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サイクル ロードレース コラム 2014年5月11日

ジロ・デ・イタリア2014 第1ステージ レースレポート

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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1日のうちに四季がある、と言われるほど空模様の変りやすい北アイルランドで、2014年ジロ・デ・イタリアが幕を明けた。まさに、レース半ばで降り出した雨が、秒単位の戦いに大きな影響を及ぼした。乾いた路面は、歓喜を生んだ。濡れた路面は、多くの選手からタイムや望みを奪った。

チームタイムトライアルの出走順は、前夜のチーム監督会議における「くじ引き」で決められた。全22チーム中、2番目を引き当てたオリカ・グリーンエッジは、本当に幸いだった。9人全員でスタートを切った時点では、いまだ道路は完全に乾いていたからだ。7.9km地点に設定された第1中間計測ポイントを、9分ちょうどで走りすぎた時にも、なんとか灰色雲は持ちこたえていた。それから、しばらくして、雨粒が落ちてきた。つまり全長21.7kmのコースの、半分くらいは、雨の影響を受けずに済んだ。ゴールタイムは24分42秒、走行時速は52.712km。2番目出走として、当然のように、暫定首位に躍り出た。

その後20チームが必死の全力疾走を試みるも、記録が塗り替えられることはなかった。トラックの団体追抜世界チャンピオン経験者を4人連れてきたスペシャリスト集団は、なにより昨夏のツール・ド・フランスでチームタイムトライアルを勝ち取ったオージーチームは、1時間半近く待ち続けた果てに、嬉しいステージ優勝をつかみとった。

大会初のマリア・ローザは、カナダ人スヴェイン・タフトの手に渡った。本日5月9日、37歳の誕生日当日に、チームメートたちからの粋なプレゼントとして、チーム内での首位フィニッシュが許されたのだ!「自分のキャリアにおいて、こんな瞬間が迎えられるなんて……夢にさえ見たことなかった」と、ベテランは笑顔で語る。

さて、カナダ個人TTチャンピオン8回、2008年世界選手権個人TT銀メダリストのタフトの分析によれば、このベルファスト市街地コースは、「風向きがころころと変わり、路面は濡れていて、極めて難しいコース」だった。

しかも、5番目のチーム……カチューシャが走る頃には、雨脚はすっかり激しくなっていた。ただでさえタイムトライアルが大の苦手なホアキン・ロドリゲスは、チーム隊列の尻尾にしがみ付いて、じっと我慢するしかなかった。結果は全22チーム中19位の26分15秒(1分33秒遅れ)。続く6番目のモビスターは、ナイロ・キンタナ自らが牽引する積極性を見せたが、非情な雨の中で25分37秒(55秒遅れ)という平凡なタイムに終わった。なにより2人にとって不運だったのは、彼らがゴールして30分もしないうちに、雨がすっかり上がったこと。1時間もすると、路面もほぼ乾いてしまった。

もちろん、2人の不運は、幾人かのライバルにとっての幸運だった。そんな好条件をきっちりと生かしたのが、そもそもチームタイムトライアルをかなりの得意分野にするBMCレーシングとオメガファルマ・クイックステップだった。19番スタートのスイスチームは24分49秒(7秒遅れ)で、20番スタートの世界選チームTT2連覇中のベルギーチームは24分47(5秒遅れ)秒と、いずれもかなりの好記録をマーク。おかげでカデル・エヴァンスとリゴベルト・ウランという、それぞれのチームリーダーを好位置につけることに成功した。

3週間後のマリア・ローザを巡る争いは、初日から大きな差がついた。有力候補の中でトップに立ったのが昨大会総合2位のウランで、総合3位エヴァンスが2秒差で次点につける。3番スタートの利を生かしたティンコフ・サクソのニコラ・ロッシュは18秒差。昨大会覇者ヴィンチェンツォ・ニーバリの代わりに1番ゼッケンをつけるアスタナのミケーレ・スカルポーニは、ウランから33秒遅れで初日を終えた。さらにイヴァン・バッソは48秒、キンタナは50秒、ドメニコ・ポッツォヴィーヴォは53秒、ロドリゲスに至っては1分09秒もの遅れを、たったの1日で喫してしまった。

たったの15分で、ダニエル・マーティンは、全ての希望を失った。ガーミン・シャープは17番出走で、つまり雨も上がっていたけれど、道路はいまだ濡れている部分も多かった。そんな路面を8人で全力疾走中に、前から5番目の選手が車輪を滑らせた。まるでチームタイムトライアルの見本のような、選手同士が隙間をあけずに綺麗な一列で走っていたものだから、後ろの3人も有無を言わせず巻き込まれた。総合争いでも大いに期待され、なにより第3ステージの地元アイルランドゴールを楽しみにしていたマーティンも、北アイルランドのアスファルトに叩きつけられた。ほんの10日前のリエージュ〜バストーニュ〜リエージュでは、ゴール前300mで滑ってがっかり肩を落としたけれど……、今回は鎖骨骨折による即時リタイアを余儀なくされた。

ちなみに、翌日からの平坦3日間で、スプリント勝利→マリア・ローザという図式をほんのり夢見ていたに違いない若きスプリンターたちは、早くも目標を区間勝利1本に絞らざるを得なくなった。マルセル・キッテルは56秒差でフィニッシュラインを越え、ナセル・ブアニは1分18秒も遅れを喫した。各ステージにはボーナスタイムが用意されているけれど(中間3、2、1秒、ゴール10、6、4秒)、これほどのタイム差を、スプリントだけで埋めるのは至難の業だろう。むしろ、総合首位からわずか5秒遅れのアレッサンドロ・ペタッキのほうが……37歳タフトからジャージを奪い取り、40歳のマリア・ローザを実現させる可能性を残している!

また、2009年ツール・ド・フランス以来、約5年ぶりにグランツールで競演を果たす新城幸也と別府史之は、それぞれのチームメートと同時にフィニッシュ。これからの3週間、日本の両選手がチームのために大いに働き、そして自分自身のために積極的に飛び出してくれることを、大いに期待しよう。

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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