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サイクル ロードレース コラム 2014年5月23日

ジロ・デ・イタリア2014 第12ステージ レースレポート

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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丘陵地帯の緑は、しっとりと濡れていた。ぶどう畑に恵みの雨が降り注いだ。全175選手のうち、前半に出走した選手は、ことごとくびしょ濡れになった。

たとえば46番出走の新城幸也は、雷の鳴り響くゴール地にたどり着いた。「ゴール前3kmまでは晴れていたのに、そこから先は大雨で」と、肩をすくめた。93番出走の別府史之は、「スタートからフィニッシュまで雨全開!」と、もはや笑うしかない状態だったようだ。細かいうねりとアップダウンが繰りかえし続くルートで、特に最終盤の勾配-12%の下りでは、「落車しないように、とにかく慎重に」走った。別府から40分後にスタートを切ったトビアス・ルドビグソンは、コース前半の長い下りで落車し、即時リアイアを余儀なくされた。

幸いなことに、総合争いの選手たちが42.2kmのルートに飛び出していく頃には、雨も上がり、ルートも乾き始めていた。沿道にやってきた観客たちは、あちこちの試飲会場でワインをしこたま流し込んで、すっかり陽気になっていた。そんな彼らの応援の声に背中を押されて、強豪たちは100%のポテンシャルを出し尽くした。その結果は、さまざまな意味で「予想外」だった。

ディエゴ・ウリッシは、区間2勝で見せた強さが、本物であったことを改めて証明した。58分51秒という好タイムをたたき出すと、およそ1時間に渡って暫定ステージ首位の座を守り続けた。最終的には区間2位で1日を終え、総合21位→14位へとジャンプアップ。「将来的にはグランツール系の選手へと成長するのでは?」と期待される24歳。この先の注目は、難関山岳でどれだけ走れるか。

「当初の目的は、昨日の落車後の体の状態をチェックすることだった。最初の上りから第1中間ポイントまで、感触はすごく良かった。だから、そこからは全力を尽くした。ただし下りの道路はまだ濡れていたから、リスクを冒さぬよう走ったよ。ボクより後に走った選手と比べたら、あそこで数秒失ってしまったのかもしれない。とにかく満足してる。こんなに好成績を上げられるなんて、予想していなかったから」(ウリッシ)

高笑いが止まらなかったのはリゴベルト・ウランだった。最後から2番目に走り出したコロンビア人が、ウリッシの記録を1分17秒も塗り替えたのはもちろん、むしろ最終走者カデル・エヴァンスを1分34秒も上回ったのだ。

「このルートは2回下見に来た。スペシャライズの担当者と色々バイク調整を心がけたし、冬季間にはカリフォルニアで風洞実験も行った。ツール・ド・ロマンディでもタイムトライアルでいい走りができた。今日の走行中は、無線で常にエヴァンスのタイム情報が入ってきた。こんなことが、違いを生み出したんだと思う」(ウラン)

「ジュニア時代はそれでも国内タイムトライアルチャンピオンだったから!」とはしゃぐ27歳は、確かに2003年には年少の部で、2005年にはジュニアカテゴリーで、コロンビアの国内TTを制している。それでもダントツのトップタイムで区間を制して、さらに総合首位に駆け上がってしまうだなんて、正直に「予想していなかった」と告白する。

「ボク個人にとっても、チームにとっても、そして祖国コロンビアにとっても、この勝利は大きな意味を持つ。しかもマリア・ローザを取れたなんて、素敵なサプライズだね」(ウラン)

エヴァンスを37秒上回って、ウランが生まれて初めてのマリア・ローザを身にまとった。105年の歴史を誇るジロ・デ・イタリアで、コロンビア人がリーダージャージを着用するのは初めての快挙。ちなみにツールなら2003年にビクトルユーゴ・ペニャが3日間、ブエルタなら2001年にサンティアゴ・ボテロが2日、それぞれ総合首位に立ったことがある。

そしてオーストラリア人として2011年に史上初めてツール・ド・フランスを勝ち取ったエヴァンスは、4日間でマリア・ローザを脱いだ。

「数日前からウランの調子が上がっていると感じていたけれど、正直言うと、彼がこれほど素晴らしいタイムトライアルを実現するとは予想していなかった。もちろんボク自身は、もっと上手くやれたらと願っていたよ。コースはボク向きだったし」(エヴァンス)

確かにウランからは1分34秒も失ったが、あとは人生最高の調子を謳歌しているウリッシに17秒の遅れを取っただけで、37歳大ベテランはあらゆるライバルからタイムを奪い取っているのだ。総合でもウランに37秒差で逆転されたが、総合3位ラファル・マイカには1分15秒もの差を有している(ウランからは1分52秒差)。

「ボクの総合ポジションは、戦術的に見て、悪くない。これから面白くなるよ」(エヴァンス)

ウランはこの先の総合ライバルとして、エヴァンス、マイカ、さらにはナイロ・キンタナとドメニコ・ポッツォヴィーボの名前を上げた。新人賞ジャージで構想をいせたマイカは区間4位、第1中間ポイントまでかっ飛ばしたポッツォヴィーボは9位、数日前から風邪を引いているキンタナは13位で1日を終えた。総合ではウランとエヴァンスが37秒差。それ以下はすでにかなりの差が開いている。3位マイカが1分52秒差、4位ポッツォヴィーヴォが2分32秒差。ウィルコ・ケルデルマンを間に挟んで、6位キンタナが3分29秒差……。

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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