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【Cycle*2021 ミラノ〜サンレモ:プレビュー】王者ファンアールトの前に立ち塞がるアラフィリップと宿敵マチュー。超人達がシーズン最初のモニュメントタイトルを奪い合う!
サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか前回大会の表彰台で笑顔を見せるファンアールトとアラフィリップ
イタリアンリヴィエラに春の喜びが帰ってくる。昨季は例外的に真夏の「プリマヴェーラ(春)」を戦ったプロトンは、2021年はまさしく「春分の日」に、シーズン最初のモニュメントタイトルを奪い合う。
つまり昼と夜の長さが同じ貴重なこの1日を、選手たちは7時間近くサドルにまたがって過さねばならない。なにしろ今年で第112回目を迎えるミラノ〜サンレモの難関は、起伏でも石畳でもない。ずばり299kmという、21世紀では規格外のクラシック最長距離なのだ。朝9時40分、例年通りミラノ中心部にあるスフォルツェスコ城から旅立ったレース一行が、地中海岸サンレモのヴィア・ローマにたどり着く頃には、たいてい時刻はすでに16時をまわっている。
春への回帰はまた、伝統コースの半分復活も意味する。実は2020年大会は、開催時期だけでなはなく、コース自体も変則的だった。まず例年ならばコース中程に待ち構えるトゥルキーノ峠が、2019年秋の土砂崩れにより、通行が不可能となった。また新型コロナウイルスによる長く苦しいロックダウン生活が明け、人々がわずかながらも自由を満喫できた夏休みと重なった影響で、コース終盤の複数の観光地がレースの迂回を要請したからでもある。
トゥルキーノの復活は2022年を待たねばならない。代わりに172km地点にジオヴォ峠への小さな上りが加えられた。幸いにも2つ目の理由は解消された。つまり今年は通常通りに、終盤の3つの小さな起伏「トレ・カピ」が、本格的な戦いの鐘を鳴らす。
メーレ、チェルヴォ、ベルタと3つのカポ(岬)は、通常ならばそれほど気にならない程度の出っ張りだ。淡い光に輝く海と、茫洋たる空、そして柔らかなパステルカラーの家並みを堪能できる、むしろ最高のサイクリングスポットに違いない。しかし今大会に限っては、選手たちはすでに250km近くもペダルを回した後であり、凝縮したラスト50kmの始まりに過ぎないのだ。
愛称通り「スプリンターズクラシック」になるか、それともパンチャーやクライマーが事を有利に運ぶかどうかの鍵は、最終盤の2つの上りが握る。それが残り21.6kmのチプレッサ(登坂距離5.6km、平均勾配4.1%、最大9%)であり、そして残り6.5kmではおなじみポッジオ(3.7km、3.7%、8%)。
たしかに上りの難度こそ高くはなく、近年はむしろダウンヒル特攻へ向けた重要な駆け引きの場だ。なにしろ下りはまさしくチキンレース。2018年大会ではポッジオでの爆発的なアタックの後、クレイジーなダウンヒルでヴィンチェンツォ・ニバリが「0秒差」の逃げ切りを決めているし、昨2020年は上りでジュリアン・アラフィリップに引き離されながらも、ワウト・ファンアールトが持ち前の巧みな下りテクニックで追いつき、そのまま一騎打ちスプリントを制した。
クラシックの中のクラシック、「クラシチッシマ」との別名も誇る今大会を、史上最強の自転車王エディ・メルクスは計7度も勝ち取ったが、現役の中で2度勝った選手はいない。最後に複数勝利を挙げたのはオスカル・フレイレ(2004、2007、2010年)で、最後の連覇はエリック・ツァベルの2000・2001年に遡る。それだけ「勝ちパターン」に持ち込むのが難しいレースということなのかもしれない。
ディフェンディングチャンピオンのファンアールトは、ティレーノ〜アドリアティコ区間2勝&総合2位の絶好調の脚で、果たして20年ぶりのサンレモ連覇を成し遂げられるだろうか。
サンレモの極意に近づいた男
最大のライバルに挙げられるのが、現時点では最もサンレモの極意に近づいた男、過去4度出場・優勝1回・表彰台2回のアラフィリップ。そして、もちろん、少年時代からの宿敵マチュー・ファンデルプールだ。
三つ巴の戦いでファンアールトが警戒すべきは、まずはウルフパックの凄まじいチーム力。もしもスプリントにもつれ込んだ場合、今季絶好調のサム・ベネットとダヴィデ・バッレリーニの2人が控えているのも、アラフィリップにとっては有利だ。
ファンデルプールに関しては、「予想外の場所でのアタック」にファンアールトは目を光らせる。「マチューがどんな作戦を使おうが、自分の調子さえ良ければ、僕はいつだってついていけるんだけどね」とも語るが、2週間前のストラーデ・ビアンケで反応できなかったことも記憶に新しい。ちなみにファンデルプールが見せたティレーノ第5ステージの独走52kmは..ほぼトレ・カピからサンレモフィニッシュまでの距離に相当する。
シーズン最初のモニュメントタイトルを奪い合う
ほかの強豪たちだって、3人だけに話題を独占させておくつもりもないはずだ。世界で5つしかないモニュメントの、4つ(フランドル、ルーベ、リエージュ、ロンバルディア)をすでに手にしてきたフィリップ・ジルベールは、38歳の春に最後の1つを追い求める。しかも所属チームのロット・スーダルには元サンレモ覇者ジョン・デゲンコルプや俊足カレブ・ユアン、独走力に優れるティム・ウェレンスと、勝てる面子を複数揃えている。
イネオス(クフィアト、ガンナ、ピドコック、モスコン)やEF・NIPPO(ベッティオール、イギータ、ビッセガー、コルト)、UAE(クリストフ、ガビリア、トレンティン、フォルモロ)も、やはり有力な切り札を何枚も持っている。
さらにはファンアーヴェルマート&ナーセンの仲良しAG2Rコンビ、最終盤の道の隅々まで知っている地元っ子ボニファッツィオ、ひとりで行かせたら怖いクラーウアナスン、表彰台2度でそろそろ勝ちたいマイケル・マシューズ、もう1つの因縁ライバルのデマールvsブアニ、チーム自体は絶好調だが本人としてはここまで不気味なほど成績のないニバリetc..。
春一番のモニュメントめがけて、そしてサンレモから本格的に始まる約1ヶ月の春クラシックシーズンに合わせて、誰もが調子を完璧な準備を積んできているはずだ。するとサガンも2月上旬のCovid−19陽性から、そろそろ完調しているだろうか?パリ〜ニースで8日間存在感を放った日本の新城幸也も、7年ぶりに、約300kmの長き戦いへと走り出る。
文:宮本あさか
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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