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2度目の休養日を終えて、プロトンはゆっくりと歩みを再開した。“ほぼ”完璧な平坦ステージで、空模様もまあまあで、少なくとも雨はなく、風もない。休み明けの崩れたリズムを取り戻すには、ぴったりのコンディションだった。本スタートと同時に飛び出したマルコ・バンディエーラとアンドレーア・フェーディを、快く送り出すと、メイン集団は後方で調整ライドに務めた。
チームタイムトライアルを除いた序盤9日間で、バンディエーラはすでに3度(第6・8・9ステージ)、フェーディは2度(第2・6ステージ)のエスケープを試みている。区間勝利はもちろん、ジャージにも手が届かなかった。ただし、密かに、あちらこちらでほんの少しずつ、ポイントや賞金をかき集めてきた。たとえば全ステージ終了時点で、フェーディはフーガ賞(大逃げ賞)の総合トップに、バンディエーラは中間スプリント賞の総合トップ!
「幸いにも、本当に良き逃げの友に恵まれた」(バンディエーラ)
だからこそ、山岳ポイントさえ存在しない、逃げ切りさえ不可能なこのステージでも、2人は協力しあってひたすら前方へと突進した。後方には最大8分半差をつけた。中間ポイントはバンディエーラが1位通過で、フェーディが2位通過。もちろん総合でもバンディエーラが1位32ptで、フェーディが2位26pt。また本日の逃げ距離は2人仲良く164kmで、走距離はフェーディがダントツ1位の608kmに、バンディエーラは2位の508kmに伸ばした。そして、最後には、両者は固い握手を交して……、ラスト12kmで吸収されることになる。
なにしろ補給を終えると、メインプロトンも、いよいよ本格的にアクセルをふかし始めた。このジロで今まで赤ジャージを保持した3チーム、……つまり第2・3ステージにマルセル・キッテルが力を誇示したチーム ジャイアント・シマノ、中間&ゴールポイントをコツコツ貯めたエリア・ヴィヴィアーニ擁するキャノンデール、そして現在の所有者ナセル・ブアニを護衛するFDJ ポワン エフエールが、そろってスピードアップに乗り出した。強力なエスケープ巧者に少々手こずらされた感もあったけれど、スプリンターたちの威力が上回った。
“ピュア”スプリンターたちが、別の脅威にさらされた時間帯もあった。チームスカイが5両編成の特急列車を組み立てて、猛烈なスピードアップを企てたのだ。ゴール前5km地点に待ち構える、ほんの小さな上りで、スプリンターを置き去りにしてしまおうと試みたのだ。
「上り距離はほんの1km半ほどだったけど、スカイがとてつもなく高速に上り始めた。ボクは一気に後方へ吹っ飛ばされてしまった。あれが最初のセレクションタイムだったね。とにかく必死に喰らいついていくしかなかった」(ブアニ)
ベン・スウィフトを背負ったエドヴァルド・ボアッソンハーゲンが、猛烈な牽引を仕掛けた。ルーカ・パオリーニも張り付いた。起伏のてっぺんではニコラス・ロッシュがダッシュを切って、高速で下りへと突っ込んで行った。プロトンは細く長く伸び、ところどころに亀裂もはいった。
しかし、結局のところ、小さな起伏に集団を粉々にするだけの破壊力はなかった。ゴール前3kmで集団は再びひとつになった。スプリンターたちもみんな揃って前に戻って来た。むしろ集団スプリントを壊したのは、ゴール前のカーブ続きで起こった、集団落車だ!
ゴール前1kmのアーチを抜けた直後の右カーブ。前から10番目ほどにつけていたタイラー・フラーが、地面に転がり落ちた。背後にいたスプリンターたちは、ことごとく巻き込まれた。例えばヴィヴィアーニも勝負に絡むチャンスを失った。そもそも、この種の危険を避けるために、BMCレーシングチームも、マリア・ローザのカデル・エヴァンスを率いてゴール前2kmまで集団前方に張り詰めていたのだという。
「今朝のミーティングで、ラスト1.5km地点では、前から5番目以内につけているよう指示された。チームメートがものすごく努力して、ボクをその位置まで連れて行ってくれた」(ブアニ)
全力疾走を続けられたのは、わずか9選手のみ。言いつけをきっちり守ったブアニも、もちろん、その中の1人だった。そして、真っ先に仕掛けたジャコモ・ニッツォーロの背後に、スルリと滑り込むと、最後はワイルドに3勝目をもぎ取った。
これはまた、1999年ジロでローラン・ジャラベールが区間3勝を上げて以来初めてとなる、フランス人選手によるグランツール一大会での区間3勝だった。しかも23歳の若さでの大快挙。フランスの自転車メディアが、とてつもなく大騒ぎしているのは、言うまでもない。ちなみにマーク・カヴェンディッシュは23歳でツール・ド・フランス区間4勝を叩き出しているし、ペーター・サガンは22歳でツール区間3勝だ……。
「スプリンターというのは、『なる』ものじゃないんだ。スプリンターとして生まれるものなのさ。ボクには最初から爆発力が備わっていた。もちろん、その質を向上させるために、日々トレーニングを重ねてきた。常に『最高』の選手になるよう、努力しているんだよ」(ブアニ)
総合上位勢の順位には変化がなかった。ただカデル・エヴァンスが、チームメートを落車リタイアで1人失った。
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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