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【パリ~ニース 第6ステージ:レビュー】区間2勝にマイヨ・ジョーヌ&マイヨ・ヴェール。強さを見せるログリッチ「僕は自分自身の走りに集中していく」
サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか2度目のステージ優勝を果たしたログリッチ
2つの「まさか」。予想されていた大逃げは決まらなかった。かといって勝者は上れるスプリンターでもなかった。長くゆるやかな坂道の果てに、プリモシュ・ログリッチの加速が決まった。マイヨ・ジョーヌが今大会2つ目の勝利を決め、総合のリードをさらに少し開いた。
「こんな風に勝てるなんて最高。僕にとっては新しい体験だね。本当にハッピーだ。疲れていたけど、脚の調子は良かったし、勝つための力は残っていた」(ログリッチ)
逃げ切りを信じた選手は多かった。アタックは幾度も繰り返された。しかし時速48km超で走り続けるプロトンから、15秒以上のタイム差を奪える強者はいなかった。先を行くことが許されたのは、ようやく1時間目を過ぎてから。52km地点、この日最初の山頂に向け赤玉アントニー・ペレスが飛び出すと、アレクセイ・ルツェンコ、ヴィクトール・カンペナールツ、ケニー・エリッソンド、ジョナタン・イヴェール、そしてジュリアン・エルファレスの5選手がチャンスとばかりに後を追う。ついに本日の逃げ集団が出来上がった。
ただし6人は、思ったほどにはタイム差をつけられなかった。最大の理由は、総合でわずか2分24秒差のエリッソンドが滑り込んでいたこと。かつて逃げ切りでアングリルを勝ち取ったほどの健脚を、自由に泳がせるのは危険すぎる。だからこそログラ親衛隊のユンボ・ヴィスマは、常にタイム差を3分以内に保ち続けた。
このリーダーチームと共に、2チームも集団制御に力を尽くした。それが上りスプリントに強いマイケル・マシューズ擁するバイクエクスチェンジと、今区間向きのディラン・トゥーンスと総合1分15秒遅れのジャック・ヘイグとを守るバーレーン・ヴィクトリアス。特にステージの中頃に聳え立つ1級峠では、我らが新城幸也が、メインプロトンの先頭で牽引を続けた!
ちなみにたっぷりと働いた後、残り60kmを切って後退して行った新城は、チームのエーススプリンター、フィル・バウハウスと共にグルペットで1日を終えている。
プロトン
結局のところ逃げ集団内で目論みを成功させたのは、全部で5つある山岳のうち4つで先頭通過を果たし、山岳賞のリードを6pt差から一気に29pt差に開いたぺレスだけだった。いつしかドゥクーニンク・クイックステップやコフィディスも追走に加わり、タイム差が急激に縮まっていく。力尽き脱落する者や、ルツェンコのようにパンクで後退を余儀なくされる者が徐々に出始めて..。
残された虎の子はわずか30秒。フィニッシュまでは残り22km。山岳ポイントのつかない小さな登りで(代わりにスプリントポイントがついたのだが)、ついに逃げ集団はエリッソンド1人となった。しばらく先でメイン集団からヨナス・ルッチがブリッジを仕掛け、超軽量級フレンチクライマーと合流するも、もはや過熱し切ったプロトンを交わすことなど不可能だった。
「1人になってからは全力を絞り出した。だってプロトン内で何が起こるか分からないから。何もトライしなければ何も手に入らないぞ、って自分に言い聞かせた。だから後悔はしていない」(エリッソンド)
ルッチだけはラスト2kmの坂道に先頭で突入し、最後は呼吸さえできなくなるほどに暴力的な努力を続けたが、フラムルージュの手前であえなく飲み込まれた。
勾配5%弱の坂道を、フロリアン・セネシャルが最前列で引っ張ったのは、サム・ベネットの緑ジャージを守るためだったのだろうか。しかし残り800m前後で、ウルフパック印のエーススプリンターの脚は完全に止まった。ラスト500mの緩やかなカーブでは、大外からギヨーム・マルタンが特攻を仕掛けた。前から3番目、つまりログリッチの後輪にぴたり張り付いていた同僚クリストフ・ラポルトのために、場を引っ掻き回した。
「マルタンがアタックしてくれたのは好都合だった。だって他の選手たちがじりじりと競り上がりつつあったからね。しかもログリッチはすぐに反応した。おそらく追いつくために努力した後、きっと一瞬、力を緩めるはずだ、と僕は考えた」(ラポルト)
しかしラポルトの期待はあっさり裏切られた。残り150mでマルタンを捕らえた瞬間..ログラはダンシングでさらに加速したのだ!
