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サイクル ロードレース コラム 2020年8月20日

【フランス選手権:プレビュー】強豪勢揃い!伝統のトリコロールジャージを賭けて威信をかけた総力戦が幕を開ける

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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マイヨ・トリコロールを身に纏うバルギル

マイヨ・トリコロールを身に纏うバルギル

これはフランス籍チームのプライドをかけた総力戦である。なにしろ伝統の青白赤マイヨ・トリコロールを、1週間後に開幕するツール・ド・フランスに、絶対に連れて行かねばならない。集団前方には同じジャージがずらりと並び、長い長いトレインを組み上げる。

新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、予定されていた6月21日から遅れること2ヶ月。本来の開催地であるプリュムレクが、町議会の決議により(23票中21票が開催反対)開催権を返上し、成り行きが危ぶまれたこともあったが……どうにか無事に2020年フランスナンバーワン決定戦は実施へとこぎつけた。

フランス自転車競技連盟の威信をかけた「Bプラン」発動により、新たな開催地に選ばれたのはグラン・シャン。プリュムレクはほんの25kmほど離れた、同じモルビアン県の小さな町だ。これまでツール・ド・ブルターニュを何度も受け入れてきたし、2018年にはツール・ド・ラヴニール開幕地という大役も果たした。今回の急な代役も、両手を上げて引き受けたという。

それにしてもブルターニュ地方のモルビアン県は、この8月の終わり、自転車一色に染まる。本来イタリアで予定されていたはずの欧州選手権が、50kmほど西のプルエーで、8月24日〜28日の会期で行われるのだ。さらに欧州選のレースがない8月25日には……同じプルエーで、ワールドツアーのブルターニュ・クラシックが開催される。さすがUCI国際自転車競技連合会長ダヴィド・ラパルティアンのお膝下。同県サルゾーの町長は、モルビアン県議会議員も兼任しているのである!

フランス全土の注目を集める一戦であるゆえに、感染防止対策には抜かりがない。7月末には政府と県庁、さらには仏選手権、欧州選手権、ブルターニュクラシックの3大会の開催委員会が会議を行った。「走行中の選手」を除く全員のマスク義務化、選手と観客との距離規定(2m)、紙による通知や出走リスト廃止(QRコード使用)等々が徹底される。当日はスポーツ大臣も訪問を予定する。

戦いの舞台は「選手権」の伝統に則って、周回コースが描かれた。全長18.3km×13周回=237.9kmの軽いアップダウンコース。グラン・シャンの市街地を途中で2度通過する。この中心地は周囲と比べて高台に位置するため、当然ながら上って下りる。前半1度目の通過は10%超の短坂+だらだら坂の組み合わせ。後半2度目の通過は距離は少々長く、勾配も全体的にきつい。しかも町の中央にそびえる教会の鐘楼が見えてくる最終盤……勾配は10%を超える。ちなみに教会の前を通過する際は、ほんの50m足らずだけれど、石畳にも注意すべし。

また市街地を一旦外れると、緑あふれる細道が多い。周回コースの内部には、昨年2月に亡くなったカール・ラガーフェルドが所有していたペンウェット城も建っている。元シャネルデザイナー自慢のフランス式庭園が、空撮で堪能できるかもしれない。

もちろん最も凝視すべきはレースそのもの!なにしろフランスの強豪がほぼ全員集合する。残念ながらティボー・ピノは、クリテリウム・ドゥ・ドーフィネでの落車で背中を痛め、「大事を取って」欠場を表明。また今大会の優勝本命に上げられていたブルターニュっ子、ジュリアン・シモンは、8月上旬ルート・ドクシタニーの落車負傷により泣く泣く出場を諦めた。またレミ・カヴァニャは、21日開催のフランス選手権個人タイムトライアルでは優勝を目指すけれど……23日開催のロードはお休みするつもり。翌24日の欧州選手権個人TTに出場するからだ。

さて、145人前後の出走予定者のうち、最大勢力はAG2Rラモンディアル。所属フランス選手19人全員が、スタートラインに並ぶのだ。1992年チーム創設以来2度目、23年ぶりのトリコロールジャージ手に入れる大チャンスだろうか!?

一方で2012年以来6回もフランス王者を輩出してきたフレンチの雄、グルパマ・FDJは、15選手が出走。ただし下部育成組織コンチネンタルチームから5人もの助っ人がやってくるから……実質は20人での戦いと言ってもいい。

フランスの2大ワールドツアーチームが壮絶な殴り合いを繰り広げる横で、もう1つのワールドツアー籍コフィディスは、12人で参戦。1997年のチーム創設以来、なんと1度もフランス選手権を制したことがない。

またトタル・ディレクトエネルジーは18人、ディフェンディングチャンピオンのワレン・バルギル擁するアルケア・サムシックは17人、さらにBBホテルズ14人。アルケアとBBは地元ブルターニュチームとして、当然ながら意欲に燃える。

フランスチームの巨大な塊に、外国チーム所属選手たちがどう立ち向かっていくのかも、フランス選手権の興味のひとつ。イスラエル・スタートアップネイションはかろうじて3選手を送り込むけれど、ドゥクーニンク・クイックステップはジュリアン・アラフィリップとフロリアン・セネシャルの2人だけ。トレック・セガフレードのジュリアン・ベルナールは完全なる孤軍奮闘……。

ただし勝機はゼロではない。たとえ人数は少なくとも、彼らは揃いも揃った強豪だ。前例もある。2011年は2人参加のクイックステップからシルヴァン・シャヴァネルが、1998年はオンセから単騎参戦のローラン・ジャラベールが、見事にトリコロールジャージを勝ち取っている。

文:宮本あさか

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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