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参加22チーム中、最後に走り出したモビスターが、トップタイムをたたき出した。2012年大会、チーム本拠地パンプローナで行われた初日チームタイムトライアル優勝に続く、見事な快挙だった。UCIワールドツアーに所属する唯一のスペインチームが、アンダルシアの強い西日の中で、表彰台でシャンパンを掛け合った。初日マイヨ・ロホの着用権利は、2年前と同じく、TTスペシャリストのヨナタン・カストロビエホが手に入れた。
全長12.6kmのコースで、優勝タイムは14分13秒。走行時速は53.100km。石畳ゾーンから始まり、細い路地を駆け抜け、アスファルトはガソリンで黒光りし、……しかも計算によれば630mに1回ずつロータリーが登場するという難コースを、9人は非常に上手く攻略した。今季個人タイムトライアル3勝のアドリアーノ・マローリが、ペダルを踏み外してスタートで出遅れるハプニングもあったが、他の8人は冷静に速度を控え、牽引役の立て直しを待った。
「前半はとにかく慎重に。難しく危険なコースだと分かっていたから、慎重に、確実に走るよう、みんなで心がけた」(カストロビエホ、ゴール後インタビューより)
6.3km地点の中間計測ポイントでは、暫定首位キャノンデールの6分59秒に、5秒足りなかった。しかし、ラスト1kmまで9人全員が一丸となってリレー交代を続けたスペインチームは、ゴールでは6秒のリードを付けていた。9番目に出走して以来、50分以上に渡ってトップの座を守り続けてきたイタリアチームは、最後の最後で、無念にも、チーム2位の座に引きずりおろされた。
また、開幕前に本命視されていたオリカ・グリーンエッジ、トレック・ファクトリーレーシング、オメガファルマ・クイックステップも、ことごとく地元チームの奮闘に膝を屈した。2013年ツールTTT覇者のオーストラリアチームは6秒遅れ、ファビアン・カンチェッラーラ擁するアメリカチームは9秒遅れ(午前中の下見で全員が一斉落車した影響は心身共に多々あった様子)。2年連続TTT世界チャンピオンはなんと11秒も遅れを喫した。ただ3年連続個人TTチャンピオンのトニー・マルティンは、「4週間の完全オフ後の初めてのレース」にしては上出来だ、と結果には納得している。
「誰が先頭通過するかは決めていなかった」そうで、マイヨ・ロホは自然と、ラインぎりぎりまで必死に牽引を続けた人間の手に渡った。隊列の2番目に付けていたアレハンドロ・バルベルデや、ジロ総合覇者のナイロ・キンタナは、静かにアシスト役に花を持たせた。ちなみに、2年前のカストロビエホは、2日間きっちりジャージを守り、3日目にはバルベルデに譲り渡している。
「僕ら9人全員で完璧な走りを実現させた。ジャージを着られるのは名誉なことだけど、この勝利はチームみんなで手に入れたもの。だってチームメートなしでは、こんな快挙は不可能だから。今は僕がジャージを着ているけれど、目標はこの先もチーム内にジャージを留めおくこと。ナイロやアレハンドロを山に向けてみんなでサポートしていく。とにかく、今日は勝てただけじゃなくて、総合ライバルたちに、かなり大きなタイム差をつけることができたよね!」(カストロビエホ、公式記者会見より)
総合優勝を目論む2人、バルベルデとキンタナは、もちろん総合首位とゼロ秒差で並んでいる。びっくりするほど大人数で、とてつもなく豪華で、かつ多くがなんらかの「リベンジ」に燃えているライバルたちはといえば、11秒差リゴベルト・ウラン、19秒差アルベルト・コンタドールとウィルコ・ケルデルマン、ロベルト・ヘーシンク、21秒差サムエル・サンチェスとカデル・エヴァンス、27秒差クリス・フルーム、30秒差ファビオ・アールとユルヘン・ヴァンデンブロック、33秒差カルロス・ベタンクール、38秒差ホアキン・ロドリゲス、41秒差アンドリュー・タランスキーとダニエル・マーティン、51秒差ダニ・ナバロ、1分34秒差ティボー・ピノ……という順列になっている。
もちろんツール第10ステージで右脛骨を骨折したコンタドールにとっては、決して悪くない滑り出しだった。「良い結果だと思うよ。チームメートの隊列についていくことが出来て嬉しいし、なにより膝も痛まなかった」(個人プレスリリースより)と本人も満足している。フルームはツール前1回、ツール中3回(+左手首骨折+右掌骨折)、2日前1回の落車で慎重になっていたのかもしれない。ガーミンのマーティンは、無傷で2日目を迎えられることに、おそらくほっとしているに違いない(ジロは初日チームTTで落車リタイア)。またツール総合3位のピノは、今回は総合リーダーの座はケニー・エリッソンド(45秒遅れ)に譲り、もっぱら区間勝利狙いだそうだから、タイム損失は関係ないようだ。
そもそも区間上位3名に10、6、4秒の、中間ポイント上位通過3名に3、2、1秒のボーナスタイムが与えられる。ボーナスタイムの一切ないツール・ド・フランスとは違って、ブエルタにはタイム差縮小のチャンスが毎日やってくる。だららこそ、6秒差のペテル・サガンとマイケル・マシューズや、12秒差のジョン・デゲンコルプ等々が、第2ステージ終了後に赤いジャージを着ている可能性は大いにあるのだ。
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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