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「明日(第10ステージ)は、僕のフィジカルの状態を正確に知るための、絶好のテストとなるだろう。昨日(第9ステージ)だけで、結論を出してしまいたくない。ただ、僕はブエルタ総合優勝を狙っていく、そう今なら断言できる」(コンタドール、個人公式リリースより)
休養日にこう語ったアルベルト・コンタドールは、タイムトライアルの終わりに、マイヨ・ロホを身にまとった。区間では39秒遅れの4位に滑り込み、総合では2位以下を27秒突き放して首位に立った。
「たしかに、僕向きのコースだな、とは思っていたけれど……、こんな結果は予想していなかった。本当に。今日、赤いジャージを着ることが出来たなんて、信じられない」(コンタドール、ゴール後インタビューより)
潤んだ瞳と、笑顔と、そしておなじみの「エル・ピストレロ」のバキューンジェスチャーが表彰台を彩った。2014年7月14日、ツール・ド・フランス第10ステージで落車骨折してから約1ヵ月半。一時は「今季は復帰断念」と報道されながらも、驚異的な回復力と強靭な精神力とで、ブエルタ出場を果たした。そして2014年9月2日、ブエルタ・ア・エスパーニャ第10ステージで、大会の頂点へと躍り出た。グランツール5勝(+剥奪された2勝)を誇る大チャンピオンが、グランツールのリーダージャージを身にまとうのは、2012年ブエルタ最終日以来となる。
「もしも僕がブエルタを勝ち取ったら、単純に、信じられないことだよね。これからも1日1日を走っていく。プレッシャーを感じずにね。目標は最終日にマイヨ・ロホを着ていること。もちろん今の時点では、後ろにいるよりも、前にいるほうがいいね」(コンタドール、大会公式リリースより)
区間勝利は、大方の予想通りに、トニー・マルティンの手に落ちた。世界選手権TT3連覇中のスペシャリストは、虹色のジャージを身にまとい、36.7kmのコースを47分02秒(46.818km/h)で走り終えた。個人TTは今季7勝目。約3週間後に控える世界選手権ポンフェラーダ大会に向けて、どうやら調整は順調に進んでいるようだ。
「自分の調子が良いことが分かったし、世界選手権への大きな自信にもなった。僕が正しい方角へ向けて進んでいることが、証明できたよね」(マルティン、チーム公式リリースより)
ただし、決して簡単に勝利をもぎ取ったわけではない。7月のツールでもTT区間を制したマルティンは、「今年で一番ハードなタイムトライアルだった」と告白する。
「上りが厳しかった。リズムをつかむのが難しかったし、コース後半の下りや平坦部分に向けて、体力も温存しておかなきゃならなかった。それにカーブが多くて、ひどくテクニカルなコースでもあった。最後には暑さにも苦しめられたよ。だから勝利を確信できなかった」(マルティン、チーム公式リリースより)
マルティン以前の世界最強、世界選TT4勝を誇るファビアン・カンチェラーラも、かなり苦戦させられたようだ。11秒遅れで走り終わった直後には、「人生最悪のタイムトライアルだったよ」(ゴール後インタビューより)と吐き出した。挙句の果てに、前走の選手を「風除け」に利用したとして、7秒のペナルティさえ課されてしまったのだから。
ピュアスペシャリストを苦しめた前半の3級峠には、勾配15%ゾーンが含まれていた。山頂=11.2km地点の第1中間計測を、マルティンは20分02秒でクリアした。記録はヒルクライマーたちに次々と塗り替えられた。中でもコンタドールは、「後半はスペシャリスト向け。だから山で絶対にリードを開いておかなきゃならなかった」(大会公式リリースより)と、猛ダッシュで19分29秒の最高タイムを叩き出した。
この時点で、総合表彰台の有力候補たちは、30秒差以内にひしめいていた。最終走者ナイロ・キンタナも20秒遅れで上りをそつなく終えていた。落ち着いて走っているはずだった。しかし、下りの、ひどく細く曲がりくねった道で、右カーブを曲がりきれずにガードレールへと突っ込んでしまった!
「上りでは非常に調子は良かった。でも下りでは、単純に、僕がブレーキを十分に効かせなかっただけなんだ。たしかにカーブに入る前に、シューズがちょっと緩んでいたから、締めなおした。でも、これが落車の原因じゃないと思ってる。かなり長い間ブレーキをかけていたけれど、でも、十分ではなかったんだ。だって自転車は止まらなかったんだから。そして、僕は転がり落ちた」(キンタナ、チーム公式HPより)
アスファルトの上を派手に一回転したけれど、幸いにも、左足首が軽く痛むだけで、深刻な怪我はなかった。それでも、再スタートを切るまでに、2分近くものタイムを要した。フィニッシュラインには、マルティンから4分07秒、コンタドールから3分28秒遅れでたどりついた。総合順位も首位から11位(3分25秒差)へと一気に陥落した。だからと言って、総合争いから完全に放り出されてしまったわけではない。なにしろ、この春のジロ・デ・イタリアを制したキンタナだが、第12ステージの個人TTを終えた時点で、総合ではいまだ3分29秒遅れだった……。
「なんとか自分の調子を取り戻して、レースを続け、そしてポディウムの上で大会を終えられるようトライしたい」(キンタナ、大会公式リリースより)
アレハンドロ・バルベルデは1つ順位を戻して、総合2位・27秒差へ再浮上。キンタナの落車のせいでもあったが、なによりスペイン国内TTチャンピオン本人が、1分00秒遅れの区間8位と大健闘したおかげだった。第2〜9ステージの8日間、チームメートのキンタナ&バルベルデは、2人揃って総合3位以内に留まってきた。片方がタイムを大きく落としたこの先、モヴィスターは、果たしてどのような戦術で挑むのか。
「ボク自身の走りには満足しているけれど、ナイロの落車に関してはほろ苦い思いだね。僕は何も知らされてなかった。走り終えてから、聞かされたんだ。……今、大切なのは、ナイロがいまだ大会に残っていること。彼はきっと調子を取り戻してくる。このブエルタで素晴らしいことを成し遂げるために、僕らは、戦い続けていく」(バルベルデ、チーム公式HPより)
また、前述のジロ第12ステージで、2位以下に1分17秒もの大差をつけて区間勝利を奪ったのが、リゴベルト・ウランだった。ここスペインでも、高い独走力は健在だった。第1中間計測をコンタドールの16秒遅れで通過すると、30km地点の第2中間地点ではマルティンをコンマ数秒で交わして、なんとトップ通過を果たした!最終的にマルティンからわずか15秒遅れの、区間2位でフィニッシュ。総合9位から、59秒差の総合3位へと大きなジャンプアップを成功させた。
ちなみに、チームタイムトライアルで世界選手権2連覇中のオメガファルマ・クイックステップは首位マルティン、2位ウラン、11位ピーター・シェリーと区間上位に3選手を送り込んだ。タイトル保守へ向けて、こちらもどうやら磐石な様子だ。
「スタートから飛ばしすぎて、すぐに体力がなくなった」(大会公式リリースより)というクリス・フルームは、得意のはずのタイムトライアルで1分32秒(コンタドールから53秒)もの遅れを喫した。総合では1分18秒遅れの5位。上りではノーマルバイクを使用し、山頂でTTバイクと交換した2人、ウィナー・アナコナとホアキン・ロドリゲスは、それぞれ悪くない走りで総合4位(1分12秒)と6位(1分37秒)に留まった。サムエル・サンチェスも快走を見せ、総合13位から7位(1分41秒)に順位を上げた。
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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