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サイクル ロードレース コラム 2021年3月10日

【パリ~ニース 第3ステージ:レビュー】22歳の新鋭シュテファン・ビッセガーがWT初勝利&リーダージャージ!「勝てる可能性さえあると分かっていた」

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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シュテファン・ビッセガー

シュテファン・ビッセガー

事前に区間優勝候補として名を挙げられた有名選手たちが、次々とトップタイムを更新していったが、最終的にベストタイムを叩き出したのは、赤丸急上昇中のシュテファン・ビッセガーだった。昨夏にプロ転向したばかりの22歳が、人生初のワールドツアー勝利をつかみとり、総合リーダージャージさえ手に入れた!

「すごく嬉しいし、自分の成し遂げたことが誇らしい。全力を尽くした。フィニッシュラインまで一切手を抜かなかった」(ビッセガー)

真っ先に好タイムで走り終えたのは、ローハン・デニスだった。過去2回、同種目で世界チャンピオンに上り詰めたTTスペシャリストは、「今大会は総合の野心は一切ない」との宣言通り、前区間の最後を流してあっさり2分半以上もタイムを損失。代わりにこの日は全力疾走。フィニッシュ直後には上手く立っていられないほどエネルギーを出し切ると、17分47秒64で暫定首位についた。

続いてホットシートに座ったのがセーアン・クラーウアナスンだ。1年前のパリ〜ニースで15.1kmの個人TTを勝ち取り、ラインステージの勝利方法はたいていが10km前後の独走逃げ切り..という強脚ルーラーは、14.4kmをアグレッシブに攻め続けた。この時点で3秒リードでフィニッシュ。

アワーレコード保持者で、昨ジロの最終TT15.7kmでは現役世界王者フィリッポ・ガンナの後・デニスの前、という好順位におさまったヴィクトール・カンペナールツは、まさかの失速。「クラシックに向けてフィジカル改造したせいで、TT能力が退化してしまった」と事前に関係者に漏らしていたという。最終的に30位で1日を終えた。

プリモシュ・ログリッチ

プリモシュ・ログリッチ

一方で世界屈指のグランツールレーサーへと進化し、モニュメント獲りさえ達成したプリモシュ・ログリッチの、TT能力はまるで退化していない。クラーウアナスンを4秒上回るタイムを計測。つまりこの日だけでチームメートで同じく総合エースの1人、ステフェン・クライスヴァイクを14秒、総合ライバルのアレクサンドル・ウラソフを16秒、テイオ・ゲイガンハートを38秒突き放した。翌ステージからいよいよ始まるアップダウンバトルの前に、早くも総合でも3位に浮上した。

レミ・カヴァニャにとっては、またひとつ新たな失望が増えた。昨夏念願のフランス国内選TTを制した後、常に「TTを勝ちに行く」と周囲に宣言するが、いまだ仏チャンピオンジャージ姿で勝利を手にすることができずにいる。「クレルモンフェランのTGV」はこの日も野心的に大ギアを回した。ログラの記録を、約6秒も塗り替えた。

...しかし4人後に出走したビッセガーに、あえなく首位の座を奪われた。わずかコンマ83秒差で!

「コンマ差で負けるなんて、腹が立つよ!でもいい走りが出来たし、そのことに関しては満足だ。あちこちでタイムを失ったことはよく分かってる。特に最終コーナーの直前に前走者に追いついたから、そこで予定よりブレーキをかける必要があったんだ。でも、これが、自転車レースなのさ」(カヴァニャ)

マイケル・マシューズ

マイケル・マシューズ

またビッセガーの3人後に走ったブランドン・マクナルティは、暫定首位に立つ機会こそなかったものの、最終的に区間5位の快走。スプリンターの多くがのんびり流し気味に走ったのに対して、この日最後に出走した2人の俊足、マッズ・ピーダスンとマイケル・マシューズは気迫を見せた。残念ながらマシューズはわずか1日で黄色いジャージを脱ぐ結果となってしまったけれど、総合ではいまだ9秒差につける。

こうして並み居る有力者を押しのけて、「プロ入り後」初めての勝利&リーダージャージを一挙に手に入れたビッセガーだが、プロレベルでの栄光は初めてではない。2019年、母国スイスの育成チーム「スイス・レーシング・アカデミー」に所属していた際に(2020年からはあのファビアン・カンチェラーラがアドバイザーとしてチーム参画)、ツール・ド・ラン初日の集団スプリントでプロたちをまとめてなぎ倒した。しかも同大会のジャージも黄色だから(少々トーンは違うが)、マイヨ・ジョーヌは初体験ではないのだ!

個人タイムトライアルの高い才能も、すでにあちこちで披露していた。昨秋プロ転向直後のブリンクバンク・ツアーでは、約8kmの全力疾走で、クラーウアナスン、世界選個人TT銅メダルのシュテファン・キュンクに次ぐ3位に食い込んだ。今2月のUAEツアーの、13kmの平坦TTでは、現世界王者ガンナに次ぐ2位だった。

「たしかに驚いてる。でも、コースが短いから、僕向きだったんだ。いい走りができると確信していたし、表彰台も目指していたし、勝てる可能性さえあると分かっていた。でも、レースが始まる前に、勝てる、とは言えないからね」(ビッセガー)

今年から日本企業のNIPPOがスポンサードするEFエデュケーション・NIPPOにとっては、2021年初勝利。実は今大会に参戦する23チーム中で、今チームだけが「真っ白」なチームバスでレース会場に乗り付けているのだが..つまりチームのシーズン準備が整うよりも早く、嬉しいニュースが舞い込んだことになる。

ちなみにNIPPOつながりで言うと、ビッセガーが2019年に所属していたチームのチームマネージャーは、マルチェロ・アルバジーニ氏が務めていた。そもそも同氏は、ビッセガーが10歳の頃からのコーチでもある。2019年世界選U23銀メダル獲得時に、ビッセガー本人も「マルチェロが僕に自転車競技のすべてを教えてくれた」と語っている。

そして息子のミヒャエルの昨季末での引退に合わせ、マルチェロ氏はスイス連盟関連の仕事を息子に引き継ぎ..今年からEF・NIPPOの育成組織、NIPPO・プロヴァンス・PTSの監督に就任した。つまり日本の織田聖も所属するチームの未来も、「まだ自分がどういう選手に進化するのかまったく分からない。でも、確実に、進化してきたい」と語るビッセガーの将来も、なんだか非常に楽しみなのだ。

文:宮本あさか

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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