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【3.10 開幕 ティレーノ〜アドリアティコ:プレビュー】名実ともにゴージャスな顔ぶれ!全25チームの精鋭たちが、海色のマリア・アッズーラと海神の三叉槍を奪い合う!
サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか総合勢も豪華な顔ぶれが集結
世界中の自転車ファンにとって、嬉しい悲鳴を上げたくなる数日間がやってくる。隣国フランスで一足早く始まった「太陽へと向かうレース」がいよいよ佳境に入る一方で、イタリアでは、「2つの海のレース」が走り出すのだ!週の半ばの水曜日から1週間かけて、全25チームの精鋭たちが、海色のマリア・アッズーラと海神の三叉槍を奪い合う。
5月のジロ・デ・イタリアを目指す王者たちにとっては、ステージレース本格始動の時。過去10年のマリア・ローザたちのうち、実に8人が同一年のティレーノを走ってきた。
同時に、ティレーノ閉幕からわずか4日後に行われるミラノ〜サンレモへと向かうクラシックハンターにとっては、文字通り最終調整の場となる。実は2011年から16年までの6大会中5大会は、むしろパリ〜ニース組に軍配が上がってきたのだが..2017年〜2019年の3年間は、ずばり、ティレーノ組がそのまま「プリマヴェーラ」をさらいとっている(2020年はカレンダー変更で今回は考慮外)。
こうして近年名実ともにゴージャスな顔ぶれが揃ってきた同大会だが、そんな中でも2021年大会は極上だ。
まずなにより過去3年のツール・ド・フランス総合覇者、すなわちポガチャル、ベルナル、トーマスに、2014年マイヨ・ジョーヌのV・ニバリがやって来る。2人のグランツール勝者(キンタナ、S・イエーツ)に、4人の表彰台経験者(バルデ、ピノ、ランダ、ザカリン)もまた、イタリア行きを選んだ。
あらゆる種目の新旧世界王者も一堂に会する。ロード(アラフィリップ、サガン、クフィアトコフスキ)、個人TT(ガンナ)、シクロクロス(M・ファンデルプール、ファンアールト、シュティバル)、オムニアム(ガビリア、トマ)、ジュニアロード(シモンズ)、ジュニアオムニアム(ユアン)、U23マウンテンバイク(フルサン)。五輪金メダリストさえロード(ファンアーヴェルマート)とオムニアム(E・ヴィヴィアーニ)が揃い踏み。
さらには「未来のグランツールエース」と期待される若手たち。マリア・ローザを15日間着用したアルメイダや、マイヨ・ジョーヌを2日間まとったチッコーネ、元ラヴニール覇者ソレルにフォスに、元ベビージロ覇者シヴァコフに..。今大会を彩るであろう注目選手の名前は、いくら上げても切りがないほど!
こんなチャンピオンたちの真剣勝負は、7年前からプロトンを受け入れてきたティレニア海岸のビーチリゾート、リド・ディ・カマイオーレで幕を明ける。通算1109.1km、全7ステージの特徴は以下の通り。
海神の三叉槍
3月10日(水)第1ステージ
10年ほどチームタイムトライアルで始まってきた初日は、昨季からスプリンターたちの祭典に衣替え。ステージ前半は上りが1つ含まれるサーキットコースを3周回、後半は海辺のほぼフラットコースを2周回。2020年大会でアッカーマンが制した時のコースに少々変更が加えられ、平地周回の距離は少し伸びた。
3月11日(木)第2ステージ
早くも難題に突入だ。なにしろストラーデ・ビアンケの舞台としてもおなじみ、トスカーナ地方特有の細かいアップダウンが、特にラスト50kmに散りばめられている。締めくくりはシエナ近郊の中世都市。勾配こそそれほどきつくはないが、逆に登坂距離は、「丘陵」ステージとしては少々長めだ。
3月12日(金)第3ステージ
前日のフィニッシュ地を逆側からもう1度攻めた後、東へと進路を取る。つまり前半戦にはいくつか起伏が連なる。ただし219kmという長距離コースに、カテゴリーのつく山岳は中盤以降の1つだけ。開催委員会は「その後はフラットです」と解説するが、ラスト2.5kmは、平均勾配2.6%の上り基調。たしかに今どきのスプリンターに、こなせない坂ではないけれど。
3月13日(土)第4ステージ
週末は楽しい難関2連戦。土曜日は148kmと短いコースで、難度は徐々にクレシェンドしていく。スタート直後には小さなアッローネ峠、中盤には中くらいのコルノ峠、終盤には大きなカパッネッレ峠(登坂距離13.8km、平均勾配4.5%、最大9%)。標高1299mの山頂からは、約30kmもの長いダウンヒルも待っている。
美しい景観
そして最後には、さらに巨大なプラティ・ディ・ティーヴォが立ちはだかる(14.6km、7%、12%)。ヘアピンカーブが全部で22あるこの山に、ティレーノ一行が登るのは実に8年ぶり。あの時も同じ4つの上りが使用され、区間はフルームが制した。11秒差で3位に食い込んだニバリは、前年2012年大会で、同じ山を制している。そして、この2大会で総合を制した勇者こそが..ニバリだった。
ところで裏番組パリ〜ニースも、この3月13日の土曜日が最難関山頂フィニッシュ。予定ではフランス側のほうが30分〜1時間ほど早く終了するから、イタリア側のラスト数十分はザッピングせず青ジャージ争奪戦だけに集中できそう。
3月14日(日) 第5ステージ
標高1450mへ向けた難関山岳バトルの翌日は、ティレーノ名物、タッパ・デル・ムーリ、つまり壁ステージ!!
スタートから約100kmは、ついにたどり着いたアドリア海沿いの平坦な直線道路。もしもお天気なら、最高に気持ちの良い日曜日を過ごせそうなものなのだが..もちろん平坦なのは前半だけ。フィニッシュ地カステルフィダルドを起点とした23.6kmの周回コースに入ると、状況は一変する。
それにしても今大会、毎年必ずと言っていいほど、短い激坂を繰り返しよじ登るステージが組み込まれるが、今年の坂もなかなかにエグい。全長1.8kmの坂道のうち、1kmに渡って勾配15%ゾーンが続くのだ。最大勾配は19%!これが全部で4度登場!しかも周回にはこれ以外にも2つの激坂が待ち受けるわけで..つまるところ全部で14回の上り下り。フィニッシュへの上りだって、ライン直前に12%が待つ激坂だ。
3月15日(月)第6ステージ
細かい起伏があるものの、スプリンターにとっては2度目のチャンス。最後は11.2kmの海沿いのコースを4周回。
3月16日(火)第7ステージ
最終日は伝統のサン・ベネデット・デル・トロント。かつてこの場所では、ラインステージが行われてきたが、2011年以降は現行の形に落ち着いた。例年10km前後の「ど平坦」個人タイムトライアルで、マリア・アッズーラの最終的な行方が決する。
ちなみに、この10年間で、最終日に逆転劇が行われたのは2回。ニバリが6秒差からの逆転優勝を果たした2012年と、ログリッチが、アダム・イェーツとの25秒差をひっくりかえした2019年だ。
文:宮本あさか
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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