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サイクル ロードレース コラム 2015年5月10日

ジロ・デ・イタリア2015 第1ステージ レースレポート

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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紺碧のリグーリア海岸線を、ばら色に染まったサンレモへと向けて、9人のチーム列車が猛スピードで駆け抜けていく。第98回ジロ・デ・イタリアが、海風に吹かれて、幕を開けた。

初日チームタイムトライアルは、2大会連続でオリカ・グリーンエッジが制した。全長17.6kmのコースを、19分26秒、時速54.339kmで走り終えた。オージー軍団にとっては2013年ツールも含めて、3度目のグランツールチームTT勝利。2年前の夏の日、黄色いジャージの栄光に輝いたサイモン・ゲランスが、この日はマリア・ローザを身にまとった。

チームには4人のトラック出身選手がいた。しかも世界選手権や夏季五輪で、表彰台の一番高いところに上った経験を持つ、飛び切りの健脚ルーラー揃いだった。

「彼らはラスト2kmほどまで牽引役として全力を尽くし、そして、後方へと千切れていった。そして、ジャージを今後数日間守るチャンスのある選手たちに、あとが託された」(ゲランス、公式記者会見より)

地中海岸は、第2の故郷のように知り尽くしていた。ゲランスは、ゴール地サンレモからほんの40kmほどの距離の、モナコで暮らしている。伝統的に欧州に渡ったオージーたちは、モナコか、もしくはフランスのニース(サンレモから55km)に拠点を構えることが多い。ツール・ド・フランスのチームTT勝利はご存知の通り、ニースだった。海風の扱い方を、リヴィエラ――フランス側ではコート・ダジュールと名前を変えるが――の走り方を、誰もが知っていた。

なにより、ゲランスにとっては、3年前にミラノ〜サンレモを勝ち取った思い出深い場所だった。モニュメント“クラシチッシマ”の頂点に上り詰めた町で、チームメートみんなと勝利を祝い、そして、生まれて初めてピンク色のジャージにも袖を通した。

「ファンタスティックな勝利だった。僕らが本命視されていることも知っていた。勝利の鍵は、スタートと同時にチームの全員が計画通りの走りを遂行したこと。いつだって信頼に応えてくれるチームメートたちだけど、今日は飛び切り頼もしい走りを見せてくれたよ。この僕がマリア・ローザを身にまとえるなんて、とてつもない名誉だ。もしも可能ならば、ジャージを9等分に切り分けて、彼らに1切れずつ渡したいくらい」(ゲランス、公式記者会見より)

12月の鎖骨骨折で、シーズン序盤の予定はなにひとつ果たせなかった。第1目標のダウンアンダーとストラーデ・ビアンケには出場さえできず、第2目標のアルデンヌクラシックはアムステル70位、リエージュ落車リタイアと失望に終わった。ちょうど1週間後に35歳の誕生日を迎えるゲランスの、第3の目標は、おのずとジロになった。

「ステージ直前に、監督のマシュー・ホワイトが、一番にフィニッシュを超えるのは僕だと指示を出した。そしておそらく、明日は、スプリントステージになるだろう。だからマイケル・マシューズがジャージを手にするチャンスが大きい。それから、山岳ステージに入ったら、ウィーニングやチャベスがいる。こうやって、何日間か、チーム内でジャージを守っていくことが目標だ」

昨大会は6日間マリア・ローザを守ったマシューズは、今年は新人賞マリア・ビアンカでのスタートとなった。

総合争いの面々では、優勝大本命のアルベルト・コンタドールが、ライバルたちから早くもアドバンテージを奪った。全22チーム中20番目の出走で、他チームのタイムを参考に、ティンコフ・サクソはオリカ・グリーンエッジから7秒遅れの19分33秒を記録した。夕方に入り、徐々に強まっていった向かい風をものともせずに。

なにより4番目に出走し、9人全員でゴールし、長時間にわたって暫定1位をキープし続けたアスタナを6秒(3位)上回った。エティックス・クイックステップにも12秒(4位)リードを奪った。つまり優勝争いのライバルであるファビオ・アルに6秒差、リゴベルト・ウランに12秒差を早くもつけたことになる。

「結果に満足している。特に、あらゆるライバルたちから、タイムを奪うことが出来たから。優勝候補たちとのタイム差は決して大きくはない。それでも、前につけているというのは、いつだって、いいことなんだ」(コンタドール、チームリリースより)

もう1人の優勝候補リッチー・ポートはというと、コンタドールから20秒、アールから14秒、ウランから8秒も失ってしまった。ゴール直後は苛立ちを隠せなかったものの、前向きなコメントを残している。幸いにも、逆転のチャンスは、20日間残っている。

「タイムロスは理想的な結果ではないけれど、世界の終わりではない。レースはようやく始まったばかり。僕は元気いっぱいで大会に乗り込んできた。闘い続ける準備は出来ている」(ポート、チームHPより)

別府史之や石橋学は、チームメートの一団から遅れ、それぞれに9番目でフィニッシュラインへとたどり着いた。それでも、2人とも、ゴールエリアではすっきりとした表情を見せた。

石橋は人生最初のワイルドツアーレースの、人生最初のグランツールの、最初の17.6kmをまずは無事に走り切った。「この前のTTで調子が悪かったので、最初は後ろからスタートしたんです。でも、終盤に向けて、徐々にスピードを上げていくことができました。決して『良かった』とは言えないけれど、思ったよりは悪くもなかっですね」とほっとした様子で語った。

マイペースでフィニッシュラインに帰ってきた別府は、「前を走る選手が、一気にペースを上げすぎて……。僕は息があがっちゃって、追いつけなかったんです」と遅れた理由を語った。「でもコンディションは悪くないし、踏めています。今日はいずれにせよ、自分の成績は求めていなかったので、特に気にせずいきますよ」と、すでに気持ちは2日目以降に向いている。

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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