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【Cycle*2020 リエージュ~バストーニュ~リエージュ:プレビュー】2020年に狙うべき最後のワンデービッグタイトル!アラフィリップ、ポガチャル、ログリッチ、ポートが勢揃い!
サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか2019年大会でフィニッシュするヤコブ・フルサン
いつもなら春のクラシック月間のトリを飾る。1892年に誕生した最古のモニュメント「ラ・ドワイエンヌ(最古参)」にふさわしい、大切な立場を任されている。ただし新型コロナウイルスの影響でカレンダーが大きく書き換えられた今年、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュの役割は少々異なる。
予期せずして、アルデンヌクラシックの最終戦となった。本来ならば6日後にアムステル・ゴールドレースが予定されていた。しかし政府が新たに打ち出した対コロナ措置により、残念ながら9月30日に中止に追い込まれてしまった。この先はもはや石畳大戦か、いわゆる「スプリンターズ」しか残されていない。もちろん本来ならアルデンヌ前哨戦であるはずのブラバンツパイル(プロシリーズ)が、直後の水曜日に開催されるが、格の違いは否めない。またジュリアン・アラフィリップのように、石畳の激坂戦ツール・デ・フランドルに足を伸ばす起伏巧者もいなくはないが、あくまでも挑戦者にすぎない。しかも例年シーズンの大トリであるはずのイル・ロンバルディアは、今年は「落ち葉のクラシック」の立場を放棄して、8月にさっさと済ませてしまった。
純粋なるパンチャーやクライマーにとって、つまりリエージュは、2020年に狙うべき最後のワンデービッグタイトルなのだ。
道はリエージュから南下し、バストーニュで折り返すと、北上して再びリエージュを目指す。全長257kmのコースは、だたひたすら無数のアップダウンの繰り返し。中でも大きな名のある上りは全部で11。特に最終100kmに9つの上りが立て続けに登場する。
最初の大きなセレクションが起こるのは、やはり山頂にエディ・メルクスの石碑が立つストクー(残り79km、登坂距離1km、平均勾配12.9%)とオート・ルヴェ(残り73km、登坂距離3km、平均勾配5.9%、序盤500mは9.6%)の連続登坂だろうか。伝統の勝負坂ラ・ルドゥットは残り36km地点(2.1km、8.5%、中盤に500mの13%ゾーンあり)で、昨大会5年ぶりに復活したフォルジュは残り24km(1.3km、7.8%)で、戦いの激化を煽る。
起伏バトルの締めくくりには、ラ・ロシュ・オ・フォーコンがそびえ立つ。1.3kmと短い坂道だが、平均勾配は11%。しかも中盤には13.2%の難ゾーンが500mも続く。スタートからフィニッシュまで「ほぼ」同じコースが描かれた2019年大会では、この坂の「てっぺんをフィニッシュに見立てて全速力で駆け上がった」というヤコブ・フルサンが、そのまま本物のフィニッシュラインまでひとり先頭で駆け抜けている。
ただし1年前のコースとは、実は、このてっぺんからフィニッシュまでの道のりだけがほんの少し違う。昨年フィニッシュ地は28年ぶりにリエージュ市内に回帰し、ムーズ川の西岸アルヴォワ地区で勝負が決したのだが、今年はムーズ川の左側のヴェンヌ地区へ向かう。つまりラストが「街中の平坦路」であることに変わりはないものの、2019年が4kmだったに対して、2020年は2.5kmとわずかに減った。
このめくるめく起伏バトルは、ただでさえ威厳の高い世界5大モニュメントレースの1つであるというのに、今年はより一層プレミア感が強い。なにしろ1週間前に世界王座に駆け上がったアラフィリップのアルカンシェルジャージお披露目大会にして、2週間前に幕を閉じたツール・ド・フランスの総合上位3人(タデイ・ポガチャル、プリモシュ・ログリッチ、リッチー・ポート)が勢揃いするのだ。
もちろんほやほやのフレッシュ・ワロンヌ覇者マルク・ヒルシも、2位ブノワ・コヌフロワ、3位マイケル・ウッズも、さらに高い栄光を求めて乗り込んでくる。一方ではちょっと休憩してる間に22歳の若造に自分の庭(ユイの壁)を荒らされたフレッシュ5勝アレハンドロ・バルベルデは、40歳でリエージュ5勝目という大快挙を目論んでいるに違いない。バルベルデと同じく元世界王者のミハウ・クフィアトコフスキは、ツール終盤の感動的な区間勝利から好調さを保っているし、ツールで思い通りの走りができなかった元リエージュ覇者ダン・マーティンは、フレッシュで完全復調を匂わせている。
そう、8月末からツール・ド・フランス→世界選手権→フレッシュ・ワロンヌと起伏コースにせっせと励んできた選手にとって、ここリエージュが一旦区切りの大会となる。ポートのように、この日を最後に、オフシーズンに入る選手もいるかもしれない。もちろんログリッチやバルベルデのように..ほんの2週間の短い休養を挟んで、ブエルタ・ア・エスパーニャへと向かう疲れ知らずもいるのだ!
文:宮本あさか
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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