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【アムステルゴールドレース/レビュー】史上4人目の快挙!“アルカンシェルの呪い”を払拭したクヴィアトコウスキーが勝利!
サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか18人のスプリント!!2003年にカウベルグで大会が締めくくられるようになって以来、初めての事態だ。両手を突き上げたのは、世界チャンピオンのミカル・クヴィアトコウスキーだった。
決して動きがなかったわけではない。昨年の第100回リエージュ〜バストーニュ〜リエージュのように「選手たちの待ちの姿勢がレースをつまらなくした」のではないのである。第50回アムステル・ゴールドレースは、カウベルグ以外の部分で多くの攻撃があり、カウベルグでも本命がアタックした。
「僕らが望んだ通りにレースは進んだ。戦術は良かったはずだ。僕の調子は良かったし、カウベルグの坂頂には1人でたどり着いた。でも残念ながら、今回のアムステルゴールドレースは、つまり、そんなに厳しくはなかったということなんだ」(フィリップ・ジルベール、ゴール後インタビューより)
朝から6人が逃げ出し、メイン集団はモヴィスターやオリカ・グリーンエッジ、BMC等々が追走の手綱を握った。エティックス・クイックステップのトニー・マルティンが数回、アルカンシェルを背後に従えて、猛烈に牽引する姿も見られた。そしてゴール前37km、28番目の坂道エイゼルボスウェフにて、本格的な戦いが勃発した。風は強かった。
IAMのデーヴィッド・タナーと、オリカのサイモン・クラークがメインプロトンから抜けだすと、すでに2人にまで数を減らしていた逃げに追いつき、先を急ぎ始めた。ほどなくマルティンが反応。優勝候補を抱えるBMCはダミアーノ・カルーゾを、キャノンデールはアレックス・ハウズを前線へ送り出した。地元オランダのロットNL・ユンボは、リーダ格のウィルコ・ケルデルマンが飛び出した。アスタナはまずディエゴ・ローザが行き、そこに2014年ツール・ド・フランス覇者ヴィンチェンツォ・ニーバリが合流した。「スプリントに持ち込みたくないなら、僕にできることは、あれしかなかったから」と。
「ただ僕の調子は、まだ完全ではなかったんだ。引かない選手がいたのは普通のこと。マルティンは引かず、最終的にチームメートのクフィアトコフスキーが勝った。だから彼は正しかった。むしろ残念だったのは、ローザが転んだことだよ」(ニーバリ、ガッゼッタ・デッロ・スポルト紙より)
ローザはカーブで転倒し、ケルデルマンは畑に突っ込んだ。先頭集団はいつしかタナー、クラーク、ニーバリ、カルーゾ、マルティンの5人に絞りこまれた。ゴール前25kmで、プロトンとの差は約30秒。ニーバリは積極的に先頭交代に加わったし、何度かは自らアタックのそぶりも見せた。3度目のカウベルグ登坂を終えると、得意の下りでスピードアップに努めた。しかし、ラスト15kmで、加速の動きをマルティンに遮られた。その隙にクラークが単独で飛び出し、ニーバリとマルティンは集団へと吸収されていった。
10秒にまで縮んだタイム差を、一時は19秒までこじ開けた。しかしクラークの孤軍奮闘は、BMC率いるプロトンに残り8kmで飲み込まれた。“審判の時”を間近に控えるアスタナは、諦めてはいなかった。全部で34ある坂道の、33番目ベメレルベルフで、ヤコブ・フルサングが急発進した。思いかげず“審判の時”を待つことになったBMCのフレフ・ヴァンアーヴェルマートが、ピタリと背中に張り付いた。
戦術は良かったはずだ。残り4kmでフルサングとヴァンアーヴルマート吸収のタイミングで、小さなカウンターアタックの気配が起きると、やはりBMCはすぐに潰しにかかった。逃げの試みは全て排除し、最終坂カウベルグへと中規模の集団で突入した。道が登り始めるとすぐに、ベン・ヘルマンスが前に飛び出した。4日前のブラバンツ・ペイル勝者は、ちょうど1年前にサムエル・サンチェスがやったように、がむしゃらにペダルを回した。おとり役を前に行かせ、ライバルたちに追走の脚を使わせる。BMCの戦術は、良かったはずだ。
ほぼいつものポイントで、ジルベールはアタックをかけた。2010年、2011年、2014年、さらに2012年世界選手権で勝ち取った時と同じように、タイミングだって悪くないはずだった。
しかし、敵を引き離すのには、十分ではなかった。坂道ではマイケル・マシューズがぴったり張り付いて離れなかった。坂頂から1.8kmという長く退屈な直線に入ると、しかも、ばらばらと後ろから選手が追い付いてきた。集団は18人にまで膨れ上がり、そしてスプリント――。
「自転車レースでは、周りの選手たちが何をしてくるのか、決して読めないんだ。誰一人苦しんでいるように見えなくても、本当の状態は、最後の加速の瞬間まで分からない。スプリントに向けて、僕は前の選手の流れを利用して、腰を下ろした。ほんの少し呼吸を整えた。カウベルグでの奮闘からリカバーするために、これが重要だった。おかげでエネルギーを取り戻して、全力でスプリントに向かうことができたんだ」(クフィアトコフスキー、チーム公式リリースより)
24歳の世界チャンピオンが、初めてのクラシックレースをつかみとった。アルカンシェルでアムステル・ゴールドレースを制した史上4人目の選手となった。“アルカンシェルの呪い”は跳ね除けたし、エティックス・クイックステップの“2位シリーズ”にもついに終止符を打った。
アレハンドロ・バルベルデはまたしても優勝を逃したが、人生3度目のアムステル・ゴールドレース表彰台を堪能した。カウベルグでの無理がたたったか、スプリント巧者のマシューズは3位。BMCは大いに働き、大いにカードを切り、5位と10位という満足できない結果でアルデンヌ1戦目を終えた。
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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