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サイクル ロードレース コラム 2020年9月28日

【Cycle*2020 フレッシュ・ワロンヌ:プレビュー】マイヨ・ジョーヌのタデイ・ポガチャルやリッチー・ポートも参戦予定!激坂合戦を制するのは誰だ!?

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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フレッシュ・ワロンヌ

フレッシュ・ワロンヌ

ユイの壁はいつだってそこにある。全長1.3km、平均勾配9.6%、最大勾配26%。クラシック屈指の激坂が、変わらず道の果てに立ちはだかる。しかも3度も。

ただし2020年に限っては、その装いは、ほんの少し異なる。いつもなら春の美しき緑が萌えるアルデンヌの丘陵地帯も、今大会は、すっかり秋模様。新型コロナウイルスの影響によるシーズン中断により、4月22日(水)から9月30日(水)へと日程が変更された。つまり、いつもなら「落ち葉のクラシック」が行われる前後であり..冷たい長雨が降り続く季節でもある!

大会へと向かう流れだって、当然、違うのだ。例年ならたいていの選手が、3月上旬からパリ〜ニースやティレーノ〜アドリアティコ、もしくはカタルーニャ一周かバスク一周やら1週間ほどのステージレースを2つほど脚に蓄えた後に、アルデンヌクラシック3連戦へ軽やかに乗り込んでくるものだ。ところが今回は、むしろツール・ド・フランスで3週間の激闘をくぐり抜けた選手たちが、スタートラインに並ぶ。

9月27日現在の出場リストによれば、なんとマイヨ・ジョーヌほやほやのタデイ・ポガチャルを筆頭に、ツール総合トップ10のうち8人(リッチー・ポート、ミケル・ランダ、ミゲルアンヘル・ロペス、トム・デュムラン、リゴベルト・ウラン、アダム・イェーツ、ダミアーノ・カルーゾ)が、壁よじ登り合戦に乗り込んでくるらしい。さらにはスーパー敢闘賞のマルク・ヒルシや、区間勝利でにぎわせたダニエル・マルティネスやレナード・ケムナ、ミハウ・クフィアトコフスキもやってくる。

そもそも大会前の日曜日に行われたのは、いつものアムステル・ゴールドレースではない。世界選手権である!

つまり2020年のフレッシュ・ワロンヌは、起伏→石畳といつもとは逆順で進む秋のクラシック月間の初戦であり、なにより世界チャンピオンの証「アルカンシェル(=虹)」を初めてお披露目する場になるはずだった。なにを隠そう、新世界王者こそ、今大会2連覇中のジュリアン・アラフィリップなのだから。

しかも、現役世界チャンピオンがもしもユイの壁のてっぺんで輝くことができれば、2010年大会のカデル・エヴァンス以来10年ぶりの快挙となる。

ただ残念ながら、世界選を勝ち取った当夜に、アラフィリップ本人が「肉体的・心情的に回復するためには、フレッシュ・ワロンヌ出場は最善の選択ではない」と宣言。10月4日リエージュ〜バストーニュ〜リエージュからの参戦をほのめかしている。

また2018年の世界王者にして、フレッシュ・ワロンヌ史上初の4連覇5勝を成し遂げたアレハンドロ・バルベルデも、やはり現段階では欠場予定。世界選8位の奇跡の40歳は、「秋の」クラシックにはリエージュから走りだす予定だ。

ちなみにリエージュ郊外のエルヴから走り出すコースは、5年ぶりに全長200kmを超える。全部で10の上りが組み込まれ、うち9つはレース後半。つまりレースが進むに連れて、強度も興味もクレシェンドしていく仕組みだ。しかも後半の9つの上りは、単純に全長32kmの周回コース(エレフ坂→シュマン・デ・ギーズ坂→ユイの壁)×3という内訳となる。

そう、2015年からユイ登坂前に組み込まれていたシュラーヴ坂(1.7km、平均勾配6.6%)は姿を消し、代わりにシュマン・デ・ギーズ坂(1.8km、6.5%)がプロトンの脚を試す。畳み掛けるように繰り返される小峠が、着実に選手たちの脚を削っていくはずだ。

それでも、やっぱり、勝負を決めるのは「チャペルの小道」に違いない。道端に6つの小さな礼拝堂が並ぶ壁のような激坂は、特殊な2020年シーズン、いまだ栄光に飢えた選手たちの勇壮な走りを待ちわびている。

文:宮本あさか

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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