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サイクル ロードレース コラム 2015年4月3日

【ツール・デ・フランドル/プレビュー】両巨頭不在の中、エティックスとスカイの火花が散る!

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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石畳クラシックがいよいよ、ツール・デ・フランドルとパリ〜ルーベという、クライマックスのモニュメント2戦を迎える。しかし過去10年に渡って4月上旬の戦いを制圧してきた両巨頭、トム・ボーネン(フランドル優勝2005・2006・2012年/ルーベ優勝2005・2008・2009・2012年)とファビアン・カンチェラーラ(フランドル優勝2010・2013・2014年/ルーベ優勝2006・2010・2013年)が、2015年フランドルのスタート地に姿を現すことはない。

ならばボーネン親衛隊のエティックスの誰かが、永遠なるリーダーに代わって、状況を制圧せねばなるまい。鬼の居ぬ間に、若き才能だって、一気にトップまで駆け上がりたい。復活祭イースターの日曜日に、ベテランたちも、もう一度輝きを放ちたいはずだ。

今季ここまでの北のレースは、エティックスが積極的に作り、スカイが笑ってきた。

2月末のオムループ・ヘットニュースブラットは、最終先頭グループ「エティックス3 vs スカイ1」の中から、スカイのイアン・スタナードが勝利をさらい取った。翌日のスプリントレース、クールネ〜ブリュッセル〜クールネこそ、エティックスのマーク・カヴェンディッシュがリベンジとばかり勝利を手にしたが、3月上旬のGPサミンではまたしても「先頭集団エティックス4人」という数的有利をまるで生かせず、2位に泣いた。

フランドル週間最初のワールドツアー大会、E3ハーレルベークではスカイのゲラント・トーマスが栄光を勝ち取り、共に飛び出したエティックスのズデニェック・シュティバルはが2位。ヘント〜ウェヴェルヘムでは、エティックスとスカイの両軍は、カチューシャのルーカ・パオリーニの果敢なる単独アタックの前に崩れた。しかし、8人に絞り込まれた先頭集団にスカイはトーマス1人だけだったのに対して、エティックスは2人残していたことを特筆せねばならない。

当然ながら地元フランドルメディアは、エティックスの「戦術ミス」を繰り返し批判している。先頭に滑り込む顔ぶれはたいてい同じニキ・テルプストラ、ズデニェック・シュティバル、スティーン・ヴァンデンベルフのいずれか。ほんの少し希望があるとしたら、昨年も同じようなミスばかり繰り返してきたけれど、最後のパリ〜ルーベできっちりミスを修正してきたことか(テルプストラ優勝)。一方のスカイは、ミラノ〜サンレモから3戦全開で走ってきたトーマスの調子のピークが心配されるけれど、スタナード、元ヘント〜ウェヴェルヘム覇者ベルンハルト・アイゼル、そして「サー」ブラドレー・ウィギンスと、持ち駒は揃っている。

もちろん、エティックスvsスカイの睨み合いに、強豪選手たちが積極的に絡んでくることは間違いない。昨季表彰台のグレッグ・ヴァンアーヴェルマートやセプ・ヴァンマルク、さらにはミラノ〜サンレモ覇者ジョン・デゲンコルブ、昨ミラノ〜サンレモ覇者のアレクサンドル・クリストフ。フランドル2勝のスティーン・デヴォルデルは、カンチェラーラの代わりにトレックを率いねばなるまい。クイックステップ時代は「ボーネンの2番手」として、あとわずかのところで勝利を逃したシルヴァン・シャヴァネルは、イアムの1番手として走る。そうそう、たとえE3最終盤で脱落したとはいっても、やはりぺーター・サガンのことも忘れてはならない……。

肝心のコースは、「北のヴェネツィア」ブリュージュから「ツール・デ・フランドル博物館」の建つオーデナルデまでの264km。平坦な石畳ゾーンは6つで、激坂は去年よりも2ヶ所増えて全部で19。特にフランドルを最もフランドルらしくしてくれる石畳の激坂は全部で10回通過する。中でも激坂巡りの基点となるのが、オウデ・クワレモント。平均勾配4%、最大勾配11.6%の伝統坂は、全長2200mのうち1500mに石畳が敷き詰められた長い長い難所。全部で3回登場するうち、後半の2回はパテルベルフ(平均12.9%、最大20.3%、登坂&石畳距離360m)とセットで登場する。

今のようなオウデ・クワレモント中心の「周回」形式が取られるようになったのは、グラモンの壁、いわゆる「ミュール」が2011年大会を最後にコース上から姿を消してから。頂に教会を抱く石畳の坂道は、平均勾配9%・最大20%と難度も飛び切り高く、コースの最後から2番目の難所として(最終難関はボスベルフ)、数々の名アタックの舞台となってきた。あのチャーミングな坂の使用が中止されて以来、選手たちは、決定的アタックの場を探し求めている。

だからこそ、かつては激坂めぐりの序盤に登場し、大渋滞の名所となっていたコッペンベルフ(平均勾配11.6%、最大22%、登坂&石畳距離600m)が、昨季からコース終盤へと移動された。今年は14番目(219.6km地点)に配置され、つまり3度目のオウデ・クワレモントよりも28km手前でアタックのきっかけ作りに参加する。そして、最後のオウデ・クワレモント→パテルベルフをこなすと、フィニッシュラインまで残すは13.2kmだ。

絶好調の脚を持つ男が、強烈なアタックで独走にもちこめるか。それとも小人数によるスプリント勝負にもつれこむか。「フランドルの獅子(の後継者)」ボーネンは3勝中、独走1回、2人スプリント1回、3人スプリント1回。一方の「スパルタクス」カンチェラーラはやはり3勝中、独走2回、4人スプリント1回。また過去10年のうち二大巨頭「以外」の選手が勝った4大会は、独走2回(いずれもスティーン・デヴォルデル)、2人スプリント、3人スプリント。つまるところ独走と片手で足りる人数によるスプリントの確立は半々。

そうそう、1週間前にフランドル地方を襲った悪天候が、再びプロトンを苦しめることがあれば、またしてもひどく荒れるレースになるかもしれない。天気予報によれば曇り、風弱し、日中の気温は8〜10度前後。あくまでも、予報、である。

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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