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サイクル ロードレース コラム 2021年3月27日

【ボルタ・ア・カタルーニャ 第5ステージ:レビュー】連日のチャレンジを実らせたレナード・ケムナ「アタックが決まった瞬間は最高の気分だった」

サイクルロードレースレポート by 福光 俊介
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レナード・ケムナ

レナード・ケムナ

勝利のためなら何度だって挑戦を繰り返す。

思えば、昨年のツール・ド・フランスでもそうだった。フィニッシュ目前でライバルに先を行かれ敗れた3日後、自らの力でリベンジを果たしてみせた。舞台が変われど、その気持ちと走りの姿勢、そして勝利に対する執念は一貫している。

4日前の第1ステージで、終盤形成された逃げに乗りながら、あと一歩で優勝を逃していたレナード・ケムナ。大会初日のリーダージャージ着用は逃してしまったが、それからはステージ優勝にひたすらフォーカス。個人タイムトライアルの第2ステージを除き、毎日アタックしては前線をうかがっていた。

それが影響してか、この日はスタートから脚が動かずペダリングに苦心していたという。「無理やりスピードを上げて」たどり着いたという先頭グループ。大人数を嫌って飛び出す選手がたびたび現れたが、まったく反応ができなかった。フィニッシュまで50km以上を残して独走に持ち込んだレミ・カヴァニャもできることなら追いたかったが、脚に力が入らなかった。

一時は他の逃げメンバーに1分30秒近いリードを奪ったカヴァニャだったが、彼のペースダウンに合わせるかのように、ケムナの周囲では追撃ムードが高まっていった。やがてステージ優勝争いは逃げメンバーのものとなっていき、駆け引きも活性化。この日最後のカテゴリー山岳である1級ポルト・デ・モントセラトの頂上でついにカヴァニャを捕らえると、勝負はフィニッシュまでのダウンヒルにゆだねられた。

このレース展開がケムナに味方した。あとは最終局面までスピードに乗せるだけだったし、何より我慢の走りを続けている間に調子が上がってきたことを感じていた。

「先頭グループ内では互いを見合っていて、みんな上手くいかないことにイラ立っていたんだ。周りの冷静さが失われつつある時こそトライするタイミングにふさわしいと思っている。アタックが決まった瞬間は最高の気分だったよ」(レナード・ケムナ)

散発的にアタックとキャッチを繰り返した末に、残り8kmで飛び出したケムナ。ベストレッグではなかった分、イラ立ちを募らせる選手たちを傍観することに努め、最高の成果を引き寄せた。

もっとも、独走に持ち込めば勝つ自信がある。もともとタイムトライアルで鳴らしてきて、アンダー23時代にはヨーロッパ王者になった。今大会の第2ステージは22位とイマイチだったが、逃げのスペシャリストととして一目置かれるようになった今、一人でも突き進むことのできる巡行力は彼の大きな武器である。

連日のチャレンジを実らせ、次の目標は果たして。「あと2ステージあるから、再び勝てるように取り組むだけさ」。やはり、彼のスタンスは揺るがない。

かたや、リーダージャージとその護衛たちは、「別のレース」を構築した。レース前半に集団から飛び出した大人数には、幸い総合成績を脅かす選手は含まれていなかった。だから、前を行く選手たちとのタイム差を調整しながら、残り距離を減らすことに集中した。

結局、メイン集団はイネオス・グレナディアーズが主導権を握ったまま、フィニッシュに到達した。何より、イニシアティブを奪える空気にないのである。ポルト・デ・モントセラトの上りでは、リチャル・カラパスがペーシングを図り、誰の攻撃も許さない。そのスピードは、4分以上あった先頭とのタイム差があっという間に半分にまで減ったほど。総合トップ3を固めるアダム・イェーツ、リッチー・ポート、ゲラント・トーマスよりも、カラパスに脅威を感じているライバルがいても不思議ではない。この日、トップ3は仕事らしい仕事をカラパスらアシスト陣に任せ、安全にレースを終えた。

「シーズン初戦でこれだけ走れると分かって本当に幸せな気分。モチベーションも高まっている。いまはアシストの仕事を通して調子を上げている段階だ」(リチャル・カラパス)

昨年はブエルタ・ア・エスパーニャを走ったため、シーズン終了が11月までずれ込んだ。そのため今年のレース活動開始を遅らせたが、今季初戦から快調。次戦のイツリア・バスクカントリーでの総合エース昇格も内定した。今大会の残る2ステージは、トップ3を無事に最終目的地・バルセロナへ連れていくと同時に、自らも戦える状態へと仕上げることがミッションになる。

なお、この日メンバー2人から新型コロナウイルスの陽性反応が出た地元プロチーム、エキポ・ケルンファルマが大会から撤退。同様の理由で開幕直前に出場を辞退したアルペシン・フェニックスに続き、2チーム目の離脱となっている。

文:福光俊介

福光 俊介

ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う

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