モナコからほんの40kmほどのフィニッシュ地に応援に駆け付けた奥様と子供の前で、ログラがやる気まんまんだったのは間違いない。「家族の前で勝つことができたのは気分がいい。だって彼らが僕の一番のサポーターだからね!」と勝利後に語ったように。ただ、やはり50kmほどしか離れていないた自宅から、スタート地に家族が遊びに来ていたラポルトだって..モチベーションは倍増だったずなのだ。ただ結局のところラポルトは「1度も追い抜くことができなかった」し、1日中..いや、週の初めからチームメートと共にせっせと働いてきたマシューズは、この日もわずかに足りなかった。
マイヨ・ジョーヌのログリッチ
区間2勝にマイヨ・ジョーヌ。さらにマイヨ・ヴェールも再び回収したログリッチは、ボーナスタイム10秒も手に入れ、総合2位マキシミリアン・シャフマンとのタイム差を41秒に突き放した。大会6日目で総合首位が40秒以上のリードをつけたのは、2009年大会以来12年ぶり。また前日まで総合3位&マイヨ・ブランのブランドン・マクナルティは、コース半ばの1級峠で落車リタイア。3位にはイオン・イザギレが、新人賞にはアレクサンドル・ウラソフと、2人のアスタナが空いた座についた。
2021年パリ〜ニースの戦いも残すは2日。そしてこの第6ステージの最中に、週末2ステージのコース変更が発表された。2月最後の週末からニース市は土日ロックダウンを行っており、しかもお馴染みのフィニッシュ地プロムナード・デ・ザングレやビーチも完全閉鎖されているため、あらかじめ用意していた「プランB」が発動されることになった。
第7ステージはスタート地が予定されていたニースから、北西30kmの町に変更され、コース全長は166.5kmから119.5kmに短縮された。自ずとコース序盤の1級山岳がコース上から姿を消し、代わりにスタート直後に2級山岳が組み込まれることに。日曜日の最終ステージはニースからニースへの大きな輪をかくコースではなく、「ニースの裏山」のみを使用する、36.2kmの短い周回コースを2周半。
「スポーツ面で見ても悪くないコースが出来たと確信している。土曜日第7ステージは予定通りにコルミアーヌで決する。総合争いを左右するステージになるだろう。日曜日は『アップダウンステージ』の伝統を出来る限り守った。だってパリ〜ニースの最終日は、いつだって数秒を巡るサスペンスが見どころだからね。..今年はログリッチがすでに大差をつけてしまったから、状況は異なるかもしれないけれど」(大会委員長フランソワ・ルマルシャン)
ただしログリッチ本人は、決して、気を緩めるつもりはない。2020年9月の思い出は、いまだ生々しく胸に刻まれているはずだ。だからこの第6ステージ終了後に、記者から「もう勝ったも同然?」との質問が飛ぶと、ちょっぴり気まずそうな顔をしながらもこう宣言した。
「いや、まだ終わりではない。あと重要なステージは2つ残っている。しかも2つとも距離が短縮されたからこそ、最初から最後まで誰もが全力疾走だ。面白いレースになるだろうね。とにかく僕は自分自身の走りに集中していく」(ログリッチ)
文:宮本あさか
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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