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ルートが変更され、ステージの距離は257kmに伸びた。ミラノ〜サンレモ298km、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ263km、ツール・デ・フランドル259km、パリ〜ルーベ257km……、といったモニュメントクラシックに次ぐ「超」ロングレースの、大部分は秩序正しく執り行われた。むしろのんびりムードさえ漂っていたほどだった。245.8km地点に、たどり着くまでは。
マルコ・バンディエーラ(アンドローニジョカットリ)、エドアルド・ザルディーニ(バルディアーニ・チエセエフェ)、ロドルフォ・トレス(コロンビア)、アンドレーア・フェーディ(ネーリソットーリ・イエローフルオ)の4人が、ステージ序盤に飛び出した。ワイルドカード招待枠で出場権を得た全4チームが、長いステージを、前方で活気付けた。タイム差は最大12分まで開いた。
距離の追加に伴って、補給地点も1ヵ所から2ヵ所へと増やされた。長距離・長時間の戦いに最後まで耐え抜くため、なにより……またしても降り出した雨で体力を消耗してしまわぬように、誰もがエネルギー補給に勤しんだ。2度目の食事をしっかり済ませると、いよいよプロトンは本格的な追走へ、さらにはステージの仕上げへと取り掛かった。好成績を狙うあらゆるチームが、縦ラインの隊列を作って、行軍を続けた。トレックファクトリーレーシングの別府史之はジュリアン・アレドンドのために牽引を行い、チーム ユーロップカーの新城幸也はピエール・ローランのために集団先頭で引き続けた。ゴール前12kmで無抵抗のエスケープ4人を吸収した。最終峠の登坂口は、3.5km先に迫っていた。
ゴール前11.2km。路面は濡れていた。ユーロップカーの選手が、滑り落ちた。巻き込まれたピエール・ローランとヤネス・ブライコヴィッチもまた、スケートリンクのようになった道の上を、思い切り滑った。座り込んでしまったブライコヴィッチに対して(左ヒジ骨折で即時棄権)、ローランはすぐに立ち上がった。しかも「ペダルとディレーラーに異常が見られたけれど」、いち早く自転車に飛び乗ると、走り始めた。その数十メートル先では……、とてつもない大規模な集団落車が発生していた。
ロータリーの入り口に、無数の選手が倒れていた。多くのマリア・ローザ候補も地面に投げ出された。リゴベルト・ウラン(左半身にいくつかの擦り傷と打ち身。特にヒジとお尻)、ナイロ・キンタナ(肩、ヒジ、お尻、両膝に軽い打ち身)、イヴァン・バッソ、ミケーレ・スカルポーニ、ニコラス・ロッシュ(左臀部と膝の負傷)、ホアキン・ロドリゲス(肋骨と手指の骨折)……。ジャンパオロ・カルーゾは冷たいアスファルトに横たわり、そのまま救急車で運ばれて行った(左腰と脚の打撲)。日本の新城幸也と別府史之も、ケガこそ避けられたものの、やはり足止めを喰らった。
落車のカオスを逃れ、先を続けられたのは12人だけだった。上りが始まると、さらに8人に絞り込まれた。ロット・ベリソルが1人(ティム・ウェレンス)、ネーリソットーリ・イエローフルオが1人(マッテーオ・ラボッティーニ)、そしてBMCとオリカ・グリーンエッジが3人ずつ。しかも、マリア・ローザを着たマイケル・マシューズに、最終マリア・ローザを狙うカデル・エヴァンスが、しっかりともぐりこんでいた!
BMCのアシストは、山道で猛烈な牽引を行った。後方のライバルから、できる限りタイム差を奪い取るために。しかもマシューズを振り落とせば、エヴァンスがマリア・ローザを着るチャンスがやって来る。オリカボーイズだって、負けじと先頭を引っ張った。後方からは、落車から立ち直った一団が、必死で追いかけてきた。しかし、どうにも統率が取れぬまま。タイム差はまるで縮まらなかった。
6時間37分01秒の長き戦いの果てに。それぞれに2人のアシストを使い切ったマシューズとエヴァンスは、ウェレンスとラボッティーニも含めた4人で、山頂スプリントを繰り広げた。スプリントなら……マシューズのお手のものだった。
「マリア・ローザを守るために、できる限りフレッシュな状態で山道に入ること。それが今日のボクの課題だった。チームメートたちが1日中働いてくれたおかげで、ボクは何もせずに、ただ山道に向けて集中するだけでよかった。そして、最高の状態で、山道へと飛び込むことが出来た。脚の状態は良かった」(マシューズ)
ピンク色に着替えてから4日目。ついにマシューズがジャージにふさわしい勝利を手に入れた。2013年ブエルタの区間2勝に次ぐ、グランツール「個人」3勝目を、2級峠の山頂でもぎ取った。おかげでピンク(総合)と白(新人)に加えて、青(山岳)ジャージもコレクションに加えてしまった。
「マリア・ローザ姿で、カデル・エヴァンス相手に山頂フィニッシュを制するなんて、これ以上の成功はないほどだよ。これまでも上りでは悪くなかったけど、いまひとつ自信がなかった。でも、この2ステージで、自分自身に証明できたよ。ボクにはできるんだ、って。難関山岳ステージはさすがに無理だけど、この先は、短い上りフィニッシュは狙っていきたい。だって、ボクはこういう地形でも勝てるし、平坦スプリントでも勝てるってことが、分かったんだから」(マシューズ)
エヴァンスは区間3位でゴールし、ボーナスタイムを4秒手に入れた。幸運な37歳から、49秒遅れで、不運なライバルたちはフィニッシュラインへたどり着いた。さらにスカルポーニは1分37秒、痛みを押して最後まで走り続けたロドリゲスは7分43秒、ロッシュに至っては15分08秒もタイムを失った。
総合地図は大きく塗り替えられた。首位マシューズと2位エヴァンスの差は15秒→21秒に開いたのだが、むしろ「それ以下」の選手との差が、19秒→1分18秒と拡大した。エヴァンスの1分以内につけるのは、もはや総合3位のウランのみ(57秒差)。総合4位のラファル・マイカ以下、多くの選手が6日目にして早くも大きなハンデを背負うことになった。ロッシュは今後、マイカのアシスト役にまわることになりそうだ。満身創痍のロドリゲスは、志半ばで、大会から立ち去った。
「ジロを立ち去るのは辛い。でも、これ以外の選択肢は、もうないんだ」(ロドリゲス、チームプレースリリースより)
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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