【Cycle*2021 ボルタ・ア・カタルーニャ：プレビュー】完全復活目指すフルーム参戦！セップ・クスの「自分のための走り」にも期待。上れる男たちだけに許された戦いが幕を開ける！

記念すべき第100回大会を迎えるボルタ・ア・カタルーニャ

上れる男たちだけに許された戦い。これぞ地中海岸コスタ・ブラバとピレネー山脈とを舞台に繰り広げられる、ボルタ・ア・カタルーニャだ。たとえスプリントステージでさえ、上れる脚を持っていなければ、決して勝利をさらいとることなどできない。2日連続の山頂フィニッシュでは、2021年ワールドツアーで初めて、標高2000m超の高みに達する。

現存するステージレースとしては史上4番目に古い。そんな伝統と威厳とを兼ね備えるカタルーニャ一周は、2年ぶりに春のレースシーンに帰ってくる。しかも新型コロナウイルスの感染拡大のせいで中止に追い込まれたのは、記念すべき第100回大会だった。だから2021年大会は、昨季予定されていた道..1929年バルセロナ万国博覧会会場や1992年バルセロナ五輪開催地を巡りつつ、カタルーニャの栄光の歴史を振り返る。

100回大会を祝うために、2021年大会には特別賞さえお目見えする。各ステージには山岳ポイントや中間ポイントの他に、「100回大会スプリント」ポイントが1ヶ所ずつ（TT区間以外）。なんと毎日1位通過者には1000ユーロ（＝ポイント賞や山岳賞の最終勝者賞金と同額）のご褒美が待っている！

しかもフィニッシュ（10、6、4秒）や中間ポイント（3、2、1秒）と並んで、100回大会スプリントでも3、2、1秒のボーナスタイムが発生する。総合リーダーたちにとっても、決して軽視できないポイントとなる。

肝心の「白地に胸に3本の緑横縞」総合リーダージャージを狙うのは、そうそうたるグランツール総合表彰台候補たち。中でもイネオス・グレナディアーズは元ツール覇者トーマスと元ジロ覇者カラパスを中心に、ポート、アダム・イエーツ、デニスと最強レベルの布陣で乗り込んでくる。母国エクアドルで練習を続けてきたカラパスにとっては、待望の今季初レースだ。

セップ・クス（写真左）

一方でユンボ・ヴィスマはG・ベネット、クライスヴァイク、クスのトリオクライマーで栄光を求める。特に数日前にチームとの契約を2024年まで延長したクスの、「自分のための走り」が見られるかもしれない。

移籍後2戦目に臨むフルーム

完全復活への道を模索するフルームにとってはシーズン2戦目で、EFエデュケーション・NIPPOはウラン＆カーシーの新旧エース揃い踏み。昨ジロでセンセーションを巻き起こしたヒンドリーとアルメイダも、スペインへ実力の再証明に向かう。

昨大会2位のアダムにとっては、いよいよ双子のサイモンとの初対決も待っているし、初レースと言えば、2021年に入ってから突如移籍を発表したヒルシもUAEジャージ初披露の時を迎える！区間4勝、山岳賞2回と今大会を大の得意とするデヘントも、当然新たな大逃げを狙っているはずだ。

さらにはチッコーネ、キンタナ、ザカリン..と並み居る山男たちに混ざって、P・サガンが同大会を選んだのもなにやら興味深い。2月上旬のコロナ陽性で調整に遅れが見られるクラシックハンターは、同時期に開催されるE3とヘントをスキップし、その後のモニュメント連戦に向けカタルーニャでじっくり調子を上げていくほうを選んだ。

もちろん地元スペインの星モビスターは、過去3度優勝のバルベルデを筆頭に、ソレル、マスのトリオリーダー制で大会に乗り込む。特にカタルーニャっ子のソレルにとっては、最終日に総合最上位カタルーニャ選手に与えられるカタルーニャ旗「サニェーラ」カラーの記念ジャージを身にまとうのもまた、大切な使命となる。

