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サイクル ロードレース コラム 2013年7月10日

ツール・ド・フランス2013 第10ステージ レースレポート

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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激しい戦いが繰り広げられたピレネーを抜け出して、プロトンは北の海岸で、静かな休養日を過ごした。フランスのスポーツファン&メディアの視線が、テニス・ウインブルドン選手権女子シングルスを制したフランス人マリオン・バルトリと、新加入選手のゴージャスなお披露目発表会をしたサッカークラブのASモナコに注がれたせいもあったかもしれない。

コルシカから走り出した198選手は、約10日間のレースで182人にまで減っていた。「このままじゃパリに着くまでに100人以下に減っちゃうよ!」なんて冗談が各所から飛び出したほど、100回記念大会1週目の起伏ステージでは、ハイスピードな戦いが続けられた。幸いにも、2週目は比較的平坦な道が続く。数日間グルペットであえいだ選手たちも生気を取り戻し、元気良く、スプリントステージへと飛び出していった。

ジェローム・クザン、ルイス・マテマルドネス、リエーベ・ウェストラ、ジュリアン・シモン、フアンホセ・オロスが、スタート直後に逃げ出した。夏のお日様は相変わらずツール一行についてきたが、爽やかな海風が暑さを和らげてくれた。後方プロトンは慣例にのっとって、オメガファルマ・クイックステップやチーム アルゴス・シマノ、ロット・ベリソルといったスプリンターチームが制御を引き受けた。2日前にはステージ序盤でリーダーを孤立させるという大失態を犯したスカイ プロサイクリングの面々も、この日はクリス・フルームの側に集結し、マイヨ・ジョーヌのために陰日向なく働いた。

文字通り何事もなく、自転車熱狂の土地ブルターニュで、タイム差は長らく3分半から4分程度で推移してきた。1953・54・55年のツール総合覇者ルイゾン・ボベの生誕地サン・メアン・ル・グランで静かなお食事タイムを取った選手たちは、その後、中間ポイントへ向けて隊列作りを始める。当然タイム差はぐんぐんと縮まり、後方集団内での中間スプリントは、極めていつも通りにアンドレ・グライペルが勝ち取った(第1・2・5・6・8ステージも、ドイツのゴリラは中間を制している!)。

差は一気に2分15秒差にまで小さくなったのだが、しかし、ゴールまではまだまだ遠い。69.5kmも残っている。あまりに早い吸収も好ましくない……と、スプリンター集団は逸(はや)る気持ちを制御して、またしても長らく2分半程度で前の5人を泳がしておいた。

静かな時間も、いずれは終わりを告げるもの。英仏海峡に流れ込むランス川が、大きく河口を広げ始めた頃だった。ラスト30km、海からの風が激しく吹き込んで来ると、途端にチーム サクソ・ティンコフが集団前方に駆け上がってきた。あれは分断の試み?それとも分断されぬための試みだったのか?

「でも、心配されていたほどには風は強くなかったよ。だから、横風地点でサクソ・ティンコフが上がったくらいで、他のチームはそれほど大きく仕掛けてこなかったね。とにかく分断や落車を避けるために、ボクらも集団前方に位置取りした。スプリントゴールの日は、そもそも、いつだって最終盤の集団はナーバスになるものだから。幸いにもボクらは、何の問題もなく切り抜けられた」(フルーム)

結局のところ、マイヨ・ジョーヌを巻き込んでグングン上がっていったスピードは、前方集団を捕らえるのに役立っただけだったようだ。最後まで果敢な粘りを見せた逃げ選手たちも、ゴールまで5.5kmを残して、プロトンの波に飲み込まれていった。すぐさまスプリンターチームたちは、激しい覇権争いに突入した。ラスト3kmで、ロットの巨人兵集団が前線を占拠した。……しかし肝心のエースのグライペルは失速し、マルセル・キッテルにフィニッシュライン間際で追い抜かれることになる!

「うん、確かにボクは中間ポイントを取りに行かなかったから、それだけエネルギーが残っていたのかもしれない」(キッテル)

第1ステージに続く、今大会2勝目だった。ただし初日は、大集団落車のせいで、マーク・カヴェンディッシュやグライペル、ペーター・サガン等々の強豪スプリンターの「いない」スプリントだった。「正気に言えば、本当に争って勝ったとは言えないんだけど……」と、マイヨ・ジョーヌを羽織ながらも、25歳のドイツ人は複雑な表情を見せていたものだ。しかし、今日キッテルは、ようやく心から笑うことが出来た。

「今日は誰も落車に巻き込まれたスプリンターはいなかったから、全員がそろって、本気のバトルを繰り広げた。そして、今日は、ボクが最速の男だった。おかげで大いなる自信になったし、満足度も高いんだ」(キッテル)

ただ唯一の心残りが、チームメートのトム・フェーレルスの落車だった。列車役の仕事を終えて下がっていく際に、カヴェンディッシュと接触し、激しく地面に転げ落ちたのだ。幸いにもカヴェンディッシュの方は落車を免れたが、おかげで今大会2勝目のチャンスを逃してしまった(区間3位)。2013年ツールもちょうど半ばに差し掛かり、残るピュアスプリンター向けステージは3つしか残っていない。

「フェーレルスとは不運にもヒジが触れ合ったが、スピードの差があったせいで、彼の方が落車してしまった。どちらのミスでもなかったと思う。ただボクは、彼が無事であることを祈るだけ。そしてキッテルについては……いい走りだったね。彼が勝った時に、『僕らが大敗した』なんてことばかり強調するのは、彼への配慮に欠けると思う。キッテルは素晴らしい選手だし、チームもいい走りをしていたよ。今日勝てたら、確かにステキだったけどね」(カヴェンディッシュ)

我らが新城幸也は、ゴール前2kmほどまでは集団前方の好位置につけていたが、直後にディレーラーのトラブルに見舞われスプリントに加わることができなかった。翌第11ステージ・個人タイムトライアルのスタート地では、日本からやってくるさいたまクリテリウムbyツール・ド・フランスの代表団と、記念撮影も予定されている!

……その気になるタイムトライアル33kmは、総合争いの選手にとっては、非常に大切なステージだ。マイヨ・ジョーヌのフルームも、「明日はベストを尽くす」と誓う。

「フラットなタイムトライアルだから、他の総合狙いの選手に比べて、ボクはかなり有利だと思う。何分差をつけたい、と宣言するつもりはない。とにかく、自分のベストの走りをするだけだ」(フルーム)

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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