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サイクル ロードレース コラム 2021年3月11日

【パリ~ニース 第4ステージ:レビュー】プリモシュ・ログリッチが圧巻の独走勝利「今日の僕には勝ちで締めくくれるだけの最高の脚があった」

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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プリモシュ・ログリッチ

圧倒的強さを見せたプリモシュ・ログリッチ

2021年は良いミレジム(ワインの製造年)となりそうだ。ボジョレーのぶどう畑を力強く駆け上がって、プリモシュ・ログリッチが独走勝利を決めた。あの日失ったマイヨ・ジョーヌを思い出させる、黄色いリーダージャージも手に入れた。

「ここパリ〜ニースで黄色を着られるのは気分がいいね。まだニースまでの道のりは長いけど、目標はもちろん最後までジャージを着続けること」(ログリッチ)

繰り返し襲い来る起伏を、恐れてなどいなかった。むしろその逆で、「好きなタイプのコース。開幕前からこの日と決めていた」ジュリアン・ベルナールが、スタート直後に飛び出した。すかさずアントニー・ペレスが続き、ホセ・ロハス、オリバー・ナーセン、オスカル・リースベーク、さらには赤玉ファビアン・ドゥベも加わった。こんな彼らにとって第一の狙いは山岳ジャージ。なにしろ行く手には、7つの収集ポイントが受けていた!

とりわけ熱心に点取り合戦に加わったのは、第1ステージに1人逃げしたドゥベと、やはり初日すでに山岳ポイントにこだわりを見せたベルナールと、そしてペレス。この男もまた、あの日失ったジャージを追い求めていた。2020年ツールは第2、第3ステージで激しい点取り合戦を行い、ついに3日目半ばで山岳賞首位に立ったはずなのに……その区間が終わる前に落車リタイア。赤玉に1度も袖を通せぬまま、大会を去った。

「コースがコースだけに、どこまで逃げられるのか分からなかった。だから最初の山からポイント収集に全力を注いだんだ。もちろんツールの出来事を思い出して、『おい、俺、転ぶなよ』って自分に言い聞かせながら(笑)」(ペレス)

幸いにもペレスは転ばなかった。5つ目の山岳まですべて先頭通過を成功させた。しかも先頭集団は最大5分半のリードを奪い、順調に逃げ距離を伸ばしたおかげで、フィニッシュ手前約20kmの6つ目の山さえ3位通過。1日の終わりには待望の赤玉ジャージを身にまとった。

「ツールのジャージとは違うけどね。まったく別物さ。ただ少なくとも、明日1日は、山岳ジャージを着て走れる。満喫するつもり」(ペレス)

プロトン

プロトン

この6つ目のブルイィ山の、細くうねる坂道で、本物の戦いは勃発した。前方ではベルナールが1人で先を急ぎ始めた。そこまでユンボ・ヴィスマの統制下にあった後方集団は、複数の野心的なチームが引っ掻き回しにかかった。もちろんステフェン・クライスヴァイクとジョージ・ベネットが冷静に手綱を引き、エースのログリッチは難なく前線にとどまり続けたが、そこまで必死にプロトンの尻尾にしがみついてきたマイヨ・ジョーヌのシュテファン・ビッセガーは、ついに千切れた。

山頂を越え、下りに入った直後のカーブでは、テイオ・ゲイガンハートとダヴィド・ゴデュが地面に投げ出された。昨ブエルタでも区間2勝に尽くしたブルーノ・アルミライルがすぐに駆けつけたおかげで、ゴデュは問題なく集団復帰を果たす。一方で昨ジロのマリア・ローザはしばらく孤独に先を続けた後、チーム医師の判断で自転車を降りた。落車時に頭を打ち付けたため、大事を取っての途中棄権。リッチー・ポートの初日リタイアに続き、イネオスは総合リーダーを2人とも失ってしまった。

呪われていたのは英国軍だけではない。前日の個人TTをコンマ差で落としたレミ・カヴァニャは、残り15kmで潔く飛び出した。ルイスレオン・サンチェスも後に続き、つまり2人のTT巧者が頼もしいデュオを作りあげた。メイン集団にはすぐに30秒のリードを奪い、孤独に前を行くベルナール捕獲まであとわずか……に迫った残り7km、カヴァニャにまさかのメカトラ。バイク交換を待つ間にプロトンに追い抜かれ、勇敢な試みにはあっけなく終止符が打たれた。

「逃げ切れると信じて全力を尽くした」というベルナールは、残り5.7kmでサンチェスにとらえられ、ラスト4kmで置き去りにされた。そのサンチェスもまた、すぐにログラにとらえられられることになる。

きっかけは残り3.5kmのピエール・ラトゥールのアタックだったのだろうか? それとも、しばらく前からうずうずしていたマイケル・マシューズと同じように、直後の中間ポイントでのボーナスタイム収集も頭の片隅にあったのか(残念ながらマシューズは4位通過)。多くのライバルたちは「完璧なタイミング」と絶賛し、一方では「驚かされた」との声も上がる。

とにかくフレンチクライマーの2度目の加速に飛び乗ったログリッチは、あっさり追い越すと、そのまま脇目も振らずにぐんぐん山の上を目指し始めた。

プリモシュ・ログリッチ

強烈なアタックでライバルを置き去りにした

「絶好機だと感じたからさ。昨日すでに好調さを披露できたと思うけど、今日の僕には勝ちで締めくくれるだけの最高の脚があった。トレーニングキャンプで十分な練習を積めてきたことを、改めて確認できた」(ログリッチ)

取り残されたライバルたちは、慌てたり、顔を見合わせたりと、追走の足並みは一向に揃わない。そもそも後方を気にする必要などないほど、ログリッチはひたすら超然とペダルを回し続けた。たった1人で山頂に姿を現すと、春の空へと両手を突き上げた。

「素敵な勝利だし、最高に嬉しいよ。しかも今日はチームが2つの勝利を挙げたからね!」(ログリッチ)

そう、お隣イタリアで開幕したティレーノ〜アドリアティコで、初日大集団スプリントをワウト・ファンアールトが制した。勝利も、総合リーダージャージも、この日はユンボ・ヴィスマが完全に独占してしまったというわけだ。

12秒後に山頂に滑り込んだのは前年度覇者マキシミリアン・シャフマン。昨ブエルタ山岳賞ギヨーム・マルタンが3位に、昨ジロ覇者ジャイ・ヒンドリーのアシストを受けたティシュ・ベノートが4位に食い込んだ。果敢に追走を仕掛けたアレクサンドル・ウラソフは5位で終えた。

シャフマンは総合でも2位に駆け上がった。総合首位ログリッチとの差は35秒。また総合3位には前日TTで好走したブランドン・マクナルティが37秒差につける。アスタナからは4位にウラソフ、5位イオン・イザギレ、9位サンチェスと3人が総合トップ10圏内に並び、一方で2人のリーダーを失ったイネオスは、ディラン・ファンバーレの19位が最高位。

この1日だけで7人が大会を後にしたが、中でもコービー・ホーセンスはコース上に止まっていたチームカーに激突。一時的に意識を失ったという。救急病院に運ばれたが、顔に数箇所の怪我を負っただけで、幸いにも脳震盪や骨折はなかった。

文:宮本あさか

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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