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サイクル ロードレース コラム 2015年4月11日

【パリ〜ルーベ/プレビュー】勝利を掴むのは、長年の夢を果たしたいブラドレー・ウィギンスか?好調アレクサンドル・クリストフか?

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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英国人は天気の話題が大好きだと言うけれど、パリ〜ルーベ愛好者だって、空模様には関心がある。さて、幸か不幸か、快晴のツール・デ・フランドル以来、おひさまは北フランスを照らし続けている。するとつまり、このところすっかり代名詞となりつつある「砂埃まみれの高速レース」が巻き起こるのかもしれない。2014年7月ツール・ド・フランスにプロトンの大部分を恐怖に陥れたような――区間覇者のラース・ボームは大喜びしたけれど――、春の泥んこ合戦は、またしてもお預けとなりそうだ。雨好きのあなたに一縷の望みも。パリ〜ルーベ前夜の土曜日に、一応、パヴェを軽く湿らせる小雨が降る予定らしい……。

英国の勲爵士はパリ〜ルーベも大好きだ。”サー”ブラドレー・ウィギンズはその栄光に満ちたロード選手人生を、北の石畳で締めくくることに決めた(本当のサヨナラは、5月に初開催される地元英国のツアー・オブ・ヨークシャー)。最後にどうしても、「子供時代の夢」をかなえたい。そう熱望しているからだ。4月7日付の英国テレグラフ紙に、2012年ツール・ド・フランス総合覇者は語っている。

「もしもパリ〜ルーベに勝てたら、きっといい気分になれるだろうな。この3年間の自分の状態を考えると特にね。ツールはいつだって偉大だ。でも、僕のこれからと、ツールとパリ〜ルーベのコントラストを考えると……。パリ〜ルーベは自転車界の遺産だ。子供の頃に、ヨハン・ムセウとかの走りを見て、僕はこのレースに恋に落ちた。勝利で締めくくることができたら最高だ。先週のパンヌ3日間のタイムトライアルを、アルカンシェルジャージで走れたのも良かったなぁ。僕はこの先の数年を無為に過ごしたくない。『元ツール覇者』という名のパンチドランカーのままではいたくないんだ」(ウィギンス)

2014年大会の挑戦は、9位に終わった。もしもこの春、ウィギンスが石畳トロフィーを手に入れることができたら、1986年ショーン・ケリー以来となるグランツール覇者、1981年ベルナール・イノー以来となるツール・ド・フランス勝者によるパリ〜ルーベ優勝となる。

サーのライバルとは?いよいよもう後がなくなった北クラシック精鋭軍エティックス・クイックステップに、「フランドルと同じように攻撃的に走る」と宣言するロット・ソウダル、「ルーベでリベンジを果たす」と意気込むフランドル3位のBMCフレッフ・ヴァンアーヴェルマート、それからセプ・ヴァンマルクやらペーター・サガンやら……。もちろん最大の脅威は、この数週間、北で猛威をふるうカチューシャとアレクサンドル・クリストフだ!

3月29日にルーカ・パオリーニがヘント〜ウェヴェルヘムを制し、3月31日以来、クリストフはラインレース5戦5勝(パンヌ3日間3勝、フランドル、スヘルデプライス)。パンヌ3日間の14.2kmの個人タイムトライアルだけは、ウィギンスに勝利をさらわれたが、それでもノルウェー人は3位に食い込む絶好調ぶり。ちなみに現在開催中のスペイン・バスク一周でもホアキン・ロドリゲスが勝ち星を重ねており、まあとにかく、今のカチューシャはとてつもない勢いに乗っている。クリストフが「ナンバーワン優勝候補」として注目を浴びるのも、至極当然の成り行きだ。ところが、肝心の本人は、「パリ〜ルーベは自分向けではない」と軽めにアピールしているらしい。

たしかに2014年1月に、クリストフは、「僕の脚質には、ツール・デ・フランドルのほうがルーベより合ってる」「石畳にはそれほど強くないんだ。だからルーベは僕には難しい」(独ラドスポーツ・ニュース)と告白している。しかし、1年3ヶ月前の彼と、今のクリストフは、もはや同じ人間ではない。あれからミラノ〜サンレモを勝ち、ツール・ド・フランスの区間勝利を2つ手にし、ツール・デ・フランドルもねじ伏せたのだから。彼の控えめな発言を、決して信頼してはならない。

そのクリストフが得意ではないらしいパリ〜ルーベのコース設定は、例年とほぼ同じ。コンピエーニュからスタートし、95kmほどアスファルトの道を北上する。トロワヴィルの町を通過したら、そこから残り約150kmの、3分の1は石畳。全長52.7kmのでこぼこ道が、ひたすら選手たちの脚を苦しめ、無数のパンクと落車を引き起こす。

全部で27つある石畳セクターは、難易度が5段階で評価されている。そのなかでも最難関「5」をもらっているゾーンは3つ。1つ目はご存知、アランベール(第18セクター、158km地点、全長2400m)。鬱蒼とした森の中を突っ切る長い直道道路は、晴れた日でもどこかしら湿っていて、滑りやすい。しかも石畳が極めて荒れている上に、他の農道でよく見られるような両サイドの「土の踏み固められたゾーン」が存在しない。つまりこの一本道には、どこにも逃げ場がない。2つ目のモン・アン・ペヴェール(第10セクター、204.5km地点、全長3000m)は、アランベールとは違い、直角カーブが2度登場する。すなわち曲がりきれずに思わず落車してしまう選手が多い場所。しかも道幅が極めて狭く、道の中央がこんもり大胆に盛り上がっているため、走行ライン取りが難しい。

そして3つ目が勝負の分かれ目、カルフール・ド・ラルブル(第4セクター、236.5km地点、全長2100m)。イレギュラーな石畳に、直角カーブ。すでに230km以上走りぬいてきた脚にとっては、これだけでも難しいというのに、しかも石畳の周りは……巨大なバーベキュー会場と化している!もくもくと上がる煙と、ビールの匂いと、耳をつんざくような歓声と、そして愛すべき酔っぱらいたち。ゾーンの入り口から出口まで、まるで花道のように人垣が作り上げられる。選手たちが通過できる道幅はおそらく50cmくらいではなかろうか。ここでは走行ラインは自分では選べない。前の選手にほんの少しでも離されたら、間にファンたちが割り込んでしまって、背中を見失ってしまうかもしれない。追い越しは至難の業。転んだら、みんなが助けてくれるかも知れないけれど……。

カルフール・ド・ラルブルを抜けだしたら、フィニッシュまでは残り15km。栄光の独走が始まっているか、それともルーベ競技場のセメントバンクの上で、スプリント勝負が繰り広げられるのか。その競技場の壁には、こんな名言が記されている。「北の地獄は、天国への入り口だ」。トム・ボーネンとファビアン・カンチェラーラ、大本命2人のいない石畳クラシックも、ついにフィナーレを迎える。

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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