人気ランキング

J SPORTS IDを登録すれば、
すべての記事が読み放題

J SPORTS IDの登録(無料)はこちら

メルマガ

お好きなジャンルのコラムや
ニュース、番組情報をお届け!

メルマガ一覧へ

コラム&ブログ一覧

サイクル ロードレース コラム 2021年2月10日

「自信を持って最初のレースに挑みたい」中根英登インタビュー

サイクルロードレースレポート by 辻 啓
  • Line

中根英登選手

「チームのカテゴリーは上がってもやることは一緒。自分のコンディションを作って、できるだけ多くのチームの勝利に貢献するということは、どのカテゴリーのチームにいても変わらないですね」。ロードレースの最高峰カテゴリー、UCIワールドチームの一年生として21年シーズン開幕を迎える中根英登は、渡欧を直後に控えたインタビューの中で、普段と変わらない口調でそう話した。

愛知県生まれの30歳、中根はこれまでのキャリアの中で着実なステップアップを見せてきた。中京大学在学中にチームNIPPO入りしてヨーロッパレースを経験し、愛三工業レーシングでの3年間を経て17年にイタリアのNIPPO・ヴィーニファンティーニ入り。以降3年間イタリアに拠点を置いて活動してきた。19年には国内最高峰レースのジャパンカップでアジア人選手最高の6位に入っている。

ツール・ド・ランカウイ ステージ優勝

フランスのNIPPO・デルコ・ワンプロヴァンスに移籍した20年シーズンはアップダウンの連続だった。マレーシアで開催されたシーズン初戦のツール・ド・ランカウイで早速ステージ優勝を飾ってみせたが、その後は例に漏れず新型コロナウイルスの感染拡大に振り回され、さらにチーム内部の決裂という憂き目に合う。10月12日にスペインで開催されたレースの結果を受けて東京五輪ロードレースの出場を僅差で逃したが、そのわずか数日後に、UCIワールドチーム移籍というニュースで日本ロードレース界を騒がせた。

「プロスポーツ選手である以上は、一番上のカテゴリーに所属したいという気持ちはありました。他のチームともコンタクトをしていたんですが、話がまとまらず、半ば諦めていたタイミングでこの移籍の話をもらったので、正直びっくりした」。中根はスポンサーの株式会社NIPPOとチームメイトの別府史之、マッサージャーの坂本拓也、メカニックの南野求ともに、EFエデュケーション・NIPPOの一員となった。

レースでの中根選手

レース活動開始は2月中旬からの予定だが、新チームとの連携は移籍後すぐにスタート。新しいバイク、新しいウェア、新しいトレーニングコーチとともにシーズンインに向けて準備を進めてきた。

「もともと体重は増えないタイプで、オフシーズンに入った瞬間に暴飲暴食しても体重増は最大で3kg弱ぐらい。ここ最近トレーニングがハードだったので、いい感じに絞れています」という中根は、すでに痩けつつある頬を撫でる。「トレーニングの内容はEFチームのトレーニングコーチが決めてくれています。こっちからトレーニングデータを送ると、それを踏まえたトレーニングメニューが送られてくる。めちゃくちゃきつい日もあるけど、レスポンスも良くて、今のところ順調にトレーニングをこなせている。コンディションも上がっているし、コーチとの相性はいいと思います」。

ロードバイクはこれまでのリムブレーキ仕様からディスクブレーキ仕様に。バイクの変化は走りに大きな影響を及ぼすが、中根はすっかり順応できている様子。むしろ「語彙力がなくて申し訳ないんですけど、感動的に速いです。ディスクブレーキになって、下りとコーナーの安定感、安心感が違う。剛性も違うし、自分でも驚くほどラインが決まる」と、こちらも相性の良さが伺える。

中根英登 選手インタビュー | 辻啓のワールドチームに所属する日本人選手に話聞いちゃいました。

イタリアとフランスでの生活を経験してきた中根が21年に生活の拠点を置くのはスペイン。英語圏からの移住選手も多いカタルーニャ州のジローナでシーズンの大半を過ごすことになる。「知り合いが多いイタリアに拠点を置くことも考えたんですが、チームスタッフの勧めで、チームの倉庫とオフィスがあるジローナに決まりました。選手が集まるということは良い環境のはず。新しい街で、新しい生活をするのが楽しみですね」。

