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サイクル ロードレース コラム 2013年8月25日

ブエルタ・ア・エスパーニャ2013 第1ステージ レースレポート

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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総合優勝大本命の一角に上げられるヴィンチェンツォ・ニーバリが、大会1日目にして早くも、ライバルたちからリードを奪った。アスタナ プロチームの仲間たちと共に、29分59秒というトップタイムを叩き出して。ただし今大会初めてのリーダージャージを身にまとう権利は、チームメートのヤネス・ブライコヴィッチに譲り渡した。

大西洋の波が、出走台の足元から透けて見えた。粋な演出のために、選手たちは船でスタートラインへと送り届けられた。海に突き出した長い桟橋で、彼らは自転車に乗り換えると、大急ぎで27.4kmのチームタイムトライアルへと漕ぎ出して行った。チーム創設以来2度目のグランツール出場権を勝ち取ったチーム ネットアップ・エンデューラが、2013年ブエルタ・ア・エスパーニャに出場する全22チームの中で真っ先に走り出して、30分34秒を記録した。最終的には7位に入る好タイムが、この日の基準となった。

2番出走のオリカ・グリーンエッジは、フィニッシュラインを越えた瞬間に、早くも、ツール・ド・フランスとは同じ喜びを味わえないことを悟った(30分44秒)。一方で、7月の南仏ではほんの0.76秒差で涙を飲んだオメガファルマ・クイックステップは、スペインの西の果てで、この日も暫定首位に立った(30分15秒)。

約1ヵ月後にタイトル防衛戦を控えるタイムトライアル世界チャンピオンチームは、しかし、「スタートから猛スピードで飛ばした。ただし、このブエルタに乗り込んだチームは、厳密な意味ではタイムトライアル向きではなかったんだ」(トニー・マルティン)。なにより1年前に個人でも世界タイムトライアル王座に輝いたマルティンは、改めて、強大なライバルの存在を思い知ることになる。

それがファビアン・カンチェッラーラ率いる、レディオシャック・レオパードだ。2つの中間計測地点では、オメガファルマからいずれも10秒以上の遅れを喫していたにも関わらず、海沿いのフィニッシュラインでは6秒のリードを奪っていた(30分09秒)!世界TT4勝&五輪金メダルを誇る「スパルタクス」は、2012年世界選は不在だった。今秋はどうやらフィレンツェでの闘いに向けて、着々と準備を整えつつあるようだ。

ただし、起伏の激しいガリシアの曲がりくねった道は、必ずしもTTスペシャリストに優しくはなかった。例えばかつて数々のチームTTを制してきたガーミン・シャープは、下りで2選手が落車し、大きくタイムを失った。TT苦手のチームにとっては、むしろ残酷だった。コフィディス・ソリュシオンクレディなどは、時に一列で走ることさえできず、バラバラに分解され、最下位に沈んだ。

そんな中で、持てる力を見事に出し切ったのが、山岳巧者やオールラウンダーを揃えてきたアスタナだった。22チーム中唯一の29分台を記録して、最終出走チームが、全てを上回った。

「下見に出かけた時に、ボクら向けのコースだと気が付いたんだ。だから好成績が出せるとは確信していたけど、勝てるとは、まるで思っていなかったよ。だってボクらより強そうなチームがいくつもあったから。区間を制して、マイヨ・ロホを手に入れられたなんて、すごく驚いているよ」(ブライコヴィッチ)。

今から7年前、23歳の若さでブエルタのリーダージャージ(当時は金色、マイヨ・オロだった)を2日間着用したスロヴェニア人が、29歳で再び総合首位の座に立った。またアスタナにとっては、2009年ツール・ド・フランスの第4ステージ以来となる、チーム創設以来2度目のチームTT勝利。ヨハン・ブルイニールが率い、ランス・アームストロングやアルベルト・コンタドールが所属していた時代だった。

チームリーダーのニーバリは、静かに2位でフィニッシュラインを通過した。この春のジロを圧倒的な力でねじ伏せた「メッシーナのサメ」は、7月末にレース復帰したばかりで、実のところブエルタ前哨戦では目立つような走りが見せられずにいた。開幕前の本人は「1日1日、調子を上げて行くだけ」と繰りかえし、メディアからは「ニーバリはブエルタ中に本調子に戻れるのか?」という小さな疑問の声も聞こえていたけれど……。

「調子はすごくいいね。ただブライコヴィッチはここのところ不運続きだったから(ジロを胃炎で欠場、ツールは落車で途中リタイア)、レッド・ジャージを着せてあげるべきだと思った」(ニーバリ)。

いずれにせよ、3週間後のマイヨ・ロホ獲りに向けて、ニーバリは大きなアドバンテージを手に入れたことになる。スカイプロサイクリングのセルジオルイス・エナオモントーヤ&リゴベルト・ウランから22秒、モヴィスターチームのアレハンドロ・バルベルデから29秒、チームサクソ・ティンコフのロマン・クロイツィゲル他から32秒、ベルキンプロサイクリングチームのバウク・モレッマ&ローレンス・テンダムから49秒、ランプレ・メリダのミケーレ・スカルポーニから56秒、そしてカチューシャチームのホアキン・ロドリゲスからは59秒。またチーム解散前最後のグランツールを戦うエウスカルテル・エウスカディのサムエル・サンチェスを1分14秒、キャノンデールプロサイクリングのイヴァン・バッソを1分26秒も突き放した。

もちろんブエルタはまだ始まったばかり。どのみち初日で作り上げられたヒエラルキーやタイム差は、2日目の山頂フィニッシュで、早くもところどころ入れ替わるに違いないのだ。

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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