またアルペシン・フェニクスは、遠征予定者から3人のコロナ陽性者が出たとして出場を辞退した。

2021大会コース：全7ステージ

上れる男たちだけに許された戦い。

3月22日（月）　第1ステージ　178.5km
2012年大会から欠かさず開幕ステージを迎え入れてきた地中海岸コスタ・ブラバのビーチリゾート、カレリャから1週間の戦いは走り出す。毎回ルートこそ変わるものの、ステージのコンセプトはいつも同じ。つまり中盤でいくつかの峠を越え（今年は2級→1級）、残り約17kmで3級コリャサクレウを上って下りたら、平地の大通りでフィニッシュを迎える。ただし勝利のパターンはそれぞれ。過去8回のうち4回が大集団スプリントフィニッシュで、3回は大逃げ。2013年はコリャサクレウでいきなり総合争いが勃発し、総合勢15人が勝利を争った。

3月23日（火）　第2ステージ　18.5km
個人タイムトライアルが、2010年以来の復活。バルセロナ五輪ボート競技会場ともなったバニョラス湖のほとりを巡るコースは、いわゆるスペシャリスト向き。大きな起伏こそないものの、最終盤にはヘアピンカーブを含む急コーナーがいくつも潜む。

3月24日（水）　第3ステージ　203.5km
超級山頂フィニッシュ2連戦の初日。バルセロナ郊外の「オリンピック運河」が、初めてカタルーニャ一周のプロトンを迎え入れる。水辺から走り出したプロトンは、約190kmかけてじわじわじわじわと上り続け、いつしかピレネーの山奥へ。最終的には2021年ワールドツアー＆ヨーロッパツアーとしては初の標高2000m超へ到達する。最終峠バルテル2000の山道は全長11.1kmで、平均勾配は7.6％、最大18％。2019年大会で使用された際は、同時に山頂にたどり着いた5人のうち4人が、最終的な総合1〜4位の地位におさまった。

3月25日（木）　第4ステージ　166.5km
最難関ステージ。前日は1峠のみの登坂競争だったが、この日は3つの難峠が待ち構える。しかも山道はいずれも長い！まずはスタート直後から延々30km近く上って1級峠（正式な登坂距離は3.7km）へ。そこから70kmもの長い下りを経て、超級エルカント峠の24.3kmの長い長い山道へと取り掛かる（平均4.5％、最大12％）。標高1000m差を一気に駆け下りると、最後は超級アイネ峠への、またしても長く苦しい上り（18.7km、6.8％、12％）。2016年大会でアイネ峠が使用された際は、デヘントが逃げ切った背後で、2位キンタナがライバルたちに約15秒差をつけてフィニッシュ。そのまま総合優勝を飾った。

3月26日（金）　第5ステージ　201.1km
カテゴリーの付く山は2つだけ。ただし細かい起伏はいくつも待ち受ける。フィニッシュ前26kmでぎざぎざの岩山、1級峠モンセラト（7.5km、6.5％、12％）を越えたら、あとはフィニッシュまで下り坂。ラスト約2kmはほぼフラットだから、少集団スプリントにもつれこむ可能性あり。

3月27日（土）　第6ステージ　193.8km
第1回大会第1ステージのフィニッシュ地から、第100回大会6日目のプロトンは走り出す。コスタ・ブラバの海辺の町から海辺の町までをつなぐ海ステージながら、スタートとフィニッシュの間はアップダウン満載。最後の上りはフィニッシュ手前約14kmの3級峠ながら、最後まで道は決して「ど平坦」にはならない。

3月28日（日）　第7ステージ　133km
伝統のバルセロナ最終ステージは、パンチャー＆クライマーたちの大競演。少し郊外に出て3級峠をこなしたら、再びバルセロナに戻って恒例の周回コースへ。全長7.9kmの周回上には、おなじみモンジュイックの丘（2km、5.7％、8％）。バルセロナ万博会場となり、ブエルタはもちろん、ツールでも戦いの舞台となったおなじみの上り坂を、今年のプロトンは全部で6回よじ登る。過去2度バルベルデが同区間を制しているが、人生最後のカタルーニャ一周の、人生最後のステージで、3度目の栄光もあるかもしれない。

文：宮本あさか