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サイクル ロードレース コラム 2020年8月25日

【フランス選手権:レビュー】アルノー・デマールが文句なしのフレンチトリコロール奪取「ほぼ完璧なレース。なにより団結の勝利」

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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アルノー・デマール

アルノー・デマール(写真中央)

圧倒的なチーム力と、圧倒的な個人力。まさに誰にも文句を言わせないやり方で、グルパマ・FDJとアルノー・デマールは、本命としての責任を全うした。青白赤フレンチトリコロールに対する敬意の念と、強い執着心との、見事な結晶だった。

「ほぼ完璧なレース。なにより団結の勝利だよ。まずは若手が全力で仕事をしてくれたし、最終盤にはベテランが戦術的に動いてくれた」(デマール)

たしかに人数的には最多だった。実はワールドチーム選手だけならたったの13人なのだが……(アルケア17人、トタル16人、AG2Rの16人と比べれば、「たったの」である)、グルパマには同じジャージをまとい、同じチーム名を冠するコンチネンタルチーム所属の4選手がいる。つまり「若手」たちが、先輩エースのために、若い力を惜しみなく費やした。1日中メインプロトン前方で集団コントロールに励み、特に終盤に危険な16人の逃げが出来上がると、熱心に隊列を牽引。残り5kmできっちり回収した。

たった2人ですべてに立ち向かった、勇敢な男たちもいた。ベルギー籍ドゥクーニンク・クイックステップ所属のジュリアン・アラフィリップとフロリアン・セネシャルだ。後半すでに何度も集団に揺さぶりをかけていた後者は、逃げ吸収と同時にとてつもない加速を開始。まるで猛牛のように突き進み、集団をあっという間ニーヴらばらに切り裂くと……ラスト4kmの坂道でアラフィリップを前方へと解き放ったのだ!

ナショナル選手権は無線使用が許可されていない。するとスタート前に監督たちがいかに入念な作戦を練り上げようが、現場で頼りになるのは「ベテラン」たちの判断だ。そして2018年フランス王者のアントニー・ルーの助言「アラフィリップがアタックしたら、ついていけ。チームが連れて戻れるかどうかは、もはや確実じゃない」が、デマールの背中を押した。

世界屈指のパンチャーは、弾けるようなアタックで一気に距離を開くも、重量級スプリンターは、じわり、確実に、間隔を狭めていく。背中にブライアン・コカール、つまり上れるスプリンターがぴったり張り付き、しかも協力する素振りさえ見せなかったが(「勝ちたいなら駆け引きをしなきゃならなかった」)、構わず前を追った。

数キロ先でとらえたアラフィリップが、フラムルージュ直前で最後のアタックに出た時も、やはりデマールはためらわなかった。ラスト500mまで2人の発射台を残していた2014年大会や2017年大会とは状況が違った。それでもシーズン再開後の6レースで上げた3勝のおかげで(初戦ミラノ〜トリノ、ツール・ド・ワロニー2区間)、自分の調子には絶対的な自信があったし、なにより冷静でいられた。

「すべての条件が、最高の状態で揃っていたんだ」(デマール)

最後のスプリントは、ひたすら力強く。真っ先に仕掛けたアラフィリップを抜き去り、必死に追い上げるコカールに一瞬たりとも先行を許さず、力技でデマールがすべてをねじ伏せた。

フランス人の現役選手としては最多3枚目のナショナルチャンピオンジャージ。勝利の3日後に29歳の誕生日を迎えるフランスナンバーワンスプリンターが、ジャン・スタブリンスキーの史上最多4勝に並ぶ機会は、つまりまだまだたっぷり残っている。しかもグルパマ・FDJと……この9年間で7枚ものチャンピオンジャージを収集してしまったフランス選手権専門家軍団とは、2023年まで契約済み!

それにしても2012〜2020年で7勝というと、2012〜2019年でツール・ド・フランスを7回制しているイネオス並の独占状態である。普段はシャイなのに自分のチームのことになるとたがが外れてしまう名物GMマルク・マディオの雄叫びは、今年もまた繰り返され、こだわりの「スポンサー名のないレトロでシンプルなマイヨ・トリコロール」が、きっと今年も誇らしげに披露されることだろう。

残念ながら青白赤のフレンチナショナルジャージは、2020年ツール・ド・フランスでは見られない。シーズンの最初からジロ・デ・イタリア行きに決めていたから、デマールがツールを走る予定はそもそもない。また個人タイムトライアルナショナルチャンピオンのレミ・カヴァニャも、ツールには出場しない。

幸いなことに、たくさんの国のたくさんのチャンピオンジャージが、2020年フランス一周に集結する。また世界チャンピオンの証、虹色を身にまとうロード マッズ・ピーダスンも、黄ジャージ争奪戦に素敵な色彩を加えにやってくる。もちろんだ。

ただ2020年にナショナル選手権が行われた国、ロードだけ、もしくはTTだけ行われた国、開催中止で2019年大会勝者がそのままチャンピオンジャージを着続ける国etc…と、新型コロナウイスルに翻弄されたシーズンだけに条件は様々だけれど。

<ツール出場予定のナショナルチャンピオンたち>
・スロベニア ロード:ログリッチ、TT:ポガチャル
・スイス 2019年ロード:ライヒェンバッハ、2020年TT:キュング(2020年欧州TT)
・南アフリカ ロード:ギボンズ、TT:インピー
・コロンビア ロード:イギータ、TT:マルティネス
・スペイン ロード:サンチェス、TT:ビルバオ
・デンマーク 2020年ロード&2019年TT:アスグリーン
・イタリア ロード:ニッツォーロ
・ルクセンブルク TT:ユンゲルス
・ポルトガル ロード:コスタ
・ベルギー TT:ファンアールト
・ドイツ 2019年TT:マルティン
・イスラエル 2019年ロード&TT:ニーヴ
・カザフスタン 2019年ロード&TT:ルツェンコ
・ラトヴィア 2019年TT:スクインシュ

文:宮本あさか

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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