
前夜、雪深いガヴィアとステルヴィオを迂回し、代わりにトナーレとカストリンを通過するコースが発表されていた。ただし一夜明けてみたら、両峠の頂どころか、ステージ全体に雪が降り続いていた。標高1800mを越えるトナーレ峠の山頂は、体感温度マイナス10度近くまで下がったという。現地時間午前9時半頃に、開催委員会は英断を下した。選手はもちろん、ジロに帯同するすべての人々の安全を守るためには、正しい判断だった。
しかも最終日前夜の第20ステージに関しても、やはり降雪のせいで、コース変更を余儀なくされた。
本来ならば全長203kmのコースに難関峠が5つ待ち構える、2013年ジロ最後の超難関ステージとなるはずだった。しかしスタートから60kmほどは予定通りに「谷間」を走ったあと、立て続けに3つの峠が完全カットされる(コスタルンガ、サン・ペッレグリーノ、ジャウ)。特にサン・ペッレグリーノからの長い下りを、開催委員会は危惧したのかもしれない。最後の2峠だけは、かろうじて残された。そして本日中止されたステルヴィオ(標高2758m)の代わりに、「カニバル」エディ・メルクスに捧げる伝説峠トレ・チーメ・ディ・ラヴァレード(標高2304m)が、イタリアの誇る「カンピオニッシモ」を記念するチーマ・コッピを引き受ける。ステージ距離も210kmに延長された。
こうして強制的に休養日を取るはめになったプロトンだが、中には戦術を練り直す必要に迫られた選手も多いだろう。マリア・ローザのヴィンチェンツォ・ニーバリは、幸いにも、前夜に念願の区間勝利を手にした。あとは4分02秒のタイム差を、しっかり1日守り切るだけで十分となった。一方で総合2位カデル・エヴァンスと3位リゴベルト・ウランの10秒差の戦いは、最後の2峠でいっぺんにカタをつける必要が出てきた。総合4位ミケーレ・スカルポーニだって、表彰台までの1分02秒差をどうにかして縮めたいはずなのだ。もっと熾烈なのは、ラファエル・マイカとカルロスアルベルト・べタンクールの新人賞を巡る2秒差の戦いだろうか……。
ステファノ・ピラッジィは、もはや逃げに乗る必要さえなくなった。本来ならば第19・20ステージにはチーマ・コッピ1つ(最大21pt)、1級峠4つ(最大15pt)、2級峠3つ(最大9pt)が待ち受けていたため、最大108ptを守りに行かなければならないはずだった。ところが19ステージ中止、第20ステージはチーマ・コッピ+2級で、ライバルに取られるかもしれない最大ポイントはわずか30pt。で、つまり……山岳賞2位につけているジョヴァンニ・ヴィスコンティとのポイント差は、すでに34pt開いていることから、完走=ブレシアでの青ジャージが決定してしまった!
またマーク・カヴェンディッシュは、完走へのやる気をいっそう燃やしているに違いない。現在ポイント賞争いではカデル・エヴァンスが4pt差、ニーバリが10pt差で追いかけてきている。しかし、たとえ第20ステージでエヴァンスが中間2回とゴールポイントを全てさらい取ったとしても、平坦ステージの第21ステージで、カヴには同じだけ奪い返す希望が残っている。なにより山が2つしかなくなったおかげで、チームメートが逃げ集団に滑り込んで中間ポイント潰し、なんていう作戦だって取れるかもしれない。
もちろん気になるのは、最終頂上フィニッシュが本当に実現できるのかどうか。他のあらゆる峠と同じように、雪は降り続いている。それにしても2013年の西ヨーロッパは、相変わらず春が来ないままだ。アルプスの東端からピレネーの西端まで、現在、標高700m以上の高地には雪が降っている。観測史上3番目に降水量の多い年であり、過去25年では最も気温の低い年と言われている。ちなみに北極から吹き降ろす冷たい風は、6月上旬まで意地悪をし続ける予定。気になる7月のツール・ド・フランスは、さすがに雪に邪魔されることはないはずだけれど……、低温と雷雨に悩まされる可能性があるとのこと。
そしてこの日、ジロにもう1つ悪い知らせが舞い込んだ。4月29日に行われたレース外コントロールで、ダニーロ・ディルーカの尿検体から、禁止薬物のEPOが検出された。2007年ジロの総合覇者は、ドーピング関与により、すでに過去2度の出場停止処分を受けている。2009年のジロでも、禁止薬物CERAの使用が発覚していた。4月末に元チャンピオンを受け入れたばかりのチーム、ヴィーニファンティーニ・セッレイタリアは、B検体の結果を待たずにディルーカを即日解雇している。
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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