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【クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ/プレビュー】ニーバリ、フルームの調子は?ツールに向けた8日間の前哨戦レース!!
サイクルロードレースレポート by 宮本 あさかツール・ド・フランスの足音が、近づいている。ジロ・デ・イタリアを制覇し、ジロ&ツールのダブルツールを目指すアルベルト・コンタドールは、わずかな休息の時に入った。しかし、イタリアに寄り道せず、7月だけに焦点を合わせて黙々とトレーニングを積んできた強豪たちは、こぞってクリテリウム・ドゥ・ドーフィネにやってくる。アルプスを舞台に繰り広げられる山岳ステージレースで、最後の実践練習を繰り広げるのだ!
大昔から「ツール前哨戦」と呼ばれ、近年では2013年クリス・フルーム、2012年ブラドレー・ウィギンスがドーフィネ→ツールの同年制覇を成し遂げてきた。2011年はドーフィネ総合2位のカデル・エヴァンスが、真夏のフランスで栄光を勝ち取っている。
しかも、山の密集度を考えると、本番のツール・ド・フランスより難しいくらい。8日間のレースの、前半戦は中級起伏ステージが3つに、チームタイムトライアルが1つ。そして後半4日間は……、ひたすら山頂フィニッシュのみ!特に第5ステージは、ツール第17ステージと完全に同じコースで争われる。スタートも、途中に通過する4つの峠も、そしてフィニッシュの山プラ・ルーも。実際に走る選手たちにとっても、レースを見守るファンにとっても、ツールに向けた最高の予習となるはずだ。
また最終日第8ステージでは、108km地点で、ツール&ドーフィネ初登場のモンヴェルニエの九十九折を通過する。昨秋のツールプレゼンテーションで上空からの全景写真が公表されて以来、あの有名なラルプデュエズより3つ少ない18のヘアピンカーブが、ファンたちの胸を躍らせてきた。栄えある「初踏破者」となるべく、多くの脚自慢たちが、この山を夢中で駆け上がるに違いない。ちなみに全長3.4km、平均勾配8.2%の山道は、その勾配やダイナミックなヘアピンやよりも、どうやら……ところによっては自転車が2台並ぶことさえやっとなほどの道の細さが最大の敵らしい。今大会では1級カテゴリーに指定されているが、ツール第18ステージでは2級の扱いとなる。
そして第8ステージのフィニッシュ10kmほど手前が、ツールの第20ステージのスタート地にあたる。ドーフィネのプロトンは登りながらこの地へ向かうが、ツールのプロトンはここから下り降りていく。逆走でのコース下見となる。
そういうわけで、スプリンターたちには、残念ながらほとんど出番が与えられない。ツールでのスプリント合戦が期待できそうな俊足で、ドーフィネ出場を選んだのは、ナセル・ブアニだけ。一方でツール総合優勝を狙うオールラウンダー&ヒルクライマーで、あえてドーフィネ回避したのは、上記のコンタドール(ルート・デュ・シュドへ)と、昨ツール3位のティボー・ピノ(ツール・ド・スイスへ)、そして1年前のジロ覇者ナイロ・キンタナ(ルート・デュ・シュドへ)くらいのものである。
つまりはヴィンチェンツォ・ニーバリ、クリス・フルームを筆頭に、アレハンドロ・バルベルデ、ホアキン・ロドリゲス、ジャンクリストフ・ペロー、ロメン・バルデ、ウィルコ・ケルデルマン、ピエール・ローラン、バウク・モレマ、ティージェイ・ヴァンガーデレン、ルイ・コスタ、アンドリュー・タランスキー……といった面々が全員ドーフィネにやってくる!ジロ・デ・イタリア以上のとてつもない豪華メンバーが揃うわけだが、世界中の自転車関係が知りたいのは、やはり2014年ツール覇者ニーバリと2013年ツール覇者フルームの仕上がり具合だ。
なにしろ2015年ここまで、ニーバリはぱっとした成績を上げられていない(ティレーノ〜アドリアティコ総合16位、ツール・ド・ロマンディ10位)。ただ2014年も、実のところ、シーズン序盤には目立つ成績はなかった(パリ〜ニース21位、ツール・ド・ロマンディ5位)。ドーフィネにも出場したが、総合7位で終えている。
「去年のドーフィネは厳しかったことを覚えている。でも、同時に、それが僕にとっては良かったんだ。ツール・ド・フランスに向けて、どこを改善していくべきなのかを、理解できたから」(ニーバリ、ASO公式リリースより)
上りでの加速力が足りないと判断し、その後は山岳合宿で、オートバイの後ろに張り付いて特化したトレーニングを積んだそうだ。そして6月末のイタリア選手権を制し、ツール・ド・フランス2日目で主権を奪い取り、シャンゼリゼで栄光に輝いている。つまり今回に関しても、もしかしたら、本人はドーフィネで成績を上げる必要は感じていないかもしれない。それでも、注意深く観察することで、ニーバリの今後を占う鍵は見つかるはず。
一方のフルームは2月のアンダルシア一周総合優勝、ツール・ド・ロマンディ総合3位とそこそこの調子で来ているけれど、2013年序盤の圧倒的な強さを考えると(ツアー・オブ・オマーン総合優勝、ティレーノ〜アドリアティコ総合2位、ツール・ド・ロマンディ総合優勝)、やはり一抹の不安がよぎる。もちろん2013年はドーフィネも総合優勝をさらい取った。ところが昨大会は、第6ステージまでリーダージャージを纏いながら……、落車した。そのまま調子を崩し、総合も12位で終えた。ツール・ド・フランス本番でも3度落車し、それが原因でリタイアしたことは記憶に新しい。ケニア生まれの英国人に関しては、やっぱり、ドーフィネの仕上がりが大きくツールに影響すると考えても良さそうだ。
ちなみに英国テレグラフ紙のインタビューによると、フルームはツールの総合ライバルにニーバリ、キンタナ、バルベルデの名を挙げつつ、「しかしコンタドールが頭ひとつ抜けだしている。彼は指標であり、倒すべき男だ」と語っている。クリテリウム・ドゥ・ドーフィネの8日間の激戦の後には、フルームこそが、倒すべき男ナンバーワンになっているかもしれない。
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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