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【Cycle*2020 パリ~トゥール:プレビュー】新しいアイデンティを手に入れた伝統のレースにバルデやバルギルらクライマーも参戦!
サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか2019年大会で優勝したロット・ソウダルのワライス
たとえ全長2600mの自慢の「クラシックで一番長い最終ストレート」が、2011年から800mに縮まったとしても、パリ〜トゥールが「スプリンターズクラシック」であることに変わりはなかった。それが大集団であれ、2人の一騎打ちであれ、必ずスプリントで勝負は決してきた。「独走」を成功させたのは、2001年大会のリシャール・ヴィランクが最後だったし、それでも逃げ切りの背後では、常に大きな集団スプリントが繰り広げられてきた。
しかし、2018年、大会はこの「スプリンターズ」の枕詞を捨てた。途端に、2年連続で、勝者はフィニッシュラインへとたった1人で飛び込んだ。背後で大きな集団スプリントさえなし。つまり110年以上の歴史を誇るパリ〜トゥールは、全く新しいアイデンティティを手に入れた!
2017年までパリ〜トゥールの難関と言えば、パリからロワール川流域へと一直線に南下していく道に吹き付ける「風」だった。秋の風は時に強く吹き荒れ、シーズン終わりの疲れた選手たちの体力と気力を否応なしに削ったものだ。
(ちなみに2020年10月11日(日)の天気予報は雨。スタート時の気温は10度以下で、午後も12度程度までしか上がらない。風はそれほど強くないものの、東からの風が常に吹き付ける)
2年前からはこの「風」に加えて、新しい難関が加わった。それが213kmのコース上の最終50kmにぎゅと詰め込まれた7つの短い急坂であり、「Chemins de Vigne(シュマン・ド・ヴィーニュ)」、つまり「ぶどう畑の小道」だ!
繊細なヴヴレー発泡白ワインや軽やかなトゥレーヌ赤ワインの産地であるこの一帯は、良質な粘土・石灰質の土壌を有していると言われるけれど……自転車にとっては難題だ。メカトラを誘発する小砂利、常にトラクターが往来するせいでがたがたの表面。天気が良ければ砂埃が舞い散るし、雨ならドロドロになる。
ロワール渓谷に点在するかつての王侯貴族たちの城と、おいしいワイン。フランスにとってこの上ない観光プロモーションレースに、2020年は22チームが参加する。新型コロナウイルスによるシーズン再編成で、同じ日にジロ・デ・イタリアとヘント〜ウェヴェルヘムが予定されているため、残念ながらワールドチームは昨年の半分4チームしか参加できない。
ただ極めて興味深いのは、この奇妙なスケジュールのせいで、元スプリンターズクラシックに……今やストラーデビアンケやフランドルクラシックにも負けない強くたくましいルーラースプリンターたちの戦場に、クライマーたちもやって来ること。ブライアン・コカールやナセル・ブアニといった俊足や、2年前の大会覇者であり今ツールで2度の独走勝利をさらったセーアン・クラーウアナスンに混じって、なんとロマン・バルデとワレン・バルギルが走る!
あのエディ・メルクスやベルナール・イノーさえ、それぞれ7回参加して1度も勝てなかったある意味で鬼門だ。もちろん2001年に、240kmの大逃げを成功させたヴィランクのように……山岳巧者にだってパリ〜トゥールの栄光をつかみ取る権利は十分にある。
文:宮本あさか
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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