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サイクル ロードレース コラム 2021年3月8日

【パリ~ニース 第1ステージ:レビュー】昨ツールのマイヨ・ヴェールがデマールもアッカーマンもピーダスンもまとめてねじ伏せた!サム・ベネット「ひどく神経を使う戦いだった」

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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サム・ベネット

初日スプリントを制したサム・ベネット

ぎりぎりのタイミングで、どこからともなく現れて、ラスト100mで最前列をさらった。圧倒的な速さでサム・ベネットが初日スプリントを制し、黄色い総合リーダージャージと緑のポイント賞ジャージも手にれた。

「マイヨ・ジョーヌを着用できて嬉しい。僕が総合優勝することはないけれど、1日でも、2日でも、総合首位に立てるなんてスペシャルなことさ」(ベネット)

前日は強風が吹き荒れ、明け方にはマイナス5度にまで冷え込んだ。しかし色とりどりのチームバスが、2021年パリ〜ニース開幕地に集結する頃には、春の暖かな空気がスタートエリアを包んでいた。

それでも新城幸也は「寒い!」と声を上げた。「だって代表合宿で沖縄に行ってましたからね」と語る東京五輪日本代表は、例年のようにタイで練習を積むことはできなかったが、おかげでいつもとほぼ同じ状態まで身体は絞り込めているとのこと。わずか2日前に日本から欧州入りしたばかりでも、時差ボケは「いつもどおり」特に問題なし。肝心の脚の調子は「分かりません。まあだめでも、1週間もがきますよ!」と語り、2021シーズン初戦へ飛び出していった。

8日間の戦いを、プロトンは静かにスタートすることに決めた。序盤からたった1人で逃げ出したファビアン・ドゥベの背後で、スプリンターチームは淡々とコントロールに励んだ。タイム差は最大5分程度。おかげでドゥベは、ずっと夢だったツールの赤玉ジャージの「ミニチュア版」を、ステージ終了後に羽織ることができた。また序盤2つの山岳ポイントではジュリアン・ベルナールも積極的にポイント収集に励み、最初のスプリントポイントはマイケル・マシューズが獲りに行った。

「逃げが1人の時は、かなりコントロールは簡単だった。前列に制御役を1人置いて、僕らチーム全体も常に前方に留まるよう心がけた」(アルノー・デマール)

平穏な日曜日に小さな異変が起こったのは、フィニッシュ手前約54km。タイム差がついに1分を切ったタイミングで、フィリップ・ジルベールが同僚ステファノ・オルダーニと共に飛び出したのだ。すかさずアントニー・ペレスとクリストファー・ローレスも同調。しばらく先でドゥベを回収しつつ、5人は毅然と前方へと突き進む。

すぐに30秒ほどの差がついた。名クラシックハンターが率いる先頭集団を警戒し、プロトンは追走スピードを上げた。自ずと集団内の緊迫感も増していく。

しかも今ステージ3つ目の山岳に差し掛かると、今まで以上に多くのスプリンターチームが前方へと詰めかけた。至極当然のようにいくつかの落車が引き起こされ、フィニッシュ手前33kmでは、リッチー・ポートが地面に転がり落ちた。

「オーストラリアから帰ってきたばかりだから、自分の調子がどの程度なのかまるで分からない」と開幕前に語っていたポートは、すぐには戦いを諦めなかった。走り出した後に一旦自転車から降りたものの、左腰の強い痛みをおして、再びサドルにまたがった。しかし最終的に途中棄権。過去区間5勝・総合2勝を上げた思い入れの強い大会を、初日で去ることになった。

執拗に置い続けたプロトンは、4つ目、つまり最後の山岳の入り口で無事にジルベール一行の吸収完了。しかも27kmに渡る努力を終えた途端に、スプリンターチームたちは最前列に蓋を締めた。誰も前に出さぬよう、上りでエースを脱落させぬよう、落ち着いたリズムを刻んだ。

山越え後にはまたしてもロット・スーダルが前方に人員を放つも(コービー・ホーセンス)、今度はどこも動こうとはしなかった。もちろん集団は、2度目の中間スプリントが来る前に、きっちり逃げを握りつぶした。むしろその緑ジャージ用ポイントとボーナスタイムを巡る数人のスプリントが、レースに再びちょっとした刺激を与えることになる。

マシューズがティシュ・ベノートとの競り合いを制した直後に、ロットが3度目のアタックを試み……その隙を突くように、ピエール・ラトゥールが矢のように飛び出した。残り15kmですばやく出来上がった7人の小集団には、ただしドゥクーニンクやトレック等々、いくつものスプリントチームが監視役を送り込んでいた。「守備的に走るのはもうイヤ」と新天地に移ったフレンチクライマーは、念願どおり攻撃的に突進を続けたが、集団内での協調はまるで取れぬまま。タイム差は一向に開かない。

さらにはアレクサンドル・ウラソフが、ルイスレオン・サンチェスと連れ立って前へと走り出るも、ささすがの総合優勝候補を集団は遠くへ逃そうとはしなかった。

残り10kmで集団は完全にひとつになった。ここから先はスプリンターチームの隊列の競い合いの時間だ。いくつもの隊列が並び、激しく陣地を競い合う。日本の新城も、最前列を堅守し、バーレーン列車を引っ張った。

一方でウルフパックの姿は完全に消えた。なんでも残り15km、つまり中間スプリントからラトゥール攻撃の混乱で、スプリントエースのベネットが集団後方に取り残されてしまったのだという。グルパマとトレックが中心に主導権争いを繰り広げる背後に、ドゥクーニンクの青いジャージがようやく見え隠れし始めた頃には、すでに残り距離は1.5kmを切っていた。

サム・ベネット

イエロージャージに袖を通したサム・ベネット

「でもチームメートが僕を乗っけていってくれた。ミカエル(モルコフ)は常に冷静で、いつだって僕をあるべき場所まで導いてくれるんだ。チームは素晴らしかった」(ベネット)

残り1kmのアーチを先頭で抜けたのはグルパマ隊列だった。そのグルパマのアシストを含む数人の落車で統率が乱れた隙を突いて、ラスト500mからはボーラ・ハンスグローエが急激に駆け上がった。両チームエースのアルノー・デマールとパスカル・アッカーマンが、激しくスプリントを争った。ところが、ついに浮上を果たし、残り500mでマッズ・ピーダスンの後輪についていたベネットが、すかさずアッカーマンの背中に飛び乗る。さらには残り100mで、一気にトップスピードに切り替えた。

「攻撃に転じられる時まで、じっと待たなければならなかった。ひどく神経を使う戦いだった。まずはアッカーマンとの穴を埋めて、そこから全力を尽くした」(ベネット)

昨ツールのマイヨ・ヴェールが、昨シーズン最多14勝のデマールも、ブエルタ2勝のアッカーマンも、一昨年世界チャンピオンのピーダスンもまとめてねじ伏せた。ベネットにとってはパリ〜ニース通算4勝目。イネオスのガンナと、チームメートのバッレリーニに続き、今シーズン早くも3勝目を手に入れた。

デマールは区間2位、ピーダスンが3位につけた。アッカーマンは次々と抜かれ、最終的に6位で1日を終えた。2度の中間ポイントでボーナスタイムを収集したマシューズは、区間は17位に沈んだが、総合では5秒差の3位につける。

文:宮本あさか

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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