総勢30名、実に15カ国の選手たちが所属するチームの公用語は英語。語学学校のEFエデュケーションファーストがメインスポンサーにつくチームだけに、チーム加入決定後から中根はオンライン英会話のサポートを受けてきた。「チームオーダーやミーティングの英語はギリギリ大丈夫かなというレベル。イタリア語のほうが楽ですね。ちなみにチームのイタリア人選手はアルベルト・ベッティオルだけなので、もうちょっと(人数が)いて欲しかったという気持ちです。イタリア人がいると輪に入りやすいんですよね。あと(イタリア語と似ているので)スペイン語は雰囲気で(笑)」と、日本人選手が抱えがちな語学的なストレスについては心配なさそうだ。

かと言って順風満帆の門出とは言えず、中根はビザの申請に手を焼いた。「EU(ヨーロッパ連合)圏内のビザを取るのはこれが3カ国目ですけど、コロナの影響もあって今回が一番大変でした。これまでフランスとイタリアの長期滞在歴があったので、それぞれの国の無犯罪証明書を警察署で取らないといけなくて。フランスはウェブ申請で郵送してもらえたんですが、イタリアは現地に行って現地で取得しないといけない。でも代理人による取得も可能と書いてあって、ヴィーニファンティーニ時代のスタッフにお願いしました。スペインに到着してから警察署で最後の手続きをしないといけませんが、とりあえずほっとしました」と中根は胸を撫で下ろす。

今シーズン、新型コロナウイルスの影響でシーズン入り前のトレーニングキャンプを実施できないチームが相次いだ。EFエデュケーション・NIPPOも、フランスの初戦に出場するメンバーに限定したミニキャンプを実施したものの、メンバー全員が顔を合わす機会を設けることができず。「通常であれば11月や12月にトレーニングキャンプがあるんですが、まだチームメイトに会ってないのでチームの雰囲気もわかりません。全体で顔を合わせていないのでまだチームに加わったという実感が薄いですね。昨年スペインの最終戦を制したサイモン・カーや、今シーズン初戦でトップ10に入ったジュリアン・エルファレも一緒に移籍しますが、元チームメイト以外に、これまで交流したことのある選手は他にいない。転校生が新しい学校に行くような気持ちです(笑)」

シーズン前半の暫定的なレーススケジュールを受け取っている中根は、スタートダッシュを決める準備ができている。「転校生は最初が肝心だと思っています。移籍したばかりですし、初戦、2戦目から自分のいいところを出していかないといけない。今のところスケジュールに入っているレースは、昨年とそこまでレベルが変わらないという印象です。UCIワールドツアーのレースを立て続けに走るわけではなく、ヨーロッパの1クラスやHC(UCIプロシリーズ)のレースから走れるので、シーズン後半の良いレースに呼ばれるためにも、自分の持ち味が発揮しやすい環境だと思います」。

トレーニング中の中根選手

「それに、まだ選手の中でコンディションのばらつきがあるシーズン序盤に、コンディションを整えるのが得意なのかなと毎年感じています。2019年は(2月の)南米のアルゼンチンとコロンビアのレースで、UCIワールドチームがいる中、立て続けにステージトップ10の成績を残せましたし、2020年はランカウイでステージ優勝。確かにトップカテゴリーのチームなので、どれだけ準備しても不安が消えることはないですが、コーチと連携をとってコンディションを作っているので、自信を持って最初のレースに挑みたいですね」。

「一番大事なのは、与えられた仕事を確実にこなすこと。背伸びしてもしょうがない」。大学、UCIコンチネンタルチーム、UCIプロチーム(元UCIプロコンチネンタルチーム)、UCIワールドチームと階段を登ってきた中根だけに、その言葉には説得力がある。「データを見ても、毎年ベストを更新し続けています。バイクが変わったりコーチが変わったりしますが、自分をフィットさせることができている。順調に上がってきているので、早く力を試したい。気負わずに頑張っていきたいなと思っています」。

中根選手

「4年ぶりにこの時期も日本にいるので家族も喜んでいます」と、渡航前の家族との貴重な時間を割いてインタビューに応えてくれた中根は2月7日にスペイン入り。無事にチームと合流して、いよいよUCIワールドツアーレーサーとしての本格的なレース活動が始まる。

文:辻 啓

代替画像

辻 啓

海外レースの撮影を行なうフォトグラファー

  • Line

あわせて読みたい

J SPORTS IDを登録すれば、
すべての記事が読み放題

J SPORTS IDの登録(無料)はこちら

ジャンル一覧

J SPORTSで
サイクル ロードレースを応援しよう!

サイクル ロードレースの放送・配信ページへ