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サイクル ロードレース コラム 2014年5月15日

ジロ・デ・イタリア2014 第5ステージ レースレポート

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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大会の祖国イタリアが、5日目にして、ついに喜びの日を迎えた。2014年ジロ最初の頂上フィニッシュを、ディエゴ・ウリッシがさらい取った。最終マリア・ローザを争う男たちの熾烈な攻防と、現時点でマリア・ローザを着ている男の執念を、すべて振り払うことに成功した。

200kmを越える長いステージの、スタート直後に11選手が飛び出した。なぜかしらスプリンターも3人紛れ込んだ。ベン・スウィフト、タイラー・ファラー、そしてポイント賞で2pt差の2位につけていたエリア・ヴィヴィアーニ!

「頂上フィニッシュだから、ボクが勝てる可能性はゼロだったし、ゴールに向けて体力温存しておく必要もなかった。だったら逃げに乗って、ポイント収集しようと考えた。ここまでチームメートの働きに応えられず申し訳なく思っていたし、なにより今大会の目標の1つが、ポイント賞ジャージだから」(ヴィヴィアーニ)

チームメートのペーター・サガンも、2012年ツールでは2度の山岳ステージで逃げを打ち、マイヨ・ヴェール用ポイント収集に勤しんだ。そんな成功例にならって、ヴィヴィアーニも70.7km地点の中間ポイントを確保。6ptを加えて、総計119ptで念願のジャージを手に入れた。ただ実のところ、先頭通過の8ptは、スウィフトに奪われた。英国人は23pt差の5位に甘んじているが、この先、ポイント賞争いの手強いライバルになるかもしれない。

一方で、第3ステージに続く2度目のエスケープに乗ったミゲール・ルビアーノは、きっと青いジャージを追い求めていたのだろう。3級山岳で7ptを積み重ね、首位マーティン・チャリンギに3pt差へ迫った(チャリンギ12pt、ルビアーノ計9pt)。けれど……、残る2回の収集チャンス(ゴール前12.2kmとゴール)を、生かすことは出来なかった。

なにしろ、マイケル・マシューズのピンクジャージを守るために、オリカ・グリーンエッジは極めて慎重に集団制御を行った。エスケープ集団に最大5分のリードを与えた後は、熱心にタイム差コントロールを続けた。さらにステージも終盤に入ると、総合有力候補を抱えたチームが、軒並み集団前方で隊列を組んだ。今大会最初の「直接対決」はすぐそこに迫っていた。前方の思惑に構っている暇などない。最後まで単独で粘り続けたビョルン・トゥーラウも、ゴール前13kmで、長い努力に終止符を打った。

ヴィッジャーノ登坂×2回に突入すると、カチューシャの隊列が主導権を奪い取った。初日チームタイムトライアルで、大量にタイムを失ったホアキン・ロドリゲスが、反撃開始を予定していた。狙うはずばり、ボーナスタイム。ゴールラインを上位通過した3選手には、10秒、6秒、4秒が与えられる。

通り雨で濡れたダウンヒルを利用して、ジャンルーカ・ブランビッラが飛び出しを図った。さらにはユーロップカーが2度に渡って攻撃を仕掛けた。しかしカチューシャは5人がかりで前を引き倒し、あらゆる反乱を喰い止めた。ラスト1kmのアーチの下で、ニコラス・ロッシュが飛び出しを試みると、またしてもロシアチームが先を阻んだ。むしろ、ここぞとばかりに、ダニエル・モレーノとロドリゲスがカウンターアタックを打った。

「もしかしたら、アタックするタイミングが、早すぎたのかもしれないな。でも、ひどい向かい風だったから、原因を探るのは難しいけど」(ロドリゲス)

おそらく、真相は、単純なこと。「この先もっと、ボクに向いた急勾配があるさ」と本人も言っているように、平均勾配6.2%、最大8%の山道は、プロトン一の激坂ハンターには緩すぎたのだ。なにしろ「上れるスプリンター」のマリア・ローザ自らが、プリトの作り出した穴を埋めに行けたほど。いや、アルデンヌクラシックの前哨戦ブラバンツ・ベイルで、フィリップ・ジルベールに次ぐ2位に入ったマシューズのことは、もしかしたら「パンチャー」と呼ぶべきなのかもしれないけれど。

「上りは問題なくついていけた。でも、ゴール前500mで、分断が出来てしまった。穴を作る原因となったのは、多分、キンタナだったと思うんだ。ボクはそのすぐ背後にいたから、自分自身でギャップを縮めに行かなきゃならなかった。とにかく、そこで力を使い果たしてしまった。もはやスプリントする力が残っていなかった。本当は、スプリントしたかったのに」(マシューズ)

この日のフィニッシュ地形に最も適した脚質を持っていたのは、ディエゴ・ウリッシだった。ゴール前17kmで発生した集団落車で分断にはまっても、ゴール前500mで前方に穴が空いても、チャンスは逃さなかった。マシューズの車輪に張りついて、それからスプリントを勝ち取った。

「ジロのロードブックを見たときに、このステージに印をつけた。こういったタイプのフィニッシュは大好き。今日の優勝予想では、ボクの名前も上がっていたしね」(ウリッシ)

幸いにも今回は、堂々と両手を天につき上げることができた。ジュニア世界選手権で2連覇し、20歳でプロ入りを果たした早熟なウリッシは、2011年、21歳でジロ区間初勝利を手にしている。しかし前回の勝ち星は、フィニッシュライン上で手に入れたわけではなかった。3年前、ゴールに一番に駆け込んだのはジョヴァンニ・ヴィスコンティであり、ヴィスコンティに違反行為があったため、怒鳴りあいと話し合いの末にウリッシに区間優勝の権利が転がりこんできたわけで……。

「昨日の夜、ベッドに入る前に、頭の中で勝ちを予行練習したよ。ヴィッジャーノはどんなふうに上ろうか、とか、優勝した後の表彰式はどうしようか、とかね。こうすることで、勝利を強く信じることができた。ボクにとっては、ものすごく有用なことだったんだ」(ウリッシ)

その背後では、総合争いの強豪たちが、揃って1秒遅れでステージを終えた。ただしカデル・エヴァンスが区間2位で6秒のボーナスタイムを獲得し、総合3位にジャンプアップ。マリア・ローザまでわずか15秒に接近した。総合順位全体が大きくシャッフルされ、多くの総合優勝候補が上位20位以内に居場所を上げた。残念ながらロドリゲスだけは、いまだ、1分47秒差の総合40位に沈んでいる。

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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