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サイクル ロードレース コラム 2014年5月12日

ジロ・デ・イタリア2014 第2ステージ レースレポート

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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一発目のアタックで、あっさりと2014年ジロ最初のエスケープは許された。マーティン・チャリンギ、ジェフリーホアン・ロメロ、サンダー・アルメ、アンドレーア・フェーディの4選手が、北アイルランドの大自然を真っ先に目にする権利を与えられた。山肌には緑の草がいっぱいに広がり、長い海岸線には静かな波が押し寄せる。延々と降り続いた雨のせいで、必ずしも、プロトンに景色を楽しんでいる余裕はなかったかもしれないけれど。

雨具を着込み、手袋やレッグカバーで体を保護をした選手たちは、ステージ終盤まで無理には飛ばそうとはしなかった。序盤に濡れた路面で、小さな集団落車が発生した。そもそも前夜のチームタイムトライアルでは、ガーミン・シャープ所属のダニエル・マーティンとコルド・フェルナンデスが落車で鎖骨を折り、早くも帰宅を余儀なくされていた。余計なリスクは、誰も負いたくなかったに違いない。スタートから4時間ほどは控え目なリズムで、一行は淡々とペダルをまわした。大部分の時間帯は、マリア・ローザ擁するオリカ・グリーンエッジが、プロトン前方で集団制御に努めた。

その隙に逃げ集団は6分半ほどのリードを奪った。4人の大きな目標の1つは、ズバリ、今大会最初の山岳ジャージを手に入れること。1つ目の4級峠では、小さな駆け引きを繰り広げた後に、チャリンギが首位通過で貴重な3ポイントを手に入れた。2つ目の4級峠に差し掛かる頃には、メインプロトンはほんの背後に迫っていたけれど……。やはりチャリンギが加速を成功させ、さらに3ポイント追加。37歳のスヴェイン・タフトが生まれて初めてマリア・ローザを身にまとった翌日に、36歳のチャリンギが、生まれて初めてのグランツール賞ジャージを確実なものにした。

しかもチャリンギは、青いジャージだけで満足してしまわなかった。すでに200km以上も逃げていたにも関わらず、ラスト9kmから、突如として単独でフィニッシュラインを目指し始めた。

ただし、グランツール最初の平坦ステージで、スプリンターから勝利を横取りすることなど不可能なのだ。背後からは、猛烈な勢いで集団が迫ってきた。雨もすっかり上がっていた。すでに残り40kmを切った頃から、「現役最速スプリンター」マルセル・キッテル擁するチーム ジャイアント・シマノが、本格的な追走作業を開始していた。残り12km地点からは、キャノンデールがエリア・ヴィヴィアーニのために、高速隊列を組み上げた。「ボクサー」ナセル・ブアニを引っ張って、FDJ ポワン エフエールも前方へ出張った。ラスト4kmに入ると、別府史之が、トレックファクトリーレーシング列車を全速力で引っ張った。イタリアンスプリンター、ジャコモ・ニッツォーロを好位置に連れて行くためだった。

チャリンギの雄姿は、ラスト3.5kmで、集団の波にかき消された。次にファンたちの前に姿を現したのは、山岳賞の表彰式だった。ジロ独特のお楽しみ、「フーガ賞=逃げ賞」もついてきた。同賞は10人以下の集団で5km以上逃げた場合に適応され、各ステージで最も長く逃げた選手にご褒美が与えられる。3週間の終わりには、逃げた総距離が一番長い選手が、フーガ大賞に輝くのである!気になるチャリンギの本日の逃げ距離は、213km也。

ラスト1kmのアーチは、ジャイアント・シマノ列車が先頭でくぐりぬけた。ゴール前300mの最終カーブは、オリカ・グリーンエッジがトップポジションで突っ込んだ。真っ先にスプリントを始めたのは、FDJのブアニだった。「ちょっとタイミングが早すぎた。でも目の前を走っていたオリカの選手が、急に脇へと退いたから、ボクには加速するしか選択肢がなかったんだ……」と、肩をすくめたフレンチスプリンターは、キッテルにするりと脇を抜かれた。列車役のベルト・デバッケルに言わせると、「ラスト1kmからの喧騒で、マルセルは背後から滑り落ちてしまった」そうだけれど……。

「確かに少し孤立してしまったけど、それでもラスト数百メートルでなんとか追いついた。上手くやれて本当に嬉しいよ。ボクにとってはもちろん、チームにとっても、素晴らしいジロのスタートを切ることができた」(キッテル)

初めて出場したジロ・デ・イタリアの、初めてのスプリント機会で、キッテルは見事に1勝目をさらい取った。2011年ブエルタ区間1勝、2013年ツール区間4勝に続いて、これで3大グランツール全てで区間勝利を手に入れたことになる。

「本当に誇らしいね。ボクの周りには常にチームメートがいて、そんな彼らがボクを全3大ツールでのステージ優勝へと導いてくれたこと、そのことがなにより誇らしい」(キッテル)

ポイント賞ジャージもキッテルのもとに舞い降りた。難関山岳ステージの多いジロで、スプリンターが守り続けるのが非常に難しい、キング・オブ・スプリンタージャージ……。ところが、スプリンターに朗報!

1年前、マーク・カヴェンディッシュがなんとかマリア・ロッサを最終日まで持ち帰った時は、全てのステージ勝者に25pt、中間ポイント首位通過者に8ptが与えられるシステムだった。しかし今年はポイント配分に大幅な変化が加えられた。例えば平坦、もしくは比較的平坦なステージ(2、3、4、7、10、13、17、21)では、ステージ勝者に50pt、中間ポイント勝者に20ptが与えられる。一方で超級難関フィニッシュではそれぞれ15pt、8ptのみ。つまり……山頂フィニッシュの多いジロで、ピュアヒルクライマーがうっかり「キング・オブ・スプリンター」ジャージを勝ち取ってしまう危険性は大幅に減ったというわけ。2年前の、最終日わずか2日前にカヴがジャージを失ってしまったような、悲劇が繰り返されることはなさそうだ。トップスプリンターたちによる「自発的途中リタイア」も、おかげで食い止めることができるかもしれない。

マリア・ローザはタフトのもとから、チームメートのマイケル・マシューズの肩へと移譲された。ヒカリモノが大好きで「ブリン(キラキラ)」とあだ名される23歳は、おしゃれなばら色の服に着替えると、スパークリングワインのキラキラする泡を笑顔で撒き散らした。

「信じられないような気分だよ。どんなに素敵な気分か、上手く言い表せないよ。スヴェインからピンクジャージを引き継ぐことが出来て、すごく誇らしいし、なにより初めてのジロでリーダージャージを着ることができたなんて、とんでもない特権だよね」(マシューズ)